第161話 ボルケーノスライム


「んー……そろそろじゃのう」


 リオのばば……ロリ婆が遠くを見つめながら何か意味深に呟く。


「……」

 何が? とは決して言わない。いかにも声を掛けて欲しそうだからだ。


「……見ろ、知性のない獣どもがそこかしこで盛っておる。本能的に子孫を残そうと焦ってしておるのじゃな」

 いや見えんけども。


「……この先来る――」

「坊ちゃま……今よろしいでしょうか……?」

「アレクちゃまぁ~……何だかお姉さん、アレクちゃまが欲しくなっちゃって……♡」

 ふむ。リオの話から推測するに、獣人である2人も本能を刺激する何かがあると言うのか。


 そう言う事なら……。


「ぜひもなし」


 ◆◇◆◇


 ――2時間後。

 リオはまだそこに佇んでいた。


「……あの、わらわ、とても大事なことを伝えるつもりだったのじゃが……後、いい加減わらわも抱いて欲しい」

「まだその時ではない」

 すまない、幼女趣味はないのでな。


「……まぁ、その事は置いとくとして。そろそろ来るのじゃ」

「そうか、『あの日』か」

 あの日ね、あの日。


 女の子は大変ね。


「お主も知っておったか。さすがじゃの。しかし、どうする? 街中で噴出してしまえば大惨事じゃぞ」

「……そんなに勢いよく出るのか?」

 女の子は大変ね。


「それはもう……全てを飲み込みながら破壊してゆく。来る日に現れる者どもととちらがマシかわからん程に、な」

「……」

 ……何の話だ?


「して、お主はどんな対策を考えているのじゃ?」

「……とりあえず、より優れたナプキンを作ってやろうと思う」

 吸水性抜群! 寝てても動いてもズレない! さらにはお肌にも優しくかぶれない! ドラゴンでも安心!

 そんなナプキンを目指してやろう。感謝して欲しい。


「……何の話じゃ?」

「……お前の『あの日』の話だよね?」

 女の子の日。


「……」

「……」




 しばしの沈黙の後、再び遠くを見つめるリオ。


「そろそろじゃのう……」

 あ、今までの会話をなかったことにするつもりだ。


「そろそろ……一定周期で起こる巨大な次元門の発生、そこからやってくるこちらの世界よりも強力な魔物どもに対処するためにボルケーノスライムが地の底より出現し、周囲もろとも敵を滅ぼす時期じゃ。いずれにしても、早急に対応せねば深刻な災害となるぞ」


 すげぇ! 意味深に言いたかった事を全部まとめて言ってくれた!


「つまり、巨大な次元門が開く前にそのボルケーノスラりんを倒して、他所の世界から来た魔物もぶっ倒せばいいの?」

「さよう。しかしまぁ、ボルケーノのやつは一応この世界を想っての行動じゃからの。追い返す程度にしてやって欲しいのじゃ」

 えーめんどくさいんですけど。


 名前から察するに、超高温のマグマを纏った生きた流動体ってとこでしょ?

 しかも火山の噴火を彷彿とさせるようなパワーも持ち合わせていそうなんだが?


「ちなみに、性別とかあるの?」

「雌じゃと言っておったの」

「ならばしょうがない」

 しょうがない。


「……目の前にも雌がおるのじゃが。一応、お主を好いておるのじゃが」

「そいつどこにいるのかわかる?」

 サラッと流す。流動体だけにね!


「う~む、奴は地下深くを移動しておるからのぉ~」

 マントル? プレート? そんな知識、中高で習った気がするけど日常生活では滅多に使わないからもう覚えてないよ……。


「そうか。何か出現の予兆とかは?」

「次元門についてはあるぞ。2つの月が重なり、さらにその月が食われた時に次元の扉が開く、と言われておる」

 ふむ。皆既月食のことか? しかも2つある月が同時にってことか。


 しかし、方法はわかっても時期はわからなさそうだなぁ~。

 その辺を学問している機関なんて聞いたことがない。


「よく知ってると思ったじゃろ? さすがだと思ったじゃろ? 何を隠そう、我が一族もこの世界の守護に一役買っているのじゃ!」

「思ってないよ」

 さすが伊達に年食ってないんだなとは思ったけど。


「ぬぐぐぅ~! ……まぁよい。次元門から世界を渡ってくる魔物どもは、正直わらわでも手に余るものどもじゃ。油断するんじゃないぞ!」




 別世界の魔物かぁ~。やだなぁ、めんどいなぁ。

 こちとら魔神を倒さなきゃいけないってのに。

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