第161話 女神とメイちゃんたち②

「ふぅ~……久しぶりに本気で動いたから疲れちゃったぁ~!」


 しばらくの間戦っていた女神とメイちゃん。

 やがて2人は同時に倒れ、何やら会話をした後、仲良く肩を支え合って戻って来た。


「私も、ここまで本気を出したのは初めてです」

 メイちゃんが本気出したの!? それに耐えられる女神様ってどんだけ強いの!?


「青春でしたわねー!」

「そうですね! まるで青春活劇を描いた小説のようなシーンでした!」

 ヤンキー漫画じゃないんだから……。


 とりあえず2人を回復してやる。


「コホン。みなさま~! 改めまして、6人目の奥さんとなりましたポワン=ポワンですぅ! よろしくお願いします~!」


 結局この甘チョロ女神も嫁になることが決まったようだ。

 俺の意思は……みなまで言うまい。

 今はとにかく、俺がミンチになることは回避できたことを喜ぼう。何故回避できたのかは俺にもわからないが。




「よろしくお願いしますわ! 私たちのモットーは! いつだって笑顔! ですわ!」

「はいっ!」

 一番の奥さん(仮)のエリー。うんうん、その笑顔はいつだって心の支えだぞ!


「うふふ~、一緒にアレクちゃまを甘やかしましょうねぇ~」

「はい~!」

 この2人、同じタイプ……。

 いやアラアラはしっかり者のお姉さん、女神はポンコツ干物脱力系たまに闇が垣間見えるお姉さん……。


「よろしくお願いしますね! 至らぬところがあるかと思いますけど、ご教授ください!」

「はいっ!」

 まじめなアンジェ。ダメだぞ、ポワンポワンは本当にぽわんぽわん女神だからな!


「私からは1つだけ。坊ちゃまは大変嫉妬深いしめんどくさい性格ですので、他の男性と関るときはお気を付けください」

「ふふ、わかりましたぁ~!」

 メイちゃんや……そんなことを常日頃考えているのかい?

 苦労をかけてすまないね。それと泣いてもいい?


 しかし6人か……。いつの間にそんな人数になってしまったのか。

 エリー、メイちゃん、アラアラ、アンジェ、ポワンポワン……おや? 1人足りないぞ? もしかしてヒルデのことか? それとも……俺の知らないところで誰か嫁になっているのか!?


「むっふー! 女神様が私の下になるなんて! これはエルフ史始まって以来の快挙に違いません! さすが美少女エルフミントちゃん! たっはー! まいっちゃうなぁー!」

「……」

 え?


「うふふ。よろしくお願いしますね、先輩!」

「お任せください! アレク様についてなら私が! 何でも! 教えてあげますよぉー! 何てったってご主人様はいつだって私の色気にメロメロなんですからーっ!」

 何でもどころか何にも知らんだろ! まずお前を嫁にした覚えがない!


「アレク様はですねぇー! この辺をグリグリすると喜ぶんですよーっ! 見ててください!」

 頭を俺のお腹にグリグリする聖奴隷。いやお前がしたいだけだろ。俺がそれで喜んだことないだろ。


「離れろ」

 そう言って頭を掴んで離そうとするのだが……。


「むぎっ! むぎぎぎぎっ! て、照れちゃってまぁー! 仕方がないですねアレク様は! いいんですよたまには! 私に甘えてくれても!」

「いいから離れろ」

 必死になって引っ付いてくるミント。どっちかと言うと甘えてるのはお前の方……。


「……ぐすん」

「……」

 まぁ……たまにはいいか。

 アイアンクローを極めていた左手を広げ、ミントの頭を撫でてやる。


「……えへへぇ~」

「うふふ、まぁまぁ~」

 泣きながらも嬉しそうな顔をするミントを、優しそうな顔をして見つめる女神。

 これじゃどっちが上か知れてるな!




「このように、坊ちゃまは押しと涙に弱いのです。さすがミントさん、熟知してますね」

「勉強になりますぅ~!」


 ……そういうこと?


 ◆◇◆◇


「へぇ~、そんなことがあったんですか」


 女神との邂逅を終え、我が家に戻って来た俺たち。

 サリーさんが用意してくれた夕食を食べながら、先程のことを話す。


「サリーも来れば良かったですのに! ついでにアレクのお嫁さんにして貰えば良かったのですわ!」

 エリーさんや、嫁はついででなるものではないんだぞ?

 あ、やべっ。オマケで嫁になったお方がいらっしゃるんだった。


「いえいえ、そんなそんな。私は愛人の枠で結構ですよ」

 妻たちの前で堂々と愛人宣言! 腹黒いだけでなく肝も据わってやがる!


「愛人……ですの?」

「えぇ、奥様とは別にセッ……心と身体を癒してあげる存在、それが愛人です。不倫相手ともいいますね」

「……」

 このメイドには1度きついお仕置きが必要なようだ。


「はわぁ~……不倫や浮気はいけないんですの~! ですけれどぉ~……」

「そうです! 私が愛人であることでエリーお嬢様も興ふ……刺激ある生活を送ることができるのです」

『そうです!』じゃないんだよなぁ~。


「確かに、どこかで線を引いて見守ってくれる方がいると安心できる面もありますね」

 同じように、戦闘面でついてこられないことで線を引いているアンジェが同意を示す。


「そうでしょう、アンジェお嬢様。一線を引くことで得られる情報や快ら……安らぎもありますから」

 お前! さっきからわざと言い間違えてるだろう! やめろよ、エリーの教育に悪いだろ!


「でも……いいんですの? 愛人だとその……子どもとか……」

「エリーお嬢様、いいのです。私はみなさまの幸せをこの立場から眺めることができれば」

 そう言って柑橘系のジュースを飲むサリー。珍しいな、いつもはワインなのに……。


 ……え?


「それに、古今東西愛人に子どもを産ませることなどよく聞く話ですし……うっ! ちょっと失礼します」

 急に口元を押さえて立ち上がり、トイレの方へ駆け込むサリー。


 ……え?


「サリーさん! 大丈夫!?」

「まぁまぁ! どうしたのかしら」

 それを追うアンジェやアラアラ。


 ……ま?


「坊ちゃま、大丈夫ですか?」

「だっ! だだだだだだっ!」

 大丈夫じゃないです……。




 翌日、サリーの悪戯だったことが本人の口から語られるまで色々考えて落ち着かなかった俺。

 当然その後お仕置きをしたのだが……。


「アレク様、その……しばらくは優しくお願いしますね?」

 お腹を摩りながらそう言うサリー。




 ……え?

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