第159話 クリスタルの行方
「(ピクピク)」
「おいポンコツ女神! そう言うことは最初に言え!」
急ぎ女神の世界へと『転移』した俺。
「あ~! ダァくんったらもぉ~! 変な女に騙されちゃダメだよぉ~!」
そう言って我がぽわぽわ女神が指輪やら鱗やらを差し出してくる。
「世界間の転移ではね~、特定の物やその世界の文明や魔法レベルとかけ離れた物は持ち運べないように制限されているんだよぉ~」
「なるほど。そうなんですか」
まぁ時空間収納は確かにわかるけども。
鱗とかは文字通り誰でも使えるからか? 逆に属性魔法の指輪は魔力が無いと使えないから……とか?
「ピクピク」
「世界間の転移では制限があるんですね~」
「そうだよぉ~! ダァくんもこれからは気を付けてねぇ~!」
あれ? ドゴーグのところとか女神様のところとかではそう言う制限ないな。
人々が暮らす世界間と神の世界とはまた別ってことかもね。
「ピクピク」
さて、そろそろ現実に向き合わなければならない。
ダァくんって誰だ! いやさすがに俺か!
ダァくんってアレキサンダーのダァだよね? まさか――。
「(さすがに……ダァリンは照れちゃうからぁ~……今はダァくんで……きゃっ♡)」
おぅ……マイガッ! 変わんないよ! ダァくんも早いって! まだ名字とさん付けでいこうよ!
チラチラ見てきやがって! どうせその呟きも聞こえるように言ってるんだろ!
「ポワンさん、ところで……」
「(さんってつけないで欲しいなぁ~)」
「……我が女神よ、ところで……」
「……」
ぷくーっと頬を膨らませる女神。
しかし屈しない! 俺は屈しない!
絶対思い通りなんかになってなるものか!
「……我が愛しの女神よ、ところで……」
「(にっぱー!)」
しまった! 今ここでそのおべっかはまずかった!
「なぁに、ダァくん! 結婚式はいつにするかって話~?」
「そ、それはおいおいね……それよりもさ、そこでピクピクしてるモノ、何ですか?」
さっきから部屋の隅で、とても見せられない姿でピクピクしてるモノ。
「あぁ! 忘れてたぁ~! あれはね……ダァくんを勝手に異世界に送ったって言った悪い子さんだよぉ~!」
「……」
そりゃミクチャだったモノてのはわかるけど! わかるけど!
「なかなか教えてくれなくてぇ~……しぶとかった♡」
「た、確か同期のご友人だとか……」
言ってたような……。
「え~? ダァくんにいけないことしちゃう子なんてもうお友達じゃないよぉ! それに……ダァくんも悪い女の子に騙されちゃダメだよぉ!」
「……」
やべぇよ……やべぇ奴に気に入られてちまったよぉ……。
そんなことで旧友をミンチにしちゃうなんて絶対やべぇよ……。
「それにさっきも言ったけどぉ~、クリスタルが無くなっちゃったのもこの子のせいなんだよ?」
「あ!」
そうだった! ちょっと色んなことで頭がいっぱいになってたけどそれで急いで戻って来たんだった!
「さっきも言ったけどぉ、異世界転移するときには『空間収納』付の指輪が外れちゃうんだけどぉ~」
「それを狙って俺を転移させ、クリスタルをくすねたってことですか」
最初からそれが狙いで俺との面会を引き受けたのか。
「でもね、いつの間にかクリスタルだけどこかに行っちゃってたの~。どこにあるかなかなか教えてくれなくて……」
それでミンチになるまでボコっておられた、と。
マジ怖い。
「あー……まぁ、どこにあるかは検討がつきますし、放っといて大丈夫でしょう」
恐らく、いやほぼ確実にミクチャの担当したトージョーのところだろう。
そうなるとトージョーの居場所にも見当がつくな。
「いいのぉ~? 勝手に人の物盗んだんだよぉ~?」
「構いませんよ。何となくミクチャがそこまでした理由もわかりますし」
「理由?」
「えぇ、恐らく他の神々と同じでしょう」
魔神となんて戦いたくないから、何としても自分の選んだ転生者に頑張って貰いたい、そんなとこだろう!
「他の神様……私とも一緒……? そっかぁ~……ミクチャも、好きになっちゃったんだね。それならしょうがない、かぁ~……」
「……」
うん、聞かなかったことにしたい。ていうかそう思ってるのは色呆け女神だけだぞ!
それとやっぱり好きだからって盗みはしょうがなくないぞ!
「で、でもでも~! 大丈夫なのぉ~? 魔神って……思ったより怖そうだし……」
「まぁ何とかやってみます。ポワンの最初の頼み事みたいなものですし、頑張りますよ」
死にたくないし!
「もぅ♡ そういうとこだよぉっ♡」
「……」
こういうとこでしたか。
チョロッ!
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