第154話 ヒルデの懺悔

「おーい。アンジェ~!」


 次のターゲットはアンジェである。

 先日遂に結ばれた彼女、早速これからの性活の参考にしていきたいと思います!


 しかしまじめな彼女のことだ素直に性癖を訪ねても教えてはくれまい。

 まぁ、誰に聞いてもなかなか教えてはくれないだろうけども。


「あ、アレク! ちょうどいいところに!」

 ん? どうやらアンジェも俺の事を探していたようだ。


 確かアンジェは午前中実家であるリョーゼンに行くと言っていた気がするが……。


「ヒルデのことなんだけどね……何だか様子がおかしいんだって!」

「ヒルデ、か」

 ……さもありなん。


 ヒルデ嬢はお姫様であるアンジェの元専属護衛である。

 俺とアンジェが婚約した後は軍隊に所属しているのだとか。


 その彼女と俺は先日のクイードァとの戦いの後……。

 まぁ有体に言えば、めちゃックスした訳である。しかも元主であるアンジェの目の前で。


 いやーあの時は誤魔化すのに苦労したわ!




「最近私とも会ってくれてないし……何だか、軍もお休みしてどこかに行っちゃってるみたいだし……」

「……それは心配だな。一緒にリョーゼンに行ってみようか」

 やっぱりあの時のことだよなぁ~……。


「お願い! ヒルデとは小さい頃から一緒で……心配なの」

 うむ、妻の心配事に対処するのも夫の役目である!

 我ながらいい夫であるな! はーっはっは!


 だというのに……アンジェさんや、なぜジト目で俺を見てくるんだい?


 ◆◇◆◇


「あいつ、急に軍をやめて出家するとか言ってゴルディック教会に行ったよ」


 とりあえず状況を聞きにジョーのところへとやってきたのだが……。

 なかなか深刻なことになっているようだ。


 しまったな……ヒルデなら自分で持ち直せるかと思ってほっといたのが仇になってしまった。


「他の兵に聞いたところによると、クイードァとの小競り合いの後から様子がおかしかったらしい」

「……」

 やっぱり?


「そう言えば祝勝会の時いなかったよなぁー、ヒルデも、お前も」

「……」

 バレてます?


「ふぇぇ!? なんのことか、ぼくわかんなぁいっ!」

「幼子のマネをするんじゃねぇ! 可愛くねぇよ!」

 ふむ。ダメですか。


「とにかくな。ヒルデは他の女性兵たちからの信頼も厚いし軍に欠かせない存在なんだよ。お前の女にするのは構わないが、軍にいてくれないと困る」

「あ、あぁ。わかった、どうにかしてみるよ」

 だからな……俺の女にするとか言わないで欲しいんだ……。

 さっきからアンジェさんの視線が痛いんだ……。


 ◆◇◆◇


「神よ……どうか愚かな私をお許しください……」


 アンジェと2人でヒルデがいるという教会までやってきた。


 そこではちょうどヒルデがめっちゃ懺悔していたところだった。

 ゴルディックがどんなやつかは知らないけど、ぽわぽわした女神なら笑って許してくれそうだぞ!


「久しぶり、ヒルデ」

「――!?」

 後ろからそっと声をかけたのだが、走って逃げ出してしまった。


「ちょっとヒルデ!? ……行っちゃった。一体どうしたのかしら?」

「あー……うん。ちょっとヒルデと2人で話してみようかな、うん」

 俺から逃げるってことは、やはりそう言うことなのだろう。


「え? ……ふ~ん。まぁいいけど! じゃあ私はここの責任者の方とお話してくるね!」

「おう」

 アンジェを見送り、俺もヒルデを追いかける。




「神よ、どうか……彼と向き合う勇気を――」

「ヒルデ!」

「――!?」

 再び逃げ出すヒルデ。追いかける俺。




「神よ、どうか――」

「ヒル――」




「神よ――」

「ヒ――」




 ……。




「満足したかい?」

 数回の逃亡を繰り返し、観念したのか疲れたのか、教会の裏手でヒルデは壁を背に座り込んでしまった。


「くっ! 殺せぇっ!」

 くっくっくっ! いい体してたぜぇ姉ちゃん!

 じゃなくて……。


「俺に言いたいことがあるんだろう?」

「――っ!? な、なぜそれを!?」

 わからいでか。


「うぅ……あぁ……」

 声にならないうめき声をあげるヒルデ。


「そ、その……うぁぁ……」

「……」


 ……。


 ……。


 ……こりゃ長くなりそうだなぁ~……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る