第153話 それぞれの迸るパトス
「アラアラよ! 見よ!」
先日、濃厚なフェチズムの話が出たので今日は改めてみんなの性癖を知りたいと思い、試しにアラアラのところにやって来た。
普段から自分のことをお姉さんと言ってるくらいだから、きっとショタっ子に弱いハズ。
そう思い、クネクネに渡していた体のサイズを変更する魔道具を使ってみたのだが……。
「――!?」
何だこれ!? 保有魔力が少なくなったし体も動かしにくいんだが!? それどころか声すら出ないんだが!?
「ひゃびゃびゃびゃびゃぁっ! アレチュちゃまっ♡ あれちゅちゃまぁ~♡ よちよち♡ おねいしゃんにじぇ~んぶまかせちぇれぇ♡」
……ぁ。
やっ! ヤられるっ!?
「坊ちゃま!」
たっ助かった! メイちゃん助けてくれ! このままじゃ俺! 男としての尊厳をうしな――。
「はぁ~ん! いつも堂々と振る舞おうと頑張っている坊ちゃまがついにそんな姿にっ! お世話しなきゃ! お世話しなくっちゃぁ~ん♡」
……まぁまぁひどいこと言ってね?
ちょっやめっ!
そんな汚いとこだめだよぉっ! とけちゃう! 体がとけちゃうよぉ~!
◆◇◆◇
「うむ」
たまには良きかな。
「コホン。坊ちゃま、お戯れは程々に」
「本当だよぉ~! もぅ、お姉さんを困らせちゃ、めっ! だよぉ~!」
その割には……いや。
「……うむ、程々にな。程々に……」
「えぇ、程々に」
「そうねぇ~、程々に♡」
……。
「と、ところで坊ちゃま! どうしてあんなお姿になっていたのですか?」
知らないであんなことをしたんですか?
「う、うむ。実はちょっと色々あってね……みんなのフェチを知りたいなぁーなんて」
我ながら、実にくだらないことを考えているな!
「フェチ、ですか?」
「あぁ。結局、メイちゃんのフェチって何なの?」
ポイントがわからないと言うか……わかってしまうのが怖いと言うか……。
「私のフェチは坊ちゃまそのものです」
「もっと詳しく」
嬉しいことを言ってくれるが、そうではない。そうではないだろう。
「……普段は堂々としてて素敵な坊ちゃまが、ふいにみせる少し緩んだ雰囲気に理性を失ってしまうことがあります」
「そ、そう……」
額面どおりならね、いいんだけどね。随分と包んだね、オブラートに。
「私はぁ~――」
「アラアラはわかってるので大丈夫です」
その辺の子に手を出さないか心配です。
……パーシィは大丈夫だったのだろうか……?
「む~! 何だか失礼なことを考えてるでしょ~! も~!」
さもありなん。
◆◇◆◇
「アレク様! どうしたんですか突然私のところに来ちゃって! もしかして! 超絶美少女である私に会いに来たんですか!? 来ちゃったんですかっ!? たっはー! まいっちゃうなぁー! ご主人様を惑わすとは罪な女ですなぁー!」
「……」
さて、こいつに聞くかどうするか……別に聞かなくてもいい気もする。
とりあえず黙らせよう。
「黙って服を脱げ」
「……はっ、はいぃ~……」
顔を赤らめ、恥ずかしそうにしながらも素直に服を脱ぎ出す聖奴隷、じゃなくてミント。
しかし……。
「……どうしてクマさんパンツなんだ?」
わからない……どうしてそんなものがあるのか、どうしてこいつはそれを常用しているのか……俺にはわからない……。
「だっ! だってぇ~……かわいいじゃないですかぁっ! それに……急に来るからぁ~……こんなことならもっと大人っぽいものを……」
尚もゴニョゴニョともじもじしているミント。
「いつでも俺の為に準備しておけ」
「はっ、はいぃ~……」
そう言いながらも、何やら嬉しそうに顔を赤くしているミント。
お? もしかして、やはりこいつ……。
「どうした、そんなところに立ってないでこっちに来い」
「ア、アレクさまぁ~……恥ずかしいですぅ~……」
恥ずかしがってその場に立ち尽くしているミント。
仕方がない。
「しょうがない奴隷だ。俺が躾てやろう」
そう言ってミントのそばに行き、顎をクイッと持ち上げる!
そう! 噂の顎クイ! オラオライケメンにしか許されない伝説の秘技っ!
「ひゃぁ……アレクさまぁ~……んっ」
戸惑いながらも、目を閉じ……。
……。
……タコのように口をとがらせるミント。
こいつに色気とか無縁だわ。
しかし、案外ミントはこうやって強気に出られるのが好きなのかも知れんな! 知らんけど!
「ではさらばだ」
「むちゅ~……え? ……えぇっ!?」
目的は達成したからな! 多分!
「ちょっとーっ! どういうことですかぁーっ! そういうことじゃないんですかっ!? 私の純情を弄んだんですかぁーっ!? 何で服を脱がせたんですかーっ!?」
やかましい叫びを背にミントの部屋を出て行った。
俺には全く関係ないことだが、その後しばらくの間ミントが大人っぽい下着をメイちゃんにねだることが続いたそうな。
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