第152話 SAY! 癖!
「ふぅ、何だか疲れちゃったな~」
聖女との模擬戦から我が家へと戻った俺たち。
「どうだった? 何か参考になることはあったかい?」
「そうねぇ~、あの輪っかは凄いと思ったよぉ~!」
アラアラは攻撃魔法より、支援や回復が得意である。そのため『聖女光輪』に興味を持ったようだ。
「そっかそっか。あとで一緒に練習しようね」
「ほんとぉっ? アレクちゃまだいちゅきっ♡ ちゅっちゅっ♡」
秒でべたべたスイッチ入ってるんだが。
「はぁ~……アレクが他の方と……いけませんのにっ……!」
相変わらずですね、お嬢様。
「お疲れさまでした、坊ちゃま」
迎えてくれたメイちゃんが温かいお茶を差し出してくれる。
「と、ところでアレク! さっきのお間抜けそうな方が『腋がぁ腋がぁ』と叫んでいましてけれど……あれは何ですの?」
「コヒュッ!? ゴホゴホッ!?」
飲もうとしたお茶を盛大に吹き出してしまった。
「あ、あらあら~まぁまぁ~……」
そう言って逃げ出すアラアラ。既にメイちゃんはいない。
「そ、それはね……」
「(ワクワク)」
うぅ……何でそんなにくりくりキラキラおめめなんだい?
自分が今何を質問しているのか分かっているのかい?
……し、しかしこれは臭いの方で誤魔化すのがいいのか、フェチズムについて説明するのがいいか……。
うむ、シンプルに誤魔化すか。
「あぁエリー。美しく可憐な愛しのエリー。キミにはまだ早いと思うんだ。キミはまだ穢れを知らぬ乙女のままで――」
「エリーお嬢様、それは恐らくですね――」
先日我が家にやって来た腹黒メイドが余計なことを言おうとしてやがる!
「ちょっと待った! 俺が言う! 俺がちゃんと言うから!」
「えー? 本当ですか~? 今までお嬢様に碌な知識を教えなかったアレク様がぁ~?」
かーっ! 腹立つ! その辺を教えなかったのは明らかにお前のせいだろうが!
しかしこいつに説明させると絶対めんどくさいことになる!
「(わくわく)」
「(ニヤニヤ)」
……くっ、仕方がない……。
「コホン。エリーや……人にはそれぞれフェチズム、つまり性的興奮を高める人体的特徴及びシチュエーションなどが存在する。俺で言うとおっぱい、エリーで言うところの寝取られがそれに該当するだろう。それは恐らく人の潜在的な意識、もしくは魂に深く結びついており、決してやましいものではなくその人間をその人間たらしめる聖なる楔と言っても過言ではない。つまり自分のフェチズムを曝け出すのは決して恥ずかしいことではなく、むしろ自分の魂からの叫びを高らかに上げている崇高な行為とも言えなくもない。恐らく彼の魂からの欲求である腋というフェチズム、自然体では腕を降ろすことによって見えないということである種神秘性を孕むその部分が見えると言うことは故意に見せつける若しくはふとした隙が生じたことで露になっているという事、そこに何某かの熱い思いを抱いているものと推測できるものである」
「……」
サリーが引いてる。ドン引いてる。
しかししょうがないだろう! 滅茶苦茶早口で良くわからないことを喋って煙に巻く作戦だ!
「……わ、わかりましたですの……」
え、わかっちゃったの……?
「は、恥ずかしいですけど……でも……アレクがどうしても望むなら……ですの……」
そう言ってボタンを緩め、襟元からどうにか肩を出そうとするエリー。
腋を見せようとしてるのか? 何をどう勘違いしたんでしょうか。
俺は腋フェチじゃないのですが……。
「……どう、ですの……?」
「――っ!?」
こっ! これはっ!
恥ずかしそうに顔を赤らめながらもしっかりと俺に見えるよう、しかしやはり恥ずかしいのかちょんちょんと腕が下がったり上がったり!
そして仄かに香るエリーの甘い匂いの中に紛れてほんの少しだけ感じる汗の匂い!
さらに恥ずかしさか興奮か、湿り気を帯びさらに腋を流れる一筋の汗!
その瞬間、新たな魂の楔が俺の中に誕生してしまったのを感じた。
否! 歓迎しよう! 我が聖なる楔よ! 貴ばれるべき崇高なる情念よ!
「……コホン、エリーや。さっきは崇高なものと言ったが、むやみやたらに人に見せるものではないよ」
「わかってますの! こんなことするのはアレクにだけですわ! でも! 恥ずかしいからもうおしまいですわ!」
きゃーですのと言って走り去っていくエリー。
「……アレク様、その……」
「……お前、責任取れよ! お前のせいでこうなったんだからな!」
わかっている、完全に自業自得だということは……。
しかししょうがない、しょうがないんだ……。
「きゃー!(ニヤッ)」
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