第151話 これが噂の……

「や……やりました! みなさん、殺りましたよっ!」

 いや殺るのが目的ではなかったはずよね……。


「いかにあの男と言えど! 光輪を通じて我が下僕共から吸い集めた魔力の奔流を食らって生きてはいないはず! これであの男は私のものよ!」

 確かに、もうグチャグチャの滅茶苦茶だよ……聖女の言ってることが……。

 大丈夫? 今後に響かない?


「やった……やったぞおまえぶはっ!?」

 土煙の中、適当に放った初級地属性魔法『マッドボール』が粗暴の顔にヒットする。

 この魔法は当たった時にべちゃっと弾ける。つまり――。


「ぬぐぁーっ! 俺様の美しき顔がぁー!? ぐはっ」

 醜くも泥を頭から被ってしまい、白目を剥いて倒れる粗暴のマルコ。


「マルコっ!? 己、なんて非道なことを……へぶっ!?」

「サンマルク!? くっそぉ~! ブフォッ!?」

「お三方! ぐわっ!?」


 その後、次々と顔面を泥だらけにする聖騎士団たち。それだけで昏倒してしまっているのだが……。

 美しさにこだわるあまり、とんだ弱点を持ってしまったようだ。


「そ! そんなっ!? 私の聖騎士団がっ! 私の逆ハーが!? なんて汚らしい!」

 ちょっと聖女様! さっきから本性漏れてますよ!


「あなた何なのよ! 何で『聖女ノ誓願』を食らって生きてるのよ!」

 何でそんなものをただの模擬戦で放ったのよ。


「確かに結構な一撃だったよ。今までに食らったこともないような強力な攻撃だった」

 実際俺が纏っていた魔力を超え、肌を焼いてしまうほどの高威力だったもの。


「そんなこと言って! ちょっと手のひらが赤くなってる程度じゃない!」

 さもありなん。


 しかし信仰心を源にした通常よりも強力な支援魔法を始め、先程の『聖女ノ誓願』とやらの強度としては極級を超えた、伝説級に至っているだろう。

 これなら対魔神戦でもそれなりに戦力として期待できそうだ。


 正直この戦力をクイードァとの戦争に向けられるのは厳しくなってしまうのでそこはどうにかしなくてはならないが。




「……私たちの負けね。いいわ、約束ですからね。さぁ! 私を好きにしなさい!」

 言葉とともに服を脱ぎだすオルレアン。

 そういう約束ではなかったと思いますけどね。


 し、しかし! まさか……これは……!?


「おぉ……聖女様……あれが聖女様の美しき御身体……!」

「こ、これから我らの聖女様が蹂躙されてしまうのを指を咥えて見てるしかないのか……ゴクッ」

「しょ、正直興奮します……」


 これが噂の見せつけックス!!!


「うわぁ~ん! 聖女様の腋がぁ~っ!」

 うるせぇ間抜け!


「……俺は他人の愛する者に手を出すような非道なことはしない。しかし諸君、もしも俺が本当に敵だったとしたらそのような未来もあったであろう。努々それを忘れずに励むがよい」

「か、神様……!」

「なんと慈悲深い……」

 うむ、我を崇め讃えよ!

 正直、逆ハーの一員になる気は全くないし、エリーの教育にも悪いからね!


「そしてその力を戦争ではなく、民を救う物として使うのだ!」

 間違ってもクイードァに攻め込まないでね!


「……わかったわよ、クイードァの王様は諦める、それでいいんでしょう?」

 オルレアンは決してバカではなさそうだ。この中では一番まともとも言えるかもしれない。

 性欲がぶっちぎってるけど。


 ……あれ? もしかして転生者全員そうじゃね?

 ロリコンに801好きに逆ハー願望持ち……やれやれ、まともなのは俺だけじゃないか。


 まぁ、とにかく彼女が諦めると言うのならクイードァについては大丈夫だろう。

 後でクリスタルについても確認しておこうと思うが……。


「ではさらばだ!」

 そう言ってエリーとアラアラを連れ、ハンダートへと『転移』する。

 とりあえず今日は疲れたので帰ろうと思う。




 その先で更なる苦難が待ち受けているとも知らずに……。

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