第148話 華やかポイント
粗暴なマルコに連れられてきたのは、最初に見かけた訓練場。
「今日からここで訓練をして貰うぞ! お前、聖騎士に一番必要な物は何かわかるか?」
「誰よりも誇り高く、そして誰よりも強くあること、ですかね?」
騎士って言うくらいだし! ナイツも誇りが誇りがうっさかったし。
「違う! 俺たちは聖女様の聖騎士だぞ!」
「はぁ……」
「俺たち聖騎士は! 誰よりも美しく! 誰よりも華やかでなくっちゃあならない!」
塚か何かか?
「同じくらいの強さならより美しい方が勝つ! 泥臭く戦うよりも華やかに戦う! それが俺たち聖騎士団! そんなその辺の騎士たちと同じにして貰っちゃ困る!」
その辺の騎士さんに謝れ! ナイツ達に謝れ!
「「「我ら! 『美しき薔薇の聖騎士団!』 美麗! 端麗! 雅やかであれ!」」」
突然かっこいいポーズを決め出した聖騎士団の人々。
どうしよう……ついて行けそうにない……。
「はっはっは! 怖気づいてしまったか? 大丈夫だ、1週間もすればお前も立派な薔薇聖騎士となれる! 見たところ、素材は申し分ないからな!」
1週間もこんなとこにいなきゃいけないのか……?
どうしよう……。
「ちなみに、『華やかポイント』が一定数を超えると、聖女様と1対1でお会いできるからな! お前も頑張れよ!」
ふむふむ。聖女様と密室で2人きり。ふむふむ。
「聖女様のために頑張ります! 早速ご指導ください!」
すまねぇメイちゃん! これもクイードァを守るためなんだっ!
華やかさポイントってのが全くわからんけども!
「おう! と言いたいところだが、美しさに基準はねぇ。いかに自分らしく華やかさを出せるか! 自分で考えていくんだ。そうやって俺も『三聖華』の立場を手に入れられたんだぜ!」
出た、『自分で考えろ』! 前の人生では散々苦しめられたわぁ~。大概『何だこれは! 何で事前に相談しなかった!』というコンボに繋がる。
とは言え、聖騎士団自体も発足間ないと思われるし、そうやって手探りしながらオリジナリティを出して行ってるのだろう。
じゃなきゃ塚みたいな騎士団にはなるまい。
「わかりました! 自分で考えてみます!」
「おぅ! 期待してるぜっ!」
◆◇◆◇
「はぁっ! 『美し斬り』!」
初めての仕事で何をしたらいいかわからない、そんなときは同僚を観察するに限る。と思います。
「おぉ~今のかっこよかったですね!」
「そうかい!? 今の技の工夫しているところはね――」
こうやってコミュニケーションもとっていけるしね!
別に聞きたくもないけど。
「トゥーリャ団員、1華やかポイント獲得!」
「おぉ、おめでとう!」
今俺と話しているトゥーリャ君にポイントが入る。
このポイント、誰かに褒められれば貰えるらしい。結構簡単じゃね?
「じゃあ俺のも見ててくれ! とうっ! 『華やか乱舞』!」
「……アレク君、残念ながら……酔っ払いにしか見えないよ」
何だとてめぇっ! 目ん玉腐ってんじゃねぇのかっ!?
「ふふっ、ダメだよアレク君。もう一度僕を見ててごらん?」
そう言って美し斬りを披露するトゥーリャ君。
足の踏ん張りも効いてないし、腰も入ってないし、儚げに目を瞑る意味も分からないし……。
「どうだい? わかったかい?」
「わかったよ! ありがとう!」
訳が分からないということがね!
「見よっ! 『刹那の煌めき斬り』」
「舞い散れ、『千本桜秀吉』」
「はぁっ! 『美麗瞬光羅刹光破斬』」
その後もこんなんばっかりの、何やらかっこよさげなことを叫んでは儚げに目を閉じてる人たち。
途中師匠っぽいのがいたが……さもありなん。
ふむ。
「華やかさって、魔法でもいいの?」
「え? もちろんですけど、魔法なんて……まさか、オリジナルの魔法ですか? いやいや、そんなことないですよね……」
この世界の魔法は基本的に詠唱があるからね。
オリジナルの魔法を産み出すせるなんて一部の者だけらしいし。俺もシヴしか見たことがない。
「何だか、聖女様を想うと心の中から何かが聞こえるのです……あぁっ詠唱も浮かんできました!」
「何ですって!?」
嘘は言っていない。
「天に輝く光の使徒よ、純白の翼と崇高な使命を背負いし運命に立ち向かえ! 『神兵光臨』!」
よくわからないセリフとともに、よくわからない光を放ちながら形だけの翼を背中から生やしてヴァイス・アンファを掲げる。
詠唱には全く意味などない。
「おぉ……美しい……いや最早……」
「神々しい! なんて神々しいんだ!」
「1万ポイント! 1万神々ポイント!」
わぁーい、1万ポイントゲット!
大丈夫だよね? 華やかポイントではないけど、聖女様と2人きりになれるよね?
「せ、聖女様をお呼びしろっ! 神がっ! 神が光臨された!」
……何か思ったのと違うんだが?
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