第147話 矢面に立つ

「少し粗暴な感じがすっけど、顔だけはいいな」

「少し間抜けな感じがしますが、顔だけはいいですねぇ~」

「少しクズっぽい感じがするが、顔だけはいい」


 聖女に侍っているイケメン共である。

 人を見た目で判断しやがって、俺の何を知ってるって言うんだよ!


「……」

「マルコ、イーヒ、サンマルク。そんなことを言っては失礼ですよ。誰に対しても尊敬の念を忘れないで接してください」

「はっ!」

 粗暴なマルコ、間抜けなイーヒ、クズっぽいサンマルクね。了解!


「私はアレクと申します。聖女様のお力になりたいと思い、この度騎士団への門戸を叩いた次第です」

「まぁ! ありがたいですわ! ぜひよろしくお願いしますね!」

 満面の笑みで答える……オルレアンだっけ? オルレアンって何か聞き覚えがあるなぁ……?


「ところで……聖騎士団って何をすればいいんでしょうか……?」

「そんなことも知らずに入ろうとしたのか!?」

 うるさい粗暴なマルコ! 早速感情が乱れてるぞ!


「すみませんね。しかし噂の聖女様のために、何かしらできることはないかと思っていたところ、聖騎士団募集の看板を見て……」

「なるほど。まぁ、君も私たちと同じく聖女様の放つ光に導かれたのでしょう」

 何だか蛾っぽいね。


「何だか蛾っぽいねぇ~!」

 しもた! 間抜けと考えが被ってしまった!


「聖騎士団は、聖女様の威光を知らしめ、世界にその聖名を轟かせるために存在しています」

「ほうほう、つまり?」

 具体的にお願いします! 一日一善とかそんな感じで!


「つまり! 兄弟を増やしていこうって訳だ!」

「……?」

 いや分らんけども。信者を増やしていこうってこと?


「ここからは私が。アレクさん、ゴルディック教会についてはどのようにお考えですか?」

「え? 別に……生活に身近な感じとしか?」


 よくある、回復魔法の使い手を統括をしたりそれによって法外な金銭を要求したり……とかはない。

 冠婚葬祭や適性の儀では彼らが取り仕切る面は強いけど、それ以外に関わることはあまりない。

 なので、宗教って感じよりはたまに会う近所の坊さんたちって感じ。


「えぇ、その通りです。しかし……もったいないと思いませんか?」

「ふむ? というと?」

「もっと教会にしかできないことがあると思うのです。孤児院の運営、治療院の開設、回復士の派遣といったテンプレ……じゃなかった、テンプル的な事業を展開していくべきなのです!」


 テンプル的とは。

 いや俺の王子ックイヤーは逃さなかったぞ!


 こいつ……名前と言いテンプレとか言う発言といい、恐らく転生者!

 いやー、こんなところにいたとはね~。わかんないもんだなぁ。


「そのためには教会の教えを広く知らしめ、規模を拡大していく必要があるのです」

「つまり、聖女様が先頭に立って布教活動をしていこうと決意され、その彼女をお守りするための剣となり盾となるのが――」

「僕たちの仕事って訳だね~!」

 ついに黙っていられなかったクズっぽいサンマルク、さらにその仕事を奪ったイーヒ。マルコは欠伸をしている。

 なるほどなるほど。


「それはすばらしい! ぜひとも私にも聖女様のお力になることを許して頂きたい!」

 にこりと笑う聖女さんとうんうんと頷くマルコ達3人。


「えぇ! 私こそ、ぜひともご協力をお願いしたいです! (これでさらにイケメンが私のものに……ぐふふっ)」

「……」

 ……聞こえてしまったんだが……あまり王子ックイヤーを舐めないで頂きたい。


 ここにいる3人は言わずもがな、確かに訓練場にいた面々も顔が整っている者が多かった。

 イケメンを集めて何が目的だ?


 ま、まさかっ! イケメンの魂ばかりを要求する神的な存在への生贄!?

 いやいや……私のものと言っていたしなぁ……。


 いくら転生者同士だからって、初対面の相手だし聞いても教えてくれなさそうだしなぁ……。

 その点小次郎やカオルコはフランクに接してくれてよかったが……。


 それにマルコ達も邪魔だしなぁ~。

 さて、どうしたものか……う~む……。


「では、今後のことはことはここにいる3人に聞いてください。またお会いできるのをお待ちしておりますわ」

 そう言ってオルレアンが奥の部屋に行ってしまった。

 しまった、考え事をしていたら会話が終わってしまった。




「おう! じゃあ早速こっちについて来いよ兄弟候補!」

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