第146話 イクスローズの聖・少・女
「ここが……聖女の国、か……」
大司教との会話の翌日、早速やって参りました!
クイードァから『高速飛行』で3時間。
多分歩くとなると月単位でかかる距離。
そう考えると、クイードァの前前王であるギルの件がちょうどこの辺に伝わってるくらいなのかしらね。
イクスローズ。その名の通り、薔薇を特産品として栄えてるような栄えてないような、そんな田舎っぽい国。
そんな国に聖女と言われるような子がいるなんてね。
少なくとも光属性の極級魔法、『ピュリフィケーション』が使えるんだとは思うけど……。
「おや、あれは……?」
大きな、と言っても俺の家くらいの大きさと同じくらいの建物の前にどでかい像が建っている。
膝を付き、敬虔に何かに祈っている少女の姿を模している。
恐らく、この少女が聖女なのだろう。
「お、何か書いてある」
その像の横に、立て看板に掛かれている文字を見る。
「『聖女を守護する聖騎士募集中!』……ふむ」
条件、武術や魔法に心得のある男性。慈しみ溢れる職場です。気になる方は領主まで!
……虎穴に入らずんば虎子を得ず!
「すみませ~ん! 外にあった聖騎士の募集の看板見てきましたー!」
「あら、ごきげんよう! 私、領主夫人のエリザベスと申しますわ! どうぞエリーとお呼びになってくださいまし! お~っほっほっほ!」
被ってる! 呼び方とかキャラとか被ってる!
嫌だ! 愛しのエリーが将来こんなけばけばしいおばさんになるなんて絶対嫌だ!
顔は白菜みたいだし体はカボチャだし足なんか大根そのものじゃないか!
「初めましてザベスさん。領主さまにお話を伺いたいのですが……」
ならば、その運命! 変えて見せよう!
「……ザベスはやめておくんなまし。ふむふむ、あなたなら合格間違いなしでしょう! あなたぁ~、あなたぁ~! 聖騎士団への加入希望者ですわよー!」
なんか、舐めるような視線が非情に不快だった。
「おー! また聖騎士希望の人かぁ」
やってきたのは、いかにも農作業大好きですって感じのおじさん。
麦わら帽子を被り、口の周りにひげを生やし、良くわからん笑みを浮かべている。
「なかなかいいあんちゃんじゃねぇべかっ! よしっ、採用!」
はやっ! まだ武術も魔法も全く見せてないんだけど!
「実はなぁ、オラの役目はめんこい男かどうか見るだけなんだぁ! 武術とか魔法とかよくわかんねっからよぉ!」
さよか。
「そうですか。認めて下さり感謝します。それで、どうすれば聖女様にお会いできるんでしょうか?」
「今ならちょうど離れにいるっぺ! ほれ、この方をお連れしてけろ!」
◆◇◆◇
「新しい聖騎士団入団希望者の方をお連れしました。聖女様への面会をお願いします」
使用人さんに連れられて聖女さんが住んでいるという屋敷にやってきた。
この門兵さん、やけに男前だな。
「そうですか。ふむ……彼なら問題ないでしょう」
そう言ってジロジロ俺の事を観察する門兵。
何だ? 何かをチェックされてるのか?
「えぇ。領主さまもそのように仰っております」
「はは、それもそうだな。歓迎しよう、兄弟よ!」
兄弟までのハードル低すぎません?
その後、使用人さんとともに屋敷内を進むが……。
「せいっ! はぁっ!」
「へぶっ!」
どうやら戦闘訓練を行っているであろう場面に出くわした。
「貴様ぁっ! 何だその不細工な悲鳴はっ!」
野性味あふれる男前の上官っぽい人が殴られてしまった人に叱責をする。
しょうがないよ……木刀が顔面にヒット、あれは痛い……。
「いいかっ! 気合だけじゃダメだ! 我々はどんな時でも美しく在らねばならないっ! それを忘れるなっ! 罰として『美しき悲鳴の訓練』100回!」
「はっ!」
? 何のって?
「んはぁっ! くっ! はぁっん!」
……何だか、艶めかしい声をあげだしたイケメンさん……。
「あ、あのぉ……あれは何の訓練なんですかね?」
「さぁ、私はただの使用人ですので……目の保養にはなりますが」
う、うむ……何なんだろうか……。
その場を後にしてさらに奥へと進む。
「聖女様、新たに聖騎士団への入団を希望される方をお連れしました」
「どうぞお入りください」
入室を促され、扉を開ける。
そこにいたのは――。
「初めまして。オルレアンと申します。あなたが入団希望の方ですね」
様々なタイプのイケメンに囲まれた聖女様だった。
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