第144話 パーシバル神聖帝国
――パーシバルが王位を継いで1週間ほど。
何とか復興作業も一定の区切りがつけられることとなった。
幸い、建物の倒壊等はそこまでのものではなく、人的被害もメイちゃんたちのおかげで少なく済んだ。
何とあの日のエリー!
実家の警護はクネクネに任せ、自ら王都の守りに向かったのだとか!
何でも俺の事を『娘を誘拐した悪いやつ』だとか言われてムカムカしてたところ、ああいう事態になり……。
そこで俺から貰った指輪を持って、「愛の力をお見せしますわー」と飛び出したらしい。
すまないね、その愛の証の指輪、ちょっと汚れてるかもだけど……また増えることになるかもだけど……。
それで今、俺は王宮前の広場にいる。
目の前には多くの人、人、人。
「うおー! 救国の英雄様だー!」
「きゃーイケメーン! 抱いて―!」
「おにいちゃーん! 剣見せてー! 剣ー!」
ふむ、では期待に応えて。
「悪を切り裂く聖なる剣、『ヴァイス・アンファ』!」
光のエフェクト付き!
そう、ギルのせいで王族への求心力が低下はしたが、ギリギリを保ってられるのは俺のおかげ!
実はあの戦い、この光がうっとおしい剣のせいで割と目立っており……。
「きゃー! アレクー! かっこいいですわー! キラキラですわー!」
このように騒ぎ立てるキラキラ好きのお嬢様のせいで、戦っているのが追放された元第1王子だとバレてしまったのだ。
まぁ、今日の主役は俺ではないので、いったん引っ込む。
「続いて……戴冠式を行う! パーシバル=クイードァ第3王子よ、前へ!」
「はいっ!」
おぉ、幼さを残しつつも凛々しい出で立ちの我が2人目の弟!
堂々としててかっこいいじゃないか!
「……此度の災害、我が王族からその首謀者を出してしまったこと、誠に申し訳なく思います」
「……」
怒り、憎しみ、困惑、様々な思いが沸きあがる場内。
「遺族の方にはできる限りの賠償をお約束します。そして……その償いとして、今まで以上の国の繁栄を、我が微力を尽くすことを誓います」
「……」
さすが堅実、まじめなパーシィ。
全く面白みがない。
「……では、パーシバル=クイードァよ、こちらに」
どこか白けた雰囲気の中、前前前王である俺の親父が冠をパーシィの頭に乗せようとしたところで――。
「なっ!? なんだこの光は!?」
「まさか!? またモンスターなのかい?」
「いや……この光は……温かい……もしや、アレキサンダー様!?」
違います。いや半分正解でした。
「人の子よ……」
その言葉に、会場にいた全員が自然と頭を下げる。中には泣き出すやつもいる。
立ったままぼけっとしてたエリーは慌てた義父さんに座らされていた。
「人の子よ……。大国クイードァの王となる者よ。わたっわらわは祝福します。そして……どの種族、人類とも手を取り合い、平和へと導くのです……」
そう言って、赤き衣に身を包んだ女神は光の中に去って行った。
「……あ、あれって……今のってまさかっ!?」
「め、女神様……? そんな……なんて、神々しい……」
「めっ! 女神様だ! 女神様がパーシバル王の誕生を歓迎したんだ! そして侵略行為をやめることと亜人差別をやめるようにお言葉をくださったぞぉっ!」
群衆に紛れたウーノが説明口調でフォローしてくれたぞぉっ!
「……ふわぁ……?」
何も教えてなかったパーシィは呆けている。
「パーシバル王ばんざーい!」
「パーシバル王! 女神に選ばれた王!」
「パーシバル王さま! 素敵! 抱いてー!」
うむ、民にも歓迎されて一安心だ。
事前に今日のことを頼んでいた女神が芋ジャ――じゃなかった、赤き衣を身に纏って出てきたときは焦ったけども! それと噛んだ時も!
あいつまだあの服着てんのかよー! まさか他に着替えがないのか……?
まぁ、ともかく『女神様降臨させて何だか凄いぞパーシィ神聖帝国計画』は成功したようだ!
「――では! これにて戴冠式は終了とする! 皆の者! 今日は存分に楽しんでくれ!」
予定ではこの後長々と各貴族や家臣の話があったのだが、切り上げるようだ。
うむ、実にいい判断。
そしてこの場は盛大に料理と酒が振る舞われる運びとなる。
料理を作るのは、もちろん我が王宮が誇る宮廷料理人。
何でも、あの日ウーノとクワトらが異変を感じた時に、小型『次元門』の魔道具を用い、親父の奥さんや城の使用人などを避難させていたらしい。
巡礼の手伝いをしていて良かったと改めて思う。あれがなきゃ作らなかっただろうし。
ちなみに……ウーノは『急いでたから獣人の姿で誘導してました』と言っていたが……。
非常時にそんなことをするウーノが怖ろしいのか、それでも獣人の言う事を聞けなかった犠牲者が怖ろしいのか……。
ともあれ、これでクイードァもしばらくは安泰……いや、忙しくなるだろう。
ま、俺には関係ないけど!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます