第143.5話 幕間 我が家

 ――王都の騒乱から数日後。


「ただいま~」


 ハンダート領にある我が家に帰ってくる。

 町を回って怪我人を治して回ったり、俺を無能扱していた貴族どもを追い出したりとなかなか大変だった。




「アレク、おかえりなさい」

「アレク様! おかえりなさいですよっ!」

 トコトコと俺を迎えてくれるアンジェと飼い犬。


「よーしよしよしよし! お出迎えできて偉かったぞぉっ!」

「ひゃわっ!? ちょっ! やめてください! やめてくださいよぉっ! アレク様ぁ~!」

 しっかりとお出迎えで来たワンちゃんへのご褒美にめいいっぱい撫でまわしてやる。


「あ、あのぉ……ミントさんは犬じゃないんですから……それと、私は……?」

「あぁ、すまないなアンジェ」

 そう言ってただいまの口づけをする。


「あぅ……アレクからしてくれるなんて……」

「ふぅ。なんか、自分の居場所って感じで安心するわぁ……」


 今回の件でクイードァの情勢が落ち着けば、追放の件も取り消され俺も戻ることができる方向となる。

 そもそも正式には廃嫡まではいってなかったようで……これで名実ともに実家に戻るのに何の不都合も無くなったという訳。


 とは言え……最早こっちでみんなと過ごす方が落ち着くんだよなぁ~。




「ま、まずはお食事にしますか? それともお風呂にしますか? それとも……わ、わたっ!」

 顔をほんのり赤らめながらも、献身的に尋ねてくる。

 アンジェはどこからそう言った知識を得てくるのか……。


「まずはミントにする」

「ふぇっ!? わっ! 私ですかぁっ!? はっはぅぅ~……や、優しくしてください……」

 顔を真っ赤っかにして照れてるミント。


「それはできない相談だ! 今日も激しくしてやるっ!」

「……う、うぅ~……」

 我が覚醒せし秘奥義、『ムツゴロニック・バースト・ネクストジェネレーション』を披露してやるぜ!


「……あの、私は……?」

 アンジェが何やら呟いていたが、よく聞こえなかった、かも知れない。




「よーしよしよしよし! おーしおしよしよし!」

「ちょっ! アレク様! 私犬じゃありません! 犬じゃありませんから! 何で頭と顎ばっかり撫でまわすんですかぁっ! 何でですかぁ~!?」


 ◆◇◆◇


「はぁ~……いい湯だなぁ~……」


 ミントとの一戦の後、露天風呂で戦いの汗を流す。

 やはり秘奥義、こちらの消耗も激しい。その消耗したものを埋めるように、温泉の温かさが体に染み渡ってくるようだ。


「……アレク、お背中流します」

「ん? あ、あぁ……」

 そう言って入ってきたのは一糸纏わぬ姿のアンジェ。

 俺はマナーを守るので既に体は洗い終わってますけど……。


 とは言えなかった。




「……力加減、どうですか?」

「あぁ、気持ちいいよ」

 ごしごしと、背中を優しく洗ってくれるアンジェ。


「あっあのっ! ま、前の方も……」

「え? いや……前の方はいいよ」

 さすがに結婚前のお姫様にそんなことをさせる訳にも……一緒にお風呂入ってて今更感あります?


「……アレク……私……」

 するとアンジェは俯き、どこか震える声で話し出す。


「私、怖かったんです……アレクがとても強いのはわかってます。けれど、万が一アレクが死んでしまったらと思うと……」

「……アンジェ」

「ここで帰りを待つしかできなくて……それで……」

「……」

 どうやら、とても寂しい思いをさせてしまったようだ。

 少し配慮が足りなかったかなぁ……すまないことをした。


「……抱いて、くださいませんか?」

「アンジェ……」

「例え離れていようと……その温もりを思い出せるように……あなたを、私のものにさせて欲しいのです……」

 潤んだ瞳で精一杯のお願いをするように見上げてくるアンジェ。


 お姫様だとか、婚前交渉とか……。

 どうでも良かったな! アンジェを手放すつもりは毛頭ないし!


「ここでは身体が冷える。俺の部屋に行こう」

「――っ! うんっ! うんっ!!!」




 その後、俺のベッドで寝ていた座敷犬を放り投げ、アンジェと抱き合った。

 アンジェは……今までの寂しさをぶつけるかのように激しく求めて来た。破瓜の痛みで辛いだろうに……。

 もう少しアンジェに優しく接しようと思いました。




 ちなみに、回復魔法で例のアレが治るか確認してみたけど回復しないようでした!

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