第143.5話 幕間 エリーの実家②
「また外したよ! アレク君!」
角を生やしたうさぎ、ホーンラビットを狙った『マジックミサイル』は避けられ、そのまま逃げられてしまった。
「これで5匹目! 逃がした数だけど!」
普段と異なりまっすぐ飛ばすだけに拘っているからか、これがなかなか難しい。
「ふふ。勝負になるよう手加減してくれてるんだね」
「まぁね。けど、さすがに1匹も倒せないようじゃ困っちゃうけど」
ゴブリンや! ゴブリンさんはいないかね! できれば群れで!
「うんうん、昔と変わらないようで安心したよ」
「あまり直接交流は無かったけどね」
だいたいエリーがうちに来過ぎなんだよ! 我がもの顔で歩いてたけど王宮なんだぞ!
「エリーから聞いていたよ。アレク君は何でもしてくれる、エリーのことを大事にしてくれてる、とね」
「あー……まぁ、そりゃ、ね」
邪険にできるはずもないし。
「だからこそ、誘拐されたと聞いたときは裏切られた気分だったが……久しぶりにあの子に会ってそれも無くなったよ」
嘘つけ! 決闘申し込もうとしてたじゃないか!
「あの子の変わらない、いや、より幸せそうな顔。エリーは大事にされているんだ改めて感じたよ。ありがとう」
「……いえ、俺こそエリーにはいつも元気を貰ってます」
ちょっと自分に正直すぎるところがありますけど!
さっきのも何だよ機織り機が欲しいって! 自分の親と姉が決闘申し込むくらい怒ってるってのに!
「うむ、変わらずうまくいっているようで安心した……しかし、あの喋り方まで変わってないとは思わなかったけどね……」
「……」
……何のことですの? 良くわかりませんわ!
「……あの喋り方、アレク君のせいなんだよ」
「え?」
「初めて会った時、あの喋り方が可愛いと言ったそうだね」
えぇ~……言ったような言ってないような……。
「あれから、君に褒めて貰いたいからと……まさか、ここまでそれが続くとは思わなかったけど」
「……一途に思って貰えているようで嬉しいです」
あの話し方にそんな思いがあったとはね~。
「そうなんだよ、エリーは君のことが昔っから好きでね……他にも――」
その後もジェイドからエリーの思い出話を聞くが……ほとんど俺が知ってる内容だった。
そりゃあんだけ俺に会いに来てたらねぇ……。
すまないなジェイド、俺がお前の立場なら絶対許さんけどな!
◆◇◆◇
「結果は20対5で私の勝ちだ! どうだ、まいったか!」
残念ながら、俺に狩りの才能はなかったようだ。
「もー! アレクったらー! 機織り機、欲しかったですの……」
「ごめんよエリー。機織り機なら買ってあげた上で様々な魔法付与を施してあげるからね!」
エリーの危機には身を持って守護りながら敵を殲滅する、そんな機織り機にしたい。
「……魔法付与、か。ちなみに自重しなかった場合、この勝負どうなってたのかな?」
「う~ん……『索敵』でマナの反応を記憶してそれを追跡しながら魔法を放てば敵は一掃できそうだけど……」
むむ、それだと倒した敵の回収ができなさそうだぞ!
「あぁ……うむ、わかったよ。とにかく! 今日は我々の勝ちだ!」
え、やっぱりジェイドとアニー義姉さんはチームなのかよ!
「くっ! 勝った気がしないっ! これは鍛え直さねばっ!」
さすがです義姉さん!
「さて、我々が勝った際の報酬だが……用意はできてるかい?」
「えぇ、準備万端よ!」
お茶会に勤しんでたマミーさんが言う。準備って、何の準備だ?
ま、まさか! 結婚おめでとう的な!?
いやーまいっちゃうなぁー!
そこに、何やら大きな物が入っている袋が運ばれてきた。そして何やら動いている。
え? 何これ。正直怖いんだけど。
まさか人? 人が入ってるの?
アニーたちが賭けで勝ったからって俺にこんな悪趣味な物見せてるの?
「さぁっ! 出ておいで!」
ジェイドの掛け声とともに、袋の中身が飛び出した。
「……」
そこにはいたのは……。
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