第143.5話 幕間 エリーの実家①
「貴様ッ! アレキサンダーッ! 私と決闘しろっ!」
エリーの実家に遊びに来て開口一番そんなことを言われる。
彼女はエリーの姉である。
エリーとは真逆の性格をしており、戦いこそ己が人生と言って憚らない。
綺麗な顔立ちではあるが、漢らしい性格と凛とした佇まい。
男性より女性にモテてるんだとか。
「落ち着けアニー。まずは私からだ」
エリーの父親からもそんなことを言われる。
どんだけ嫌われてるねん!
まぁ可愛い娘や妹さんを連れ出してしまった訳だし、わからなくもないけど。
それと毎度思うけど、兄なのか姉なのかはっきりして欲しい。
「まぁまぁ、あなたもアニーも落ち着いて。そんなことを言っていたらエリーが悲しむわ」
エリーのお母さんが宥めてくれる。もちろん名前はダディー……じゃないよ、マミーだよ。
「アレク! 私最新の機織り機が欲しいんですの!」
「よしっ! その決闘、受けて立つ!」
エリーの為なら義姉だろうが義父だろうがぶっ飛ばしてやんよ!
「な、何でだいエリーちゃん! パパを応援しておくれよ!」
「そ、そうだぞエリー! 私を応援せんか!」
エリーの父、ジェイドとアニーが泣きそうになりながら抗議する。
「? どうしてアレクの敵を応援しなきゃですの?」
「「――っ!?」」
あらら、2人揃って白目向いてる。
「まぁさ、俺もエリーを誘拐っぽく連れてっちゃった訳だし……お2人が納得するのなら付き合うよ」
でも誘拐されたのはお宅の娘さんの意志ですけど。あと腹黒メイド。
そういえばその腹黒メイドどこ行った?
「……その言葉、後悔するなよ!」
アニー義姉さん……怖すぎっ!
◆◇◆◇
王都近郊の森、デールと初めて出会った場所にやって来た俺たち。
「では期限は1時間、どちらが多く魔物を倒せるか狩りで勝負だっ!」
「我々が負ければ機織り機をエリーにプレゼント、もし我々が勝てば……」
か、勝てば……?
「……いや、それは後のお楽しみだ」
あ、はい。
「どうせアレクが勝つのですから、さっさと教えてですの!」
身も蓋もないことを……しかしエリーは勘違いしている。
「エリーや、今回俺は敵をしとめる以外の魔法は使わないよ! じゃなきゃつまらないからね!」
索敵とか隠密とか使っちゃうと勝負にならなそうだし。
これは戦いというより……親睦を深める交流みたいなもんだし! ……だよね?
「えー! ですの! 機織り機のためにも頑張って欲しいですの!」
「もちろん! エリーの為に頑張るよ!」
常識の範囲内で!
「……では始めるぞ! 母上、合図を頼む!」
「はぁーい! では……よーいスタート!」
義母さんの合図で狩りが始まる。
懐かしいな、狩りでの競争なんてギルとやったの以来だ。
「オラァーっ! ぶっ殺してやるーっ!」
義姉が怖ろし雄叫びを上げながら駆け出していく。
「アニー義姉さん、か。いや、義妹か?」
そう、義妹(予定)でもある。
実はパーシィの婚約者はアニーだったのだ!
何でもその凛々しい姿、逞しい姿にほれ込んだパーシィが何度も求婚をしたんだとか……。
パーシィに何度も求められるなんて羨ましすぎる!
当初、アニーは『軟弱者は好かん!』と言って何度も断ったそうな。
しかし何度断っても諦めないパーシィに折れ、ついには認めたらしい。
確かにパーシィにはああいう感じのグイグイオラオラ系姐さんの方がいいのかもね。
アニーの苛烈な性格は幼少期からだったらしいので……エリーはその反対に育てられたんだろうなぁ~。
その当事者たちは性格は真逆だけれども仲はいいらしい。というより、アニーが可愛がってくれている。
そのため、可愛い妹を奪った俺がおもしろくないのところもあるのだろうね。
「さぁ、アレク君や。僕らも行こうかねぇ」
「え? 義父さんはアニーさんと行くんじゃ?」
「まぁまぁ。せっかくだから話しながら行こうじゃないか」
はぁ。まぁいいけど。
ちなみに、エリーとお義母さんはティーパーティと洒落こむようだ。
お優雅ですこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます