第142話 今後の事
「やー! 思った以上に酷いありさまだねぇ!」
翌朝、ところどころ崩れている建物や重症とまでは言えないまでも、ケガをした人たちがそこかしこに見える。
「『回復』! 『回復』! はー、キリが無いなぁ」
そんな彼らに対し、回復して回る俺。
だって俺、聖女らしいし?
「坊ちゃま……よろしかったので?」
「うん? 何がだい?」
一緒について来てくれたメイちゃんが尋ねてくる。
「その……弟君のことです。今までの坊ちゃまに対する仕打ち、私は万回八つ裂きにしても足りないくらいなのですが……」
八万の肉片……グロッ!
「……最初は俺も許さないと思ってたんだけどねぇ。兄上だなんて言われちゃったら、さ」
「そう、ですか。坊ちゃまがいいならそれで……」
尚も納得できない表情のメイちゃん。
「まぁ、民の命が失われたのは許せない。だからこそ、俺が手を下しちゃったら残された人の気持ちの行き先も無くなっちゃうし」
「……」
「それに、町の人達はともかく……城勤めの奴らは死んでも文句言えないし」
「どういうことですか?」
「だって……第1王子を無能だなんて罵って……不敬もいいところ、間違いなく処刑でしょ」
「……確かに!」
ちょこっとスッキリした顔のメイちゃんを連れて王宮へと辿り着く。
立ち並ぶ貴族の面々の間を抜け、玉座へと座る。
「図が高い」
肩肘を付き、愚かな自称家臣どもを見下ろす。
「――っ! も、申し訳っ!」
「言葉より態度で示せ」
そして跪く家臣たち。
「昨日より王位を譲られたアレキサンダーである。戴冠式諸々の儀礼は省略とする」
「「「ははーっ!」」
「さて、では早速。我がクイードァ王国は金輪際武力を以て他国を侵すことを禁止とする」
途端に騒めく場内。
「なっ! お、王よ! そのようなこと、我々に何の相談もなく――っ!」
「黙れ。前々王……俺の親父の命の危機にも拘らず駆けつけなかった奸臣め」
言葉を失う一同。
「続けるぞ。今後周辺諸国とは和議を結ぶ。以降は農作物を始めとした一次産業の発展とダンジョンを活用した事業に力を入れていく。また、獣人を始めとした亜人の差別を禁止する」
差別については今思いついたぞ! それ以外のことも……割と言ってることめちゃくちゃだ!
国のことなんて知らんわ! はーっはっはっは!
「ふっ! ふざけるなっ! 何の権利があってそんなことを!」
「我は王だが? 納得できないなら去れ。貴様など今後の治世に不要」
王様だぞ! 偉いんだぞ!
「お、横暴だ! 誰が貴様なんかに――っ!」
「おや……貴様見覚えがあるな。もしや、以前我のことを無能だと罵っていた奴か。ふむ、死ぬか投獄か国外追放か選ばせてやる」
「――っ! 王よ! お考え直し下さい! 我々が出て行けば国政は混乱を極め、国全体が乱れますぞ!」
「先も言ったが、奸臣など不要。納得いかない者どもは全員今すぐ去るが良い。それでも尚、国に尽くそうとする者だけ残るが良い」
さぁ、どれくらい残るかな……。
「――っ! 失礼する!」
「我もだ!」
「我も我も!」
ぞろぞろと退出していく元貴族たち。
うわぁー。予想より多いぞ! どうすんのこれ!
「……ふむ。残ったのは貴様らだけか」
残った面々を見回す。
エリーのとこのアルティス公爵家。デールんとこのハールト侯爵家。後は……わからん! まぁまぁいるっぽい!
うわぁ、チョーダの奴も残ってる。あいつ苦手なんだよなぁ……。
「恐れながら申し上げます。先に仰いました事、誠に痛恨の極みでございます。どうか今一度国や民のため、我らが忠義を示す機会をお与えください」
アルティス家の……義父にあたるジェイド=アルティス当主が代表して訴えてくる。
「うむ。しかと頑張ってくれ! じゃ、王様交代! 次、パーシィ!」
「「「…………は?」」」
はぁー、堅っ苦しい喋り方疲れた!
実は今日のこの流れ、昨日パーシィやウーノ、セイスらと話あって決めたことなのだ。
とりあえず一番邪魔なのは旧家臣ども。
こいつらを追い出すのが今日の最大の目的だった。
侵略国家の思想に塗れたこいつらの考え方、きっと相容れないだろうし。
やつらは今頃必死に財産を回収しようとしているだろうが……既に『トロイア』の面々が回収に走っているだろう。
ざまぁ見やがれ! 禄な財産もなく国を追い出される気分を味わうがいい!
はーっはっはっは!
しかし、国の運営が困難になるというのは事実。ここからが正念場でもある。
まぁ、リョーゼンの義父辺りにでも頼むか……。
しまった! あいつ、正真正銘のふわふわ親父だった……。
やばい当てが外れそう……。
「前王より、王位を譲られましたパーシバルです。戴冠等の儀式はおいおい――」
……戴冠式……なるほど。
「政策の基本方針は前王と同じものを目指します。皆さまのご尽力、期待しています!」
「「「はっ!」」」
俺とは打って変わって穏やかな雰囲気に包まれる場内。
うんうん、パーシィにはこういう方が似合うもんね! 憎まれ役は俺が引き受けて良かったよ!
「そこで……宰相として紹介したい人がいます。さぁ、入って来て!」
そこで現れたのは――。
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