第140話 鉄槌


「良かったな、デール……ナイツ達が力を貸してくれて」

 

 王宮の前にて、実は少し前から様子を窺っていた俺。


 かつてデールとともにに召喚魔法を試した時のことを思い出す。

 あの時、さらにデールが努力を重ねたら力を貸すとかなんとか言ってたっけ!


 さっさと力を貸してくれたらいいのに!

 めんどくさい方々ね~。


 まぁ、現時点でもデールの実力を遥かに上回ってるからなぁ。

 それもしょうがないか。




「おや、あれは……」


 そんなデールの前にギルバートが現れたぞ。

 何を喋って――!?

 

「シュバルツ・エンデ!」

 デールと魔力の間に盾を投げる!


 あいつ……いきなりぶっ放したやがった!

 間違いなく殺す気だったぞ!


 ◆◇◆◇


「――これ……は?」

「俺の盾だよ」


 そう言って2人の前に降り立つ。


「――ッ!!! きっさまぁっ! アレキサンダーっ!!!」

「……久しぶりだな、ギルバートよ。何だその醜い姿は?」


 化け物の腹から上半身だけ飛び出てるギルバート。

 マジキモイんですけどぉ~!


「だまれぇっ! いつもいつも俺を見下しやがってっ! 例え醜かろうが! 貴様を超えられればそれで構わん!」

「? 俺はお前を見下したことなんかないよ?」

 少なくとも、昨日までは。

 特に、まだ王宮に住んでた頃は可愛がってたつもりなんだがなぁ……。


「黙れっ! いつも上から目線で! 俺を馬鹿にしたように!」

「いや、誤解だと……」

「黙れ黙れ黙れ! 貴様だけは許さんっ!」

 あかん、こいつ理性がぶっ飛んでる。


「……まぁいいや。お前、それだけのことで……こんなことしたの? 人、結構死んでるけど」

「それだけのことだと……!? 愚かな愚民どもも! 余の! 国の礎となれて本望だろうが!」

 こいつ……。


「愚かはお前だ。まずは言葉の勉強からやり直せ!」

「きっさまぁー! 産まれ出よ! そして殺せっ! 我が眷属どもよっ!」

 ギルバートの周囲に数匹の剣士型の影が現れる。


「……つまらん」

「――は?」

 醜い姿になってまで得た力が、この程度なのか……?


「『ディバイン・レイ』! お前……この程度じゃないよなぁ?」

「……当然だ! 余の力……存分に見せてやるっ!!!」


 そう言って天井を破壊し、飛び立つギルバート。


「……仕方がない」

 王宮をこれ以上壊されてもと思い、俺も飛び上がる。


「殿、下……後は……頼みます!」

「あぁ! よくやった、デール! さすが俺の騎士!」

 その盾の後ろで見ているが良い。今度は最後まで、ね。



「ふはははは! 恐れ慄くがいい! 出でよ!」

 先程デールが苦戦していたドラゴンを3体程産み出すギルバート。


「お前に力を貸してるその悪神、権能は何だ?」

「……間違えるな! 我が権能は『創造と従属』だ!」

 ふむ、つまり……自分の魔力から眷属を創り出し、言うことを聞かせているのか。

 

 しかし……愚かなギルバート。本当にバカな奴。


「その力は、お前のものじゃあないだろうが!」

「最早余の一部! 余の力也! 征けっ! 我が眷属よ!」


「コォォォ……!」

「グルルルルッ!」

「グォォオオオーンッ!」


 なるほど、3体それぞれ特性も性格も違うようだ。

 本当に生物なのか? 神と呼ばれる者の力は規格外だ。


「ヴァイス・アンファ!」

 光り輝く剣で横薙ぎ。

 放出された魔力は容易くドラゴンを切り裂く。


「お前さぁ……自分より弱い奴を創り出しても意味ないだろう」

「ぐっ! ならば……これならどうだっ!」

 今度は大量の蝙蝠のような影を創り出したギルバート。


「力は弱いが……否、数こそ力也!」

 ふむ、なかなか考えている。


「届かなきゃ、意味がないけどね」

 元から展開している魔力すら、突破できていない。


 バランス取れバランス!

 これならドゴーグの軍勢の方が脅威だったぞ!


「『ホーリー・サークル』」

 光の上級範囲魔法を展開、蝙蝠を燃やし尽くす。


「クソっ! クソクソクソがっ! どこまでもコケにしやがって!」

「コケにしてんのはてめぇだ! こんな下らない力のために守るべき民を殺しやがって!」

 それと俺を城から追い出すとき! あの時のこいつの顔! したり顔で! 寄ってたかって無能だ無能だバカにしやがって!


「無能はてめぇだ! バカ野郎!」

 叫び、ギルバートに斬りかかる!


「抜かせーっ!」

 ギルバートも応戦の構え! しかし――!


「バカめっ! 生身で剣を受けられるわけないだろう!」

 受け止めようとした手を両断する!


「ぐぅっ! 黙れっ!」

 蹴り上げようとしてきた足を両断する!


「バカがっ! こんな醜い顔くっつけやがって!」

 化け物の首を両断する!


「ぎゃぁぁぁっ!?」

「うるさい! バカがっ!」


 その腕を、ももを、腹を、ギルバート以外の部分を削ぎ落す。

 最期に上半身だけのギルバートだけが残る。


「そんなに神の力が欲しいならくれてやる!」


 そう言って、巨大な腕をイメージ!

 遥か頭上からギルバートに向かってその拳を振り下ろす!


「『神の鉄槌』! 食らいやがれっ!」

「ぺぎゃっ!?」


 巨大な拳骨で地面に叩きつけてやった!

 まぬけな声を上げやがって! いい気味だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る