第139話 長い道のりの果てに
「エリー!?」
突然現れたエリー。
一体どうして……?
「その子の心が壊れているとお聞きしましたわ!」
「……えぇ、その通りよ。悔しいけど、私には治せない……」
まるで自分のことのように悔しがるィユニス。
「いいえ! きっと治せますわ!」
「エリー、どうやるんだい?」
冗談を言ってるようには見えないし、言う子ではない。
「さぁ? けれど……何とかなりますわ!」
一瞬こけそうになったけど……そうだ、エリーはいつだって諦めない!
いつだってその明るさと笑顔で苦難を乗り越えて……きたっけ?
ま、まぁ! 周りは元気になるし!
「さぁさ! こちらにおいでなさいですの!」
患者を呼ぶんかい!
「……」
「ヨミ?」
するとどうだろう。大司教の命令なしでは動かないはずのヨミがエリーの方に歩いて行くではないか。
まるで……希望がそこにあるかのように。
「さぁ、あなたのことをよく見せてくださいな!」
「……」
……エリーには……俺にも見えない何かが見える。
それは魔力か……魔素そのものか……。
「……ここ! ここですわ! さぁアレク! ずばーっとやっちゃってくださいですの!」
「……んえ?」
え?
「な、何だよずばーっとって!?」
「ずばーっとはずばーっとですわ! アレクならできますわ!」
わからん! 丸焦げにするビジョンしか見えん!
「――っ! エリーさん、あたしの力を使って!」
そう言ってィユニスが光の塊になり……エリーに憑依しようとしてるのか!?
ナイツみたいに!
「? いやー! ですの!」
!?
「え? いや、あたしの力貸す……」
「私の身体は私とアレクとヨシオだけの物ですの!」
誰だよ、ヨシオって。
いやいや、ふざけてる場合じゃ……。
「でも! あなたを使うことはできそうですわね!」
そう言って、ィユニスの胸部に腕を……突き入れた。まじかよ。
「ぐぇっ!? ――え、私の力が……勝手にっ!?」
「えーい! ですのー!」
な、なんだそれ……? これも魔素の操作? そんなこともできんの……?
とにかく……エリーを経由してィユニスから何かが放たれる。
「――っ!」
「ヨ、ヨミっ!?」
そして……。
「……! ――っ、バ、バルツィ……?」
「ヨミっ!? あぁ……神よ……ヨミっ! ヨミーっ!」
大司教……ヨミ……。
「ぐふっ、ぐすっ! ヨミさまぁ……」
「うぉぉぉぉ~ん! 神よ! この世の全てに感謝します! うおおおん!」
静かに見守っていてくれた護衛さんも、堰を切ったかのように泣き出す。
「ふぃー、ですの!」
「こんな、こんなことって……!」
やり切った顔のエリーと、涙を流すィユニス。
「……夢を、ずっと夢を見ているようでした……悪い神様に体を乗っ取られ……ひどいことをして……ずっとあなたが傍にいて……大きなくりくりした目がこっちを見て……」
そのくりくりおめめの持ち主を見やる。
笑ってる顔も素敵だけど、きょとんとしてる顔も可愛い。
「エリー、君は間違いなく2人を救ったんだ。とても誇らしいよ」
「えっへっへ~、ですの! けど、アレクやそちらの方のおかげですの!」
なんと! 謙遜を覚えたのかいエリー! 今日一番の驚きだ!
「礼ならアレクに言って。あたしは力を貸しただけだから……!」
ィユニス……お前……。
「いや、大司教よ。この結果はお前が招いたものだ! お前のこれまでの人生に敬意を表する! よく頑張ったな!」
「アレキサンダー様! このご恩は一生っ! 私のっ! 私の全てを捧げますっ! うぉぉぉぉ~ん」
「アレキサンダー様、私も……朧気ながら全て覚えています。夫とともに、生涯の忠誠を……」
そうそう、その言葉を待っていたぞ! 苦労した甲斐があったわ!
やはり、短絡的に解決してもこうはならないからな! はーっはっはっは!
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