第135話 世界の崩壊(2度目)
「何とかニガリィユニスって神、知らん?」
昨夜調べた魔法陣に記されていた神と思われる存在の名前。
確証を得るため、それを調べにドゴーグの元へとやって来たんだけども。
「知らん」
「……やっぱりなぁ~」
こいつ友達いなそうだもんなぁ~。
「何を思ってるかわからんが……我にも知り合いの神くらいいるからな!」
「ばっちりわかってんじゃん。どっちにしろ知らないんならなぁ~」
ちっ、使えない奴!
「……一応言っておくが、神の存在など星の数ほどいるのだからな?」
それもそうか。そりゃ強ければなれる、とくればねぇ~。
前の世界、その小さな国だけでも八百万はいたものね。
「でもさ、お前も何とかリィユニスも俺たちが住んでる世界の神だろ? さすがに知ってんじゃないの?」
「違う。我は近くにある別の世界の神であるぞ」
へ?
「嘘やん! だってお前この世界で召喚されて……」
「いや貴様も別の世界から女神召喚してたじゃないか」
……確かに!
「かつて我は、当時のハンダート領主の求めに応じ、この世界に顕現した。その後に我が名とあの魔法陣を教えやったのだ。直接喚ばせてやるためにな」
あー、つまり俺やデール君のときのようなものはランダムでその辺の世界からも召喚する。
一方、何とかィユニスやドゴークのように直接指名することも可能。
「いずれも、必ずしもその世界の神って訳ではないのね」
「左様。故に、召喚魔法の発動には相応の魔力が必要となる。神ともなれば、相当な量だ」
世界飛び越してるもんなぁ……。
「単身女神を喚び出すことの非常識さ、理解したか?」
「……」
何か小馬鹿にした感じ! イラっときたぞ!
「もしかしたら、あのふわふわ女神が特別なだけかもしれん」
そう言って、地面に魔力で召喚陣を描く。
『我望む、強そうなやつ』
「ばっ! ばばばばばっ! 我の世界っ! ここ我の世界ぃぃっ!!!」
「ふははははっ! 出でよ我が僕よ!」
――その日、1つの世界が崩壊した。
◆◇◆◇
「ふぅ、大変な目に遭った」
喚び出したモノとの死闘、飛び散る血と世界、そして芽生える友情。
失ったもの、体力。得た物はプライスレス。
「我、魔力欲す」
小っちゃいクネクネのようなサイズのドゴーグが俺の肩に座っている。
「そのサイズなんだから、もうちょっと可愛く振る舞えよ」
再び身体を維持できなくなり、極限まで存在を落とした姿だというこれ。
「……われ、まりょくほっす」
「ぷっ! 可愛くねぇっ! ぷぷぷ!」
声を可愛くしてるつもりっぽいけど!
見た目! 顔とか見た目は厳ついままだから最早不気味なんだが!
「……我が世界、戻りたい……」
「仕方がないじゃん、お前の世界また崩壊しちゃったんだから」
だからしょうがなく連れてきてやってるのだ。
俺ってば、やっさしー!
「うぬのせい! うぬのせい!」
まぁ、ちょっとばかし責任は感じる。
「だからこれ、あげてるだろ!」
そう言ってまた『収納』から魔力塊を取り出す。
こいつが『欲す』というたびに魔力塊をくれてやっている。
自身の魔素とするためには若干の時間が必要なようで、こいつの世界の再構築分も含めちょびっとずつ分けてあげてるのだ。
「しかしなぁー。これがまさか……ゴルディック聖教会にしか伝わらない秘術だとはなぁー」
2度目に大司教と会った日、そこで色々教えて貰ったのだが……。
その話の中で魔力を魔石化する魔法陣のことも教えて貰ったのだが、これが教会に伝わる門外不出の秘術だったらしい。
「……言ってみれば超圧縮された魔素の塊。お前たちの身近なもので言うと魔石のようなもの。他の人間がそのような技術を持っているか?」
ちょっと回復したドゴーグが流暢に話し出す。
確かに魔石を自在に作れるのならば、高くは売れないか。
生まれた後すぐに作ってたから深くは考えなかったけども、案外難しい技術だったのね……。
ちなみに、今はクイードァ王宮にある資料室にいる。
目的はもちろん、ィユニスについて調べるためなんだけど……。
「だめだ、なかなか見つからん!」
「……あの、さ。喚べば?」
ん?
「だから、自分で喚べば? 矮小な人間どもですら喚べるのだから、喚べるだろう!」
「……」
確かに!
◆◇◆◇
その後、今度は俺の世界にてィユニスを召喚。
名前が多少違ったらしいが……よく喚び出せたな俺!
そんな彼女、ほぼ聞いた通りの権能ということで裏付けは取れた。
であれば、俺のやらなきゃいけないことは特にない。
ま、せめて見守っていてやるか!
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