第124話 ダンジョンの崩壊
「「「……」」」
これには思わず、誰もが口を噤んでしまう。
「『典太』ぁ……すまないっ! 拙者が! 拙者が未熟なばかりにヘぶっ!?」
しかしダイヤゴーレムにとっては何の関係もない。むしろ敵が突然隙を晒してくれたようなもん。
憐れ、小次郎は思いっきり殴られてしまった。
「……おーい、大丈夫かー?」
「……殺してくれ」
ダメだ、剣とともに心が折れてしまっている。
「……しかたないのじゃ。わらわが典太の仇をとってやろう!」
そう言ってリオが人型からドラゴンの姿に変える。
「さぁ石ころや! かかって来るがよい!」
「……!」
一瞬リオに怯んだかのような反応をしたゴーレムだが、果敢にもリオへ体当たりを仕掛けてくる。
「くっくっく! バカめっ! わらわに肉弾戦を挑もうなど……挑もうなど……」
……リオの様子がおかしいぞ!
「……狭いのじゃが」
「でしょうね!」
この洞窟、高さ3メートルくらい、横幅は5メートルくらいと結構広めではある。人間基準で。
巨体を誇るリオが満足に戦えるかというと、そんなことはない。
「へぶっ!」
「……」
もう帰ろうかなぁ……。
「しょうがないですわね! ほら、アレクとの愛の結晶を味わうといいですわ!」
そう言ってエリーが指に着けている指輪型魔道具を発動する。
これは『極大火魔法』か! ダイヤに熱ってどうなんでしょう?
「……! ……!」
「おぉ! 苦しんでる! さすがエリー! ポンコツ2人とは違うな!」
「ダイヤモンドの扱いは存じてましてよ! お次はこちらですわ!」
存じてましたか! さすが前世はドワーフ! 金属の扱いはお手の物!
続いて、収納指輪から『超級地属性魔法』(メタルピラー)の魔道具を取り出し、使用する。
これは恐竜ダンジョンを周回してるときに手に入れたエリーへのお土産の1つだ!
「……!?」
「おぉ!」
金属の柱のようなものがダイヤモンドに衝突し、敵を粉砕する。
「ふっふーんですわ!」
「さすがエリー!」
ポンコツどもとは一味違うですわ!
◆◇◆◇
その後も色とりどりの敵が出て来たが、俺とエリーの交互で敵を倒していく。
ちなみにポンコツ共のうち、リオの方はサイズ変化の魔道具を使ってエリーの足となっている。
さすがに初めてのサイズ変化は身体が動かしにくいとのことで、本人も渋々了承している。
そしてもう1人のポンコツはというと……。
「ぬわぁぁぁー! また罠でござる!」
そう、『リアル漢人形mk.1』として頑張って貰っている。
各種防御魔法はかけてあげてるので問題はない! ハズ!
人道……? 知らん言葉ですねぇ。
ここのダンジョン、シンプルな構造だからか、宝石を餌にしてるつもりなのかやたらと罠が多い。
なので見つけるたびに解除するのもめんどくさいので、わざと引っかかって無効化して貰ってるのだ!
「うむ、ご苦労」
「……お主は鬼畜でござる」
人聞きの悪い……人材の有効活用をしてるだけじゃない!
「まぁまぁ。知り合いの神様に剣を打ち直して貰えないか聞いてみてやるからさ!」
「うぅ、頼むでござるよ……」
聞いてみるだけだけど。
「にしても、お前の才能(ギフト)でどうにかならんかったの?」
確か、『全テ切リ伏セル者』……敵の弱点や攻撃すべき場所が分かるとか言ってたっけ。
「才能は……あくまで才能。知っての通り、そこまで万能ではないでござる。確かに攻撃すべき場所は感覚でわかったのでござるが……」
「実際に斬れるかは自分の力次第ってこと、か」
いわゆるチート能力とはまた違う感じよね。カオルコの『百発百中』も似たようなもんだし、俺の『限界突破』も。努力あってこその才能、ってことかもね。
「そのようでござ――ぎゃーっ!」
話してる途中で火だるまになるとは失礼な奴だ!
◆◇◆◇
「ふむ、もうボス部屋か」
シンプルな分、攻略も早く進む。
「……恐らく、本来なら色の示す特性に合わせて攻撃をしなければ苦戦は必至、ということじゃろうが……」
「俺もエリーも攻撃手段は多いからね」
俺はともかく、エリーも器用に魔道具を使いこなしている。
「拙者の役割はここまででござるな! いやー! 残念でござる!」
「わからんぞ! 罠付きのボスかも知れん!」
見たことないけど。
「そんなことより! 早く行きましょうですの!」
「そうじゃの! 次はどんなキラキラじゃろか!」
キラキラ好きの2人が待ちきれない様子で……もう扉開けちゃった。
「……!」
「わぁ~! いろんな色が混ざってて……そんなにきれいじゃないですわ~……」
待ち構えていたボスは、エリーの言う通り赤や青、透明など様々な色が悪魔合体してて……。
「確かに、ごてごてしてて趣味悪い感じ」
「そうかの? キラキラしてれば何でもよいのじゃ!」
う~ん、40点!
「それでは! 私も色んな魔法をお見せしますわ!」
ちょっと待って! それってあれでしょ!?
各属性混ぜ合わせたら飛んでもない爆発が起こる奴!
「待って! 4つまでにして! 頼むから! 全部だと多分俺たちも死ぬから!」
「しょうがないですわね! えーい! 『元素爆発・四重奏』ですの!」
そう言って火、水、風、土の極大魔法を連続で使用するエリー。
……極大魔法?
しまった! ミントの時は初級だった……っ!
「うわぁぁぁっ! 『結界』! 『ロックウォール』! 『金剛・極』! 『次元壁』! 『シュバルツ・エンデ』! それからそれから……」
慌てた時の某タヌキ型ロボットの如く、思いつく限りの防御魔法を展開する。
そして――光が弾けた。
◆◇◆◇
「まさか、ダンジョンの崩壊をこの目で見られるとはの……長生きはするもんじゃ!」
あの後、何とか怪我もなくやり過ごせた俺たち。
爆発が収まった後、そこには何もなかった。
宇宙のように、暗くて何もない世界。
さすがに薄気味悪かったので、『転移』で脱出することに。
以前のように『次元門』で放り込めばよかったなと今にして思う。やっぱり焦っちゃだめだな!
「拙者の、踏破報酬とやらは……?」
「……」
他のところに行く元気はなかったので、恐竜ダンジョンで済ませました。
無事クリスタルは回収できましたとさ。おしまい。
……はて、何か忘れてるような?
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