第123話 イったのじゃ!
「助けてくれでござるーっ!」
ハンダート領主館に、幼子を連れた怪しい男がそう言って駆け込んできたという連絡が入った。
まぁ、思い当たるのは1人しかいないんだけども。
どうやら、いつものように人身売買の現場に乱入したところ、ついにその親組織がぶち切れて……とのこと。さもありなん。
で、ほとぼりが冷めるまでしばらくハンダートに避難したいとのことだった。
「こちらの条件を呑んでくれたらいいよ」
「じょ、条件でござるか……拙者はどうなってもいいので……アーリァだけは……」
そんな幼女に何をすると思っているのか。
◆◇◆◇
という訳で! やって参りましょうダンジョン探索!
今日は小次郎が喜ぶと思いまして、我らが誇るロリを連れて来てみました!
カオルコの時とは違い、こちらは事前情報はほぼ無し。
発見した人はヘカトンさんっぽいやつが出て退散したとのこと。
そりゃあんな筋肉の塊が沸いてたら退散するよね。
きゅんきゅんダンジョンを8層まで攻略した人はよく行けたと思う。
「条件というから、もっと恐ろしいことかと思ったでござるよ! お金とか……」
お金は怖ろしいからね。借金さえなければ変態ロリコン侍の面倒など見なくていいものを……。
「そんなことより! 今日はお前の好きそうなロリ(ババァ)を連れて来てやったぞ!」
「――!? どういう事じゃ! まさか……わらわをこの男に差し出すとでも言うのかっ!?」
いや別にそこまでは……単純に喜ぶかなって。
「……せっかくの心遣い、ありがたいのでござるが……別に、でござる」
スンッとした顔をしている小次郎。
意外! 10歳くらいの見た目だからイケるかと思ったんだけど!
何でだろうか……もしや内面の問題か……?
内面……はっ!?
「……」
黙ってエリーの前に立ち塞がる俺。
「? おんぶしてくれるんですの?」
そう言ってよじよじ登るエリー。
「……恐らく、不名誉なことを想像をされているでござるな? しかし! 舐めて貰っては困るでござる!」
突然怪しい風貌の男が目に炎を燃やし、熱く語り出す。
「見た目! そして内面! 2つのファクターが揃ってこそ! ぷにぷにしたほっぺに! 穢れを知らないぴゅあな心! それらが揃って初めて! 拙者の魂は熱く萌え滾るのでござる!」
「……」
……思ったより本格的にヤバい人物だったようだ。
エリーの教育に悪いかもしれん。あれ? エリーには何が足りないんだ?
「……よもやこんな男に差し出されようとするとは……そしてフラれようとは……」
何かすまん……。
◆◇◆◇
さて、第5層である。
ここまではお約束のヘカトンさんだったので、サクッとスルーするのだ。
まぁ、さすが攻撃特化の小次郎、ヘカトンケイルを一刀の元に切り伏せていた。
「ここは……なんと美――」
「キラキラっ! ここはキラキラダンジョンですの!」
ここに来るまで眠そうにしていたエリーのテンションが一気に高まる。
目の前に広がっているのは、これまでの道と同じような洞窟。
ただし、いたるところにルビーやサファイヤだったりダイヤモンドやパール的な結晶が生えていた。
エリーの興奮ぷっりもわかる気がする。
キラキラしたの好きだもんなぁ~。
「アレク! アレク! 持って帰りたいですのー!」
「でござる! でござる!」
「残念だけど、ダンジョンのものはドロップ品か魔石とかしか持って帰れないんだよ」
こういった飾りとかをも落ちだそうとしても、出た瞬間に塵となってしまうんだとか。
「はぁ~残念ですわ~……美しいものは儚いんですのね……」
「でござる……」
エリーはともかく、おっさんがシュンとなってても可愛くないんじゃが。
「ヒトは相変わらず愚かじゃな! こんなしょうもないものを欲しがるとはの!」
そんなことを言ってるリオのポケットにはいくつかの結晶が……。
持ってけないって言ってんだろ!
「そう言えば確かドラゴンって光る物が好きなんだっけ?」
リオをひっくり返しながら聞く。
「こ、これ! ひっくり返すでない! これは……不可抗力じゃ! しょうがないんじゃ!」
さいですか。
「アレク殿! 前方に敵の気配が!」
小次郎の声に目を向けてみると……。
「わぁ~! キラキラが歩いてますわ!」
エリーの言うのように、透明だけどとてもキラキラした石の塊が2足歩行で歩いている。
「さしずめダイヤゴーレムってとこかな? ゆけっ! 小次郎! キミに決めた!」
「うむ! 拙者に斬れぬものはない! 石ころだろうが宝石だろうが真っ二つにしてくれる!」
そう言って居合の構えをし、身を屈めたまま接近する。
「――疾っ!」
そして目にも止まらぬ速さで刀を振り抜く!
憐れ、ダイヤゴーレムは……あ。
「――っ!?」
パキンと何かが折れる音がして、何か細長い物が宙をクルクル舞い、何かが地面に突き刺さった。
ちなみに、ゴーレムさんは無傷である。
「は……へ……?」
「あー……」
ダイヤモンドは斬れない!
「ぬわぁぁぁーーーっ!? 『典太』ぁっ! 『典太』ぁぁぁぁーーーっっ!!!」
憐れ、小次郎の前世からの愛刀『典太の竿』は根元からポキリとイってしまったのであった。
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