第121話 きゅんきゅんSSランクダンジョン

「ア~レきゅん! 待った~?」


 カオルコである。

 いろいろ落ち着いたので、今日は女神の依頼を遂行しようと思う。


「待った。3分程」

「も~う! そこは今北産業ってゆ~とこだよ~!」

 日本かぶれめ。若干古いし。後文章ではないし。


「ま、とりあえず今日は来てくれてサンキューだ」

「そこはすみませんで~しょ!」

 この野郎! 何でもかんでもすみませんって言うか!


「はぁ、いいから行くぞ!」

「はぁ~い!」




 カオルコを連れてSSランクのダンジョンをクリアすることが今日の目的である。

 例のクリスタルを集めることが目的だ。


 何でもクリスタルの獲得条件と言うのは、転生者がSSランク以上のダンジョンをクリアすることで貰えるらしい。

 ということで、めんどくさいけどこうしてカオルコに付き合ってもらう訳だが……。


「初めまして、坊ちゃまに馴れ馴れしくしないでくださいね?」

 メイちゃんの当たりがめちゃくちゃ強い。


「え~? ど~しよっかな~! アレきゅん、イケメンだもんなぁ~!」

「くっ! 同郷だからって! 悔しいっ……うぅぅっ!」

 あーそういう……。さすがに生まれはどうしようもないもんなぁ~。


「メイちゃん、生まれた世界は同じだけど国は違うし! そもそもカオルコとはこっちの世界で初めて会ったし!」

「やぁ~ん! だからこそ運命! 感じちゃ~うっ!」

 しばき倒してやりたい。


「エリー様! あなたも何か言ってください! っていうか、どうして興奮していないんですか!?」

「? カオルコさん、でしたっけ? 別に冗談言うくらい許してあげますわ!」

 おぉ……本気じゃないとエリーのセンサーは反応しないのか……?


「お~う、エリーさんはからかいがいがありませ~んね!」

 メイちゃんや、その強く握りしめた拳を解いておくれ。手をつなぎたいから!


「ハァハァ……アレクがメイさんと手を……羨ましいですわぁ~」

 こんだけで反応するの!?


「おぅ……エリーさんの業は深~いですね~……」

 それはそう。


 ◆◇◆◇


「ここがSSラ~ンクダンジョン……何だか……不気味で~すね」

 カオルコが喋ると緊張感がなくなるね!




 晴れてSSランク冒険者となった俺。

 そこでギルドで該当しそうなダンジョンを調べて貰った。


 で、複数あるうちの候補からこのダンジョンを選んだんだけど……。

 カオルコが。名称で。

 

「ここが……通称『きゅんきゅんダンジョン』」

「ふざけた名前の癖ですが……感じる圧はトカゲダンジョンと大差ありませんね」

 右側にいるメイちゃんを見る。トカゲじゃなくて、恐竜ね!

 あれ? じゃあトカゲでいいのか?


「まぁ、行こうか!」



 そして洞窟を進むと……。


「グォォォ……」

「……良く見た顔ですね」

 そう、ここでもヘカトンさん……。


「ちょっと! 見たことな~い敵! 気を付けて!」


 ちゅどーん。


「え? 何だって?」

「……何でもな~いです……」

 見慣れた敵、さっさと通過しようと魔法で吹っ飛ばしたためよく聞こえなかった、ということにしておこう。


 ……恐らくだけど、このヘカトンケイル。

 SSランクダンジョンの『門番』的役割を持っているのでは、なんて思っています。だってヘカトンケイルだもの。

 知らんけど。


「予想だと、5層目までは同じような道が続くと思う。だからサクッと行っちゃおう!」


 ◆◇◆◇


「いたっ! もう! 気を付け~てよ!」


 カオルコである。

 セリフは。


「アテレコしなくてもいいんだよ」

 メイちゃんが人型の魔物をグチャってするのを眺めながら言う。


 そう、このダンジョンがきゅんきゅんと言われる所以、それは――。


「それにして~も、今時こんなのできゅんきゅんはしな~いよね!」

 何だかきゅんきゅんするような罠だったり魔物だったりが溢れているダンジョンだったのだ!


 今も、岩の横を通り過ぎようとすると食パンを咥えた女の子っぽい魔物とぶつかったのだ!

 昔の漫画で良く見るやつ!


 向こうを見ると、謎の壁がポツンと立っている。

 恐らく、ドンとされるのだろう。


 先程から『わなわな君』も震えっぱなしである。


「アレクー! 見てくださいですの! きれいなピンクのお花の木ですわー!」

「いかん! エリーそっちに行っては告白されてしまうぞ!」

「それを見ることしかできな~い幼馴染がアレきゅんなのね! そうなのね!」


 ぐぬぬっ!


「そんなことはさせん! 『滅鬼怒の焔』!」

 破壊の化身よ! 俺に力を貸してくれっ!


「あぁ……ピンクの木が燃えてしまいましたの……」

「すまないエリー、しかし……お前を誰かに奪われる訳にはいかないんだ……っ!」

「もぅ、アレクったらー! 私はいつだってアレクだけの私ですわ!」

 思わず空いてる方の手でエリーのことを抱きしめる。


「ん~、きゅんきゅんポイント20点! 怒り方が激しす~ぎっ!」

 結構辛口っ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る