第120話 温泉に入ろう!

「で、あるか」


 せっかくのお風呂……にも拘わらず目隠しをされてます。

 ついでに、エリーの教育に良くないからと、腰にタオルを厳重に巻かれています。


「わぁ~! これが露天風呂ですの? ぽかぽかで気持ちいですのー!」

「ふわぁ~……気持ちいわぁ~……」

「な、何だか開放的で……恥ずかしいですね……」

「ご安心を、この辺には誰もいませんから」

 いたら露天風呂作るなんて言いませんよ!


「……改めて見ると、アラアラさんのおっぱい……大きいですね……」

 来たっ! この声はアンジェか!? いいぞいいぞっ!


「いや~ん! 恥ずかしい~」

「アンジェさんも……その、お可愛いですよ」

 アンジェさんのお胸は慎ましいですからな。


「メイさんのお胸もお可愛いじゃない!」

「……いえいえ、アンジェさん程ではありませんよ」

 ……あれ? 思ったのと違う……?

 何か、桃色の空間ってより、バチバチと火花が飛んでる気がするんですけど……?


「まぁまぁ、アレクちゃまはどっちのおっぱいも好きでちゅよね~?」

「う、うん! 僕おっぱいだ~い好きっ!」

 それでいいのか俺? 何か違う気がするぞ?


「坊ちゃま……本当は?」

「へぇっ!?」

「アレク! 本当は大きい方がいいんでしょ! 私に手を出さないのは……やっぱり色気がないからなんでしょっ!?」

「い、いや……そんなことは……」

 さすがにお姫様だし……婚前交渉は、ねぇ?


「? 手を出すって……アンジェはアレクに叩かれたいんですの?」

「……え?」

 ね。相変わらずで安心したわ。

 そういえば、以前の赤ちゃん騒動はどうなったんだろう……メイちゃんに頼んだんだけど。


「それよりも! みなさんのお股についてるもじゃもじゃは何ですの?」

「「「……」」」

 エ、エリーは……つんつるてんなのかい……?


「髪の毛と同じ色ですわね!」

「……エ、エリーさん……それは……」

「アレクにも生えてますの?」

「――っ!?」

 い、いけない! それはエリーにはまだ早い!


「こら、エリー様。女性が男性のそこを気にするのははしたないですよ」

「あ、そうでしたわ! アレク、ごめんなさいですの!」

 ふぅ、メイちゃんのおかげで事なきを得たぜ!




 しかし……エリーのせいでせっかくの温泉も色気が全くないな……目隠しもされてるし。

 と思っていたら……。


「アレク! ちゅー! えっへっへ~、今ちゅーしたのは誰かわかりますか? ですの!」

 わかるわい! わかるけど、突然の口づけ。ちょっとドキッとしてしまった。


「え、え~と……エリーかな?」

「正解ですわ! やっぱり、愛があればわかるんですのね~!」

 そうですの! 愛ですの!


「あらあら~、じゃあ……お姉さんも! ちゅ~! さぁ、誰でしょう~?」

「ア、アラアラかな?」

 多分、恐らく、自信ないけど。ちゅーされるときお胸も当たってたけど。唯一なんだよなぁ~。


「すっご~い! さすがアレクちゃま! おっぱい飲む?」

「お風呂上りまで我慢する」

 風呂上がりには牛乳!


「で、では……坊ちゃま、私も……ちゅっ」

「今のは……メイちゃんかな?」

 メイちゃんの口づけは、何て言うか最初はこっちを気にしてるような、遠慮してる感があるんだよね。そう、最初は。


「……私、まだキスしたことないんだけど……」

「アンジェよ、遠慮することないぞ!」

 みんなやってるし、ついでにやっちゃえ!


「……じゃ、じゃあ……って嫌よそんなオマケみたいなの! それにもう私ってわかってんじゃないの!」

 ふむ、気付いてしまったか。


「はぁ~……アレクが他の人とちゅーしてるだなんて……嫌なハズですのに……はぅ~……です……の」

 そんな業の深い呟きが聞こえたと思ったら、同時にお風呂内に倒れこむ音が聞こえた。


「ちょっ!? エリー様っ!」

「あ、あらあら~? 大変だわぁ~!」

「の、のぼせちゃったんだわ! 早くお家に運びましょう!」


 そう言ってみんながエリーを担いで行ったり看病しに行ったりと、お風呂から上がってしまった。




「あの……俺……」

 目隠し、もう取っていいかな?


「……」

「……」

 そして、目の前で真っ赤になったミントと目が合う。


「……お前、いたのかよ」

「は、恥ずかしくって……」


 そう言って、ミントも急いでお風呂から上がって行った。

 やっぱり……お前もつんつるてんやないかぃ……。

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