第119話 お家の色

「金ぴかピンクに決まりましたわ!」


 まさかなんだが。それだけはやめて欲しいと願ったんだが。


「メ、メイちゃん!?」

「……エリー様のお強さ、見誤っていました」

 ま、まさか殴り合って決めたの!?

 てゆか、メイちゃんに勝てるの!?


「ふっふーん、ですわぁ!」

「……前もじゃんけんで勝っていましたけど、何かコツでもあるんですか?」

 よかった、じゃんけんでしたか。


 前回……俺の部屋割りを決めた時の話かな。

 その時もメイちゃんとアンジェは負けてたみたいだしね。


「見ればわかります……ませんわ! 見てもわかりませんわ!」

 『見ればわかります』……ほとんどと言うか、全部言っちゃってんだよなぁ~。

 言わなかったのは『わ』だけですわ!


 まぁ、言わない方が良かったことに気付けただけマシだと思おう。


「なんと……私たちが何を出すか見るだけでわかるのですか?」

「そうです……そうでもありませんわ! 見てもわかりませんわ!」

 あぁ、エリー。愛しのエリー。


「そんな……見てわかるなんて、なんて才能なのかしら」

「ふっふ~ん、ですわ! でも本当は見てもわかりませんわ!」

 ちょっとおバカなところもチャームポイント。


「ところで……エリーが勝ったのに何でピンクも?」

「それは……ゴールドだけではきついかと思いまして……」

「もう1色入れようと泣きのじゃんけんをしたら……」

「お姉さんが勝ったのよ~! アレクちゃま、褒めて褒めて~」

 そっかぁー勝っちゃったかぁー。


 アラアラの胸を揉みしだきながら、出来上がる家を想像する。


 豊かな森に囲まれ、そこに佇むピカピカ輝くピンクのお家。

 ダメだこれ。全然佇めてないわ。全力で異物感を主張してるわ。


 い、いや待てよ?

 確か前世で見たピンクゴールドのアクセサリーって、別に奇抜な色じゃなかったような……。


「わぁーい! ですのー!」

「うふふ~、お姉さん楽しみ~!」

 それに、この2人の笑顔を前にしたらそんな細かいこと気にしなくってもいい気がしてきた!

 メイちゃんもアンジェも、しょうがないって表情で苦笑いしてるし!


「よしっ! さっそく頼むぞチック!」

「あいよっ!」


 ◆◇◆◇


「思ったのと違いますの……」

「う~ん、ピンクのお家、可愛いけど~……ちょっと違ったかしらぁ~?」


 思った通りだったよ! みんな知ってたよ!


「『回帰』! ぐぬぬぉぉぉ~~~!」

 魔力吸われるぅ~~~! 耐えろ! まだ3時間くらいだからっ!


「ぜぇ……ぜぇ……」

 し、しんどい……今度は塗り始めからみんなで確認しような!


「さすがアレクですのー!」

「すごいわ~アレクちゃま! おっぱい飲む?」

「飲む」


「で、どうすんだい? 塗料は戻ってきたけど……別の色にすんだろ?」

「そうだけどね……魔力が足りなくなるから……」

 やり直しはできないと思いながら、メイちゃんとアンジェを見る。


「あ、明日にしましょう」

「そうね! それがいいわ!」

 日和ってる日和ってる。


「じゃあさ、先に露天風呂を作ろうと思うんだけど!」

「「「露天風呂?」」」


 実は昨日から考えていた作戦だ!

 いい感じの露天風呂を作ることで、そこから見る家が景観を損なわないことの大切さをわかって欲しいのだ!


「そ! 簡単に言うと、外で入るお風呂だよ! 周りの景色とか楽しんだり、外の気温差を楽しんだり!」

「「「ふ~ん?」」」


 あ、あれ? 思ったより反応が薄いんですけど……。


「そう言えば、以前坊ちゃまが作ってくれましたね。確かに開放的で気持ちよかったですよ」

 メイちゃんがフォローしてくれる。


「ま、まぁ作ってみるからさ! みんなで入ろうよ!」




 作り方はと~っても簡単!


 まずは重力魔法で地面をへっこます! その上に綺麗にカットした木を並べる!

 これで外側は完成! 施工時間、朝から晩まで! 意外とかかったというべきか、さすが魔法と言うべきか。


 火と水の魔法でお湯を張って……いつか温泉にも入りたいなぁ……。

 さぁ、10メートル×10メートル程の木造露天風呂ができたぞ!


 ……うん、後日もっとしっかり作っておこう。

 ともかく、今日のところはこれでいいでしょう。




「さぁ、みんなで入ろう!」

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