第117話 人化の術
「キシャー!(待ってー!)」
「グギャァァァー!?」
メキョグキゴキ言いながらクネクネが糸を巻き付ける。
急いで吐いたからか、魔力もしっかり籠ってますな!
衝撃で翼が千切れ飛んでるわ。
おっと、滴るその血は回収しておこう!
「こら! クネクネ! 翼が欲しいならそう言いなさい! いきなり千切ったらびっくりするでしょう!」
「キュッキュッ!(あっ! ごめんねー)」
「はなっ離っぐぇぇっ!」
メイちゃんの時は血を回収できなかったから、もう少しだけ様子を見てよう。
――数分後。
「ハァ……ハァ……も、もうちっと早く離して、くれても……!」
「うむ、すまぬ」
よく言うじゃん! ドラゴンの血には特別な力が宿るって!
お家の塗料とかに混ぜたらいい感じじゃない?
「さてクネクネよ。一体どうしたんだい?」
「キュッ! キュッキュキュ!(人間になれる方法! 教えてー!)」
「まぁ! クーちゃん! ようやく願いが叶いそうですわね!」
エリーは何だか嬉しそうにしているが、俺には何を言ってるのかわからんのよね。
「……人を圧死させようとしといて、言うことがそれか……」
「クネクネちゃんに、何か文句でも?」
メイちゃんが凄む。
「いえ、ありません……」
不憫。
うちのメイちゃんやクネクネがすまないな!
「ところで、クネクネは何をしたいんだ?」
「見てればわかりますわ! ほらトカゲさん、お早くしてくださいな!」
「どいつもこいつも……ほれクネクネとやら、わしと一緒にやってみるのじゃ。手を出せ」
「キュッ!」
そう言ってドラゴンと巨大蜘蛛が握手を交わす。
ここに異種間友好が成った!
「……ほれいくぞぉ……そりゃ!」
そう言ってドラゴンは幼女に、クネクネは――!?
「きゅっ!?」
「まぁ! クーちゃん可愛いですわぁ!」
「ク、クネクネ……なのか……?」
そこには、幼女ドラゴンを超える幼女がいた。もちろん逆の意味で。
ドラゴンが130センチ程で……クネクネ(仮)は100センチ……くらい?
「きゅっ! きゅっきゅきゅ!?」
「ふむふむ……ほうかほうか」
まぁるいお顔に、ぷにぷにほっぺ。それと腰までスーッと伸びた真っ黒な髪の毛。
赤い瞳とまんまるおめめは元の姿の面影を感じる。
「それなら……好き、それに、契り……いや、交尾、じゃな!」
「おいてめぇ糞トカゲ! 変なこと教えんなよっ!」
しかし一歩遅かったようで……。
「あれきゅっ! ちゅきっ! 交尾!」
一番いけない部分がはっきり聞こえた気がした。
◆◇◆◇
「キュッキュッ!(アレクー好きー!)」
クネクネは今、俺の膝に載っている。
もちろん、蜘蛛の姿で。
聞けば、ここしばらくプルプルしてたのはどうにか人化しようと本人なりに頑張っていたらしい。
どうみてもうんこしてるようにしか見えなかったけど。
なぜ人化したかったかって言うと……まぁ、最初の言葉通り。
その気持ちは嬉しいんだけど、ね。
残念ながら人化してもその望みは叶わないだろう。
何せ、俺はロリコンでは……いやもうそう言う次元じゃない気がする。
「クーちゃん、もう人の姿になれないんですの?」
「慣れぬうちは魔力消費が激しいからの。そう何度も変化できんのじゃ」
なるほど……つまり、慣れてきたら……怖ろしい。
「ついでに、身体の使い方や言葉を話すのにもコツがいるからの、わらわが面倒をみてやろうかの!」
「そりゃありがたいが……いいのか?」
魔物からの人化と言うことで、俺らと違うこともあるだろう。
だから助かると言えば助かるんだけども。
「何、構わぬ。どうせやることもないしの。それに――いや、何でもない」
「それに、隙を見て――何ですか?」
隙を見て契りを――何だろうか。
「……お主ら人間にはわからんのじゃ! この者の眷属となることの意味が! 神の龍と呼ばれる存在になれるのじゃぞ!」
意味わからん上にこいつの求めに応じる必要性は一切ないんだが。
「俺、そこに愛を求めてくタイプだから」
「かーっ! 何を青臭いことを! お主は黙って精をわらわにぶちまければいいのじゃ!」
ひでぇ! 可愛い見た目して何てこと言いやがる!
「……わかった。お前と最初に会った場所、そこで待っていろ」
「お? え? あ、う、うむ……ほ、本当かの……?」
「うむ、さっさと行くがよい」
「わ、わかったのじゃ……はよう、参るが良いぞ……いや、やっぱり数刻程待って欲しい、のじゃ……」
そう言って飛び立つドラゴン。
「……坊ちゃま、よろしいのですか?」
「うん。いつ行くとは言ってないからね!」
バカめっ! まんまと騙されおって! 所詮トカゲよっ! は~っはっはっは!
「そうではなく……また来ますよ?」
「……」
問題を先送りにしただけじゃったか。
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