第115話 ドラゴンの襲来
「アレク、何やらリョーゼンの方にお客さまが見えてるそうよ!」
ガーベラさんとの心温まる交流をした次の日。
実家に行っていたアンジェが急いだ様子で戻って来てそんなことを言った。
「ん~誰だろ?」
「何でも『この鱗を持ってきた男はどこじゃ!』と言ってるみたいで……行ってみてくれる?」
鱗……?
確かにリョーゼンへの結納の品としてドラゴンの鱗やら爪やらを送っていたが……。
それに目が眩んだどこぞの商人か?
「めんどくさっ」
「いいから行ってよ!」
しょうがないのぅ。
◆◇◆◇
「貴様っ! ここで会ったが100年目ッ!」
何か幼女がいた。白銀の髪の毛、くりっくりんな頭とおめめがチャームポイントだろう。
ちょっと瞳が細長いのがミステリアス!
小次郎や、小次郎はどこかぇ?
「初めましてお嬢さん。ママはどこにいるのかな?」
いたって優しく声を掛けてやる。俺は子どもには優しいんだ!
パーシィ元気かなぁ……。
「母はとっくのとうに死んだわ!」
おっと、こりゃ失礼。配慮が足りなかったようだ。
「貴様……ッ! 貴様にわかるかッ!? 見知らぬ男どもに……自分の身体が武器や防具、果てはあくせさりぃとして使われている気持ちがッ!」
「なにそれこわい」
想像しただけでグロいんですが。
このお嬢ちゃん、なかなか壮絶な経験をしてきたのかな……。
これからは安心して暮らせるようにしてやろう。小次郎が。
「よしよし。これからは心配しなくていいぞ」
頭を撫でながら優しい声で語り掛ける。
何だ俺、こんな優しい声もできるの……?
しかし、何か手にごつごつしたものが当たるんだが……。
「気安く触れるなぁっ!」
「おわっ!」
撫でる手を激しく振り払われる。
ふむ、今までの経験から触れられるのが怖いのかしら。
なればこそ、俺が安心させてやろう!
「安心しろ! 俺はお前に危害を加えない! 頭も可愛かったから撫でただけだ! さぁ――」
「危害は十分に加えられたんじゃが! 貴様に剝ぎ取られる鱗! 切り刻まれる腕や尻尾! 邪魔だと言いつつもぎ取られる翼! 今でも鮮明に思い出すんじゃが!」
こわっ! 俺にそんなスプラッターな趣味ないんじゃが!
「お嬢さん、俺を誰かと勘違いして――」
「するか! 片時も忘れたことがないわ! ……ちょっと表に出ろ」
んん?
そう言って王城の外に連れ出される俺。ついてくるジョー。
何お前、いつ仕事してんの?
「大変だったんだぜ? いきなりやって来て『鱗返せー!』って泣きわめいたり『爪はどこじゃー』っつたりよぉ」
「それは迷惑をかけた、と言いたいところだが……生憎あのお嬢ちゃんのこと一切存じ上げぬのよ」
いや……鱗返せ? 爪返せ? それに、もぎ取られる翼?
あ、こいつもしかして!
「さぁ、ここでならいいじゃろ――」
「『転移』!」
そう言ってお嬢ちゃんを彼の山に飛ばす。
「お、おいおい! どこ飛ばしたんだよ! いいのかよ!?」
「構わん。あいつ、多分ドラゴンだ……お前たちに送った鱗とか爪とか……それの持ち主だ」
「お前、生きてるやつから剥いだのかよ……」
……そこ?
「というか、幼い子にしか見えなかったんだが……」
「ん~、いわゆる『人化』ってやつじゃないかな? 見たことないけど」
姿を変える魔道具とかもあるし!
「それに、人語を話す奴なんて……それこそ伝説の……」
「あ、伝説と言えば! 俺、伝説級、SSランクになったんだぜっ! 祝えよ!」
「おぉっ! そうだったな! 聞いたぞ! よしっ! 今日は俺の奢りだ! 飲みに行くぞーっ!」
かくして幼女のことなど忘れ、明け方まで『酔うのは女だけにしとけっ亭』で飲み明かした。
久しぶりに会ったビアやレーズンも元気そうだったし、舎弟も一緒になって騒ぎ倒してやったぜ!
◆◇◆◇
「……今日は女性との逢引じゃなかったようですね」
仮眠を取り、ガンガンする頭を抱えながらハンダートに戻る俺を、メイちゃんが迎えてくれた。
「……何で、わかるのぉ?」
「それは、いえ。お水をどうぞ」
さすがメイちゃん、気が利くわぁ……。
「どうぞ」
「うわぁーい」
そう言ってお膝を差し出してくれるメイちゃん。
久しぶりの膝枕! 言わなくても、やって欲しいことわかってくれるメイちゃん! 素敵!
「……はぁ~」
「……ふふ」
木漏れ日の中、気だるい体、包まれる温もり……。
これが……幸せ……。
……。
「見つけたぞ坊主!」
「……」
……飛んだ邪魔が入ったのだが……。
「いきなり『転移』させおって! いい加減わらわも怒るぞ!」
「何だよーせっかく人が幸せな気持ちで……」
「……トカゲ」
……あ。
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