第114話 エルフさんの本音 

「そう言う訳で、うちの新しいペットとなりました」


 しょうがなく連れて来たひよこ。


「ぴよっ! ぴよぴぃ!」

「『よろしくね!』と言っていますわ!」

 うむ、良きにはからえ!


「じゃあ、名前はぴよすけね」

「この子は女の子ですわ! それに、名前はみんなで考えてピヨエリントディアと名付けましたの! 通称ぴよちゃんですわ!」

 むむ? ピヨエリントディア? 何か意味があるのかしら?

 まぁいいか。


「エサは自分で採って来いよ! さもなくば、お前を食ってやるぞぉー!」

「ぴぃっ!? ぴよぴよっ!」

 ふふ、怖がるこいつを見てると……何だか可愛いじゃないか。


「『食べられる前に食べてやるっ!』と言ってますわ!」

「だから言ってること怖えよ」

 その愛くるしさの中にどんだけ殺意滲んでんのよ。


「そう言えば、あの木を見守りたいとかなんとか……その辺のこと聞いてる?」

「『1日に何回か近くに行ければいい』って言ってますわ!」

 う~んけどなぁ……せっかくの我が家にぴぃぴぃうるさい奴入れたくないしなぁ……。


「そうだ、なんか枝的なの余ってない?」

「細かいの物はエルフさんたちが持って行きましたよ。何でも、煎じて薬にするとか」

 そうメイちゃんが教えてくれた。


「じゃあ貰ってくるよ」


 ◆◇◆◇


「どうぞ、こちらが世界樹の枝です」

「ありがと。ところでこれ、何に使うの?」

 サラッと流してたけど、これ。世界樹の枝や葉っぱ。


 前世の知識では、死んだものを生き返らせたり、HPを全快させたり、1本しか持てなかったり……。

 結構な貴重品だったと記憶している。


 でもなぁー、あんなにたくさん生えてたしなぁー。


「世界樹は生命力に溢れていますので、葉っぱを煎じて飲めば傷や病気に効くとされていますよ」

「おーやっぱそうなんだ」

 生命の象徴! いつでもどこでもそんな感じ!


「十分生命力が宿った枝を地面に植えれば、それがまた新たな世界樹となる、と言われていますね」

「それそれ! それが目的で枝を貰いに来たんだよね!」

 トマトも似たような感じで増えるし、いけると思ったんよ!


「ふふ。この枝からは強い生命力を感じますから、大丈夫だと思いますよ」

「そっか! ありがとね。しかし詳しいね。今までも世界樹に触れたことがあるの?」

 見た目の若さとは異なり、実際は長く生きているエルフも多いようなので。

 目の前のガーベラさんもそうなのかもしれない。


「いいえ。けれど、私たちには植物の声が聞こえますので……世界樹も、初めて触れましたが色々聞こえてきます」

「へぇ~。例えば?」

「最初は、アレク様に切られて痛かった事」

「ぶっ!」

「次に、全身ぶった切られて痛かった事」

 す、すまねぇ……そんなに意識があるとは思わなくって……。


「ふふ、そんな落ち込まないでください。今は『頼られてる気がする』と嬉しそうですよ」

「そうなの?」

 さすが大黒柱! 家の中心!


「えぇ。みんなが真剣に家を建ててるのを見ていてくださってまして」

「ん~。もしかして、それもエルフさんたちのおかげ?」

「……ふふ、どうでしょう。みんなたくさん話しかけてはいましたが」

 やっぱりそうか~。

 もうちょっと『私たちがやりましたですの!』みたいに主張してくれてもいいんだけどなぁ。


「ガーベラさんたちには色々手伝って貰っちゃって悪いね。何か俺にできることない?」

 世界樹の事や、家造り。そしてこれからのお家の環境整備まで手伝ってくれるみたいだし……。


 これでは我々が得をするばかり!

 良き関係はお互いが得をするようにしなければならない!


 ちなみに、下心は一切ない。前回のアレは……いわゆる担保みたいなもんだ。

 見知らぬ土地、抱える不安。それらに対し、身体を差し出すことで保証を得ようとしたのだろう。


 少し卑怯な気もしたが……それで納得できるのであればと俺も受け入れた訳である。

 まぁ、単純に美女揃いの方々に求められたら行くっきゃないと!


「では……久しぶりに……そのぉ、お慈悲を……」

「是非もなし!」

 人の話聞いてたぁっ!?


 ◆◇◆◇


「あ、あのさぁ。無理にこういう事、しなくてもいいんだよ? あなた達の生活はちゃんと保障するからさ」

「……ふふ。案外、小心者ですね」

 ぐはっ、突然のダメだし!


「えっと~……?」

「抱きたいから抱く、抱かれたいから抱かれる。それでいいじゃありませんか」

 つ、つまり抱かれたいと思って……?


「確かに、最初はそういう思惑もありました。しかし……それは私を含め、一部の者たちだけです」

「え?」

「私たちだけが身を差し出し、我々全体の生活を保障して貰えればと。みんなにも伝えていたのですが……結局みんな抱かれてしまいましたね」

「そ、そうね……」

 それって……他の子たちは……?


「中には生娘もいたかと思います。彼女らは、きっと真剣に貴方を想い、愛を求めたのだと思いますよ」


 わー。そう言われると何か、こう……尚のこと何かしてあげたくなるなぁ……。

 いや、これこそが彼女たちの思うつぼ!? 男を惑わす――。


「ふふ」

「……是非もなし!」


 いや、それでいい。例えそうだとしても、その思いも受け入れて俺のものにしてやろう。

 いずれにしろ、彼女らにとって必要な男であり続けるだけなのだから。


 ◆◇◆◇


「坊ちゃま、正座」

「はい」

「なぜ、枝を貰いに行くのにそういうことになっていたのですか?」

「ごめんなさい」


 数分前の俺、見ているか?

 これが、俺。


「聞いてますか坊ちゃま」

「はい」




 その後、メイちゃんのお説教は小一時間続いた。


 枝はその後庭にぶっ刺しておきました。

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