第112話 そして、伝説(級)へ・・・

「リビランス王が参られます」




 闘技大会から数日後。

 いよいよリビランス王から直接SSランク冒険者の認定をされる日となった。


 別に王様に認められたからって何だって話な訳だが……。

 既に冒険者ギルドで正式にSSの冒険者証を貰ってるし。


 ちなみに今、犬耳付けてます。

 露骨な親亜人派アピール。


 そして初老に入るかどうか、そんなリビランス王が玉座へと昇る。

 しょうがないから膝を付こう、そう思ったとき、ふと思った。


 あれ、俺頭下げちゃまずいんじゃね?


 追放されたとはいえ俺は彼の大国、クイードァ第1王子。

 追放とか別に他国に関係ないし……何なら格好の宣戦布告の理由じゃ……?


 てゆか忘れてたけど俺リョーゼンの王族に仲間入りするかもだった!

 ん~考えれば考えるほどまずい気がする……。




「うむ。苦しゅうない」

 俺です。


 何だかよくわからなくなって言い放ってしまった。

 本当は若干苦しいです。

 しかし、困った時は偉そうに、そんなことを学んできました!


 そして俺の言葉に一気に会場が騒めくっ!


「アアアアアレクくんん~!? まずいよまずいよ~っ!」

 唯一冒険者側というか、俺側として同席しているスフォーク氏。


 ちょっと今すぐセイスと交代してくんないかな……。

 聞きたいことあるんだけど。今日の俺のキャラクターについて。


「貴様っ! 一介の冒険者風情が不敬にもほどがあるぞ!」


 一介の貴族君が喚き散らかす。

 ま、そりゃそうだろうとは思うけども!


 しかしこういう場では敢えてああ言う因縁付ける役割を持った者がいると聞いたことがあるぞ!


「余は冒険者成れど、その本質は別にある。よって、頭を下げることはできない。貴公も、其の役割ご苦労ではあるが、この場にて不要!」

 もう何言ってんのかわっかんねえわコレ。余って誰だ余って。


「……承知、しました」

 よかった! 納得してくれた!


 やっぱり、困った時は偉そうに!

 間違いない。


「よい……冒険者アレクよ、せめて今はそう呼ぶことを許して欲しい」

「うむ」

 返事、流石に『うむ』はまずいんじゃ……?


 ま、いっか!


「冒険者アレク! 貴殿は史上初の『SSランク』冒険者であるとリビランス国を代表して認める!」

「うむ」


「……この快挙を祝し、何か褒美を取らせたいのだが……何かあるかね?」

 会場が一瞬どよめきに包まれる。そんな騒ぐことか?


「不要。しかし1つ、聞いておきたいことがある」

「な、なんだ?」

 焦った様子のリビランス王。


「貴公は、亜人について……どう思っている?」

 今日一番のざわめき! これについては最初から聞こうと思ってたんだよね!


 ここで亜人を認めれば良し、冒険者ギルド本部がある国の後ろ盾を得られる。

 認めなければ……戦争だ。だって俺、犬耳だもの。


「……」

「……」


 王が圧を込めて睨んでくる。さすが一国の王、ただならぬ覇気だ。

 俺も負けじと圧を――。


「みみみっ! 認めましゅっ! 亜人の権利その他もろもろ! 全てヒト種と同じ扱いと宣言しましゅ! だから許ちてぇ~っ!」

「……あ、うん」

 圧が強すぎたのだろうか、王が泣きながら喚き出した。

 何か、ごめんね?


 周りを見回すと、失禁、失禁、失禁の嵐。臭い。


「王妃さん、だ――」

「だ、抱かせます! 抱かせるから許してぇ!」

 だ、れもそんなこと言ってないんだが……唯一この場にいる女性の王妃さんを気使っただけなんですけど……。

 M字開脚でお漏らしあそばれてるし……。




 こうして俺はこの日を境に、色々なことをごちゃまぜにした上で、亜人界隈など一部で英雄として伝わることになる。


 曰く、神々しき武具を携え、史上初の伝説級冒険者と認められた英雄。

 曰く、冒険者ギルドを裏から操り、亜人の尊厳を勝ち取った英雄。

 曰く、亜人差別の先駆けであるリビランス王に亜人の人権を認めるよう迫った英雄。

 曰く、その王妃を抱かせろと迫った色を好む英雄。


 しかし、本来の俺はただの愛妻家であり、尻に敷かれるだけの男だ。

 今回もまた、メイちゃんに怒られるのだろう。


 最後の、王妃に迫ったと言われてることについて……。

 俺のせいじゃないのになぁ~……。


 あ、魔神倒さなきゃだった……。




 ◆◇◆◇




 ――某所――


「史上初のSSランク冒険者……くそっ! くそくそくそがぁっ!!! アレキサンダーめぇっ!!!」

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