第111話 ナンバーワン決定

「冒険者ナンバーワン決定闘技大会も、いよいよ最終日、最後の1戦なりました!」


 司会の一言に、会場も厳かな雰囲気に包まれる。

 観客も薄々気が付いている。


 この戦いに勝ったものが実質的に冒険者ギルドの方向性を決める者になると。

 新旧のギルドマスターによる表と裏の戦い。それが今日、この場で決まるのだと。




「ちなみに、前任の司会は『もう公平に試合を見れない』と申し、辞退しました! 今日の司会は私! モミノンタが務めます!」

 最初から公平かどうかは怪しかったけどね!


 彼女がなぜそんなことを言ったのかは謎に包まれている。

 そんな謎を詮索するよりも、メイちゃんたちにお土産の指輪を作ることが最優先課題である。


「それではファイナリストの紹介です! まずはこの方! 冒険者にその人ありと言われたのも過去の事! 今日でその汚名を晴らすことができるのか! 『汚職塗れ』……失礼、『確かな信頼』セーヌ・カイマー!」

 ノンタも大概だな。


「続きまして……『百発百中』を打ち破り! ミィちゃんのピンチに駆けつけた救世主! ノーマークからのファイナリスト! 神々しさを身に纏った悪魔! その名も! アレキ! サンダァーッ!!!」

 ミィちゃん救ったら世を救ったことになってるんだが。


 ふと会場を見るとメイちゃんたちが!


「おーい! みんなぁー!」

「きゃー! アレクー! 頑張れーですのー!」

「アレクちゃま~!」

「アレクー! 落ち着いてー!」

「(ぷい)」

 何でぇっ!? みんな手を振り返してくれてるのにメイちゃんだけ何でっ!?


 何でバレてるの!?


「さぁ、ではファイナリストに一言頂きましょう! ……え? 遠慮する? 集中するから控室に戻る? はぁ……」

 セーヌ・カイマーに戦う前の意気込みを聞こうとしたようだが、辞退された様子。

 そしてなんかぶつぶつ言いながら去って行った。


 いや、何企んでるのかバレバレだけど……。


「えっと、ではアレク選手から一言お願いします!」

「えー、昨日はやり過ぎました。今日もやりすぎるかも知れません!」

 しまった、二言になってしまった!


「ほ、ほどほどにお願いしますね……では改めて! 会場の皆様にもルール変更について改めて説明します!」


 そう、昨日のことを受け、改めてルールが変更された。

 とは言っても大きく変わることは何もない。良心に頼っていた暗黙の了解を明文化しただけだ。


 そこを突いてきたドルギマス派……とりわけスゲスカの奴のせいだ。

 何か、思い出しただけで腹が立ってきた……!




「ルールの改定点は以上となります! では、そろそろ準備に移りましょう! セーヌ・カイマー選手! ご入場ください!」

 おぉ、思った通り、魔力を練りに練ってるな。

 バレないとでも思ってるのだろうか……こいつも所詮、有象無象と変わりはないようだ。


「では……冒険者ナンバーワン決定闘技大会! 最後の試合を開始します……ファァァィッッ!!!」

「『タイタニック・ロア』!!!」

 開幕と同時にセーヌ・カイマーが魔法を放つ!


 これは俺がドゴーグに使ったのと同じ魔法、地属性極大魔法!

 こそこそと隠れて魔力を練っていた割には大したことがないな。


「どうだ! 我が最終奥義! 地属性の極大魔法だっ!!!」

 頭上に巨大な岩石が出現、闘技場を……いや、会場をも巻き込む大きさ!


「おい! ヤバくねぇか!?」

「会場の結界が割れたぞっ!」

「に、にげ……?」


 いかん、会場がパニックになりかけている!

 かくなる上は!




「来いっ! 『ヴァイス・アンファ』!」


 その瞬間、神々しい白い光が会場を包み込み……。


「……か、神よ……」

「……あぁ……アレク様……」


 巨大な岩石を粉々に打ち砕いた。


「な、なんと……アレク選手の持つ……それは……」

「黒き盾と対を成す白剣! ヴァイス・アンファに打ち破れぬものなし!」

 剣を掲げ、斜め上を向いて高らかに名前を呼ぶ!


「『ヴァイス・アンファ』……なんと神々しい……はっ! ア、アレク選手が我々を! 悪しき敵からの卑劣な攻撃から我々を守ってくれました!」

 いやその通りだけどさ……悪しき敵て。


「……」

 今起こったことが信じられないのか、セーヌ・カイマーはまだ空を見ながら呆然としている。

 うむむ……もう終わりか? しょうがない……。


「ちょうどいいや。ほれ、『精神魔法』!」

「おっと、アレク選手はセーヌ・カイマー『精神魔法』をかけた! いったい何をするつもりだ!?」


 そんなこと決まっている!

 今までのことを洗いざらい吐いて貰おうじゃないか!


「ふははははっ! さぁセーヌ・カイマーよっ! お前とドルギマスの企みを話すがよい!」

「「「――っ!」」」


 そう言った瞬間、会場が息を飲む音が聞こえた。


「わ、我々は……確実にSSランク冒険者となるため……対戦の組み合わせを操作したり……息のかかった者に棄権させたり……した」

「やめろ! やめるんじゃセーヌ・カイマー! おい司会! 止めさせろぉっ!」

 ドギルマスが運営本部から何やら喚いている。


「はて? 何故司会が戦いの妨害をせねばならんのだ?」

 うん、さすがノンタ。


「では続いて……なぜそんなにSSランクになりたかった?」

「……亜人迎合の流れを断ち切りたく……リビランス王に直言する機会を得たかった……」

 ふむ、ここまでは事前にセイスが言っていた通りだな。


「タイグルの襲撃に何か関与していないか?」

「我が直接……闇に紛れ……強かった、獣人でなければ……」

 はい、これは言い逃れできない証言だぞ!


「それじゃ……下衆野郎がミィちゃんを強姦しようとしたな? あれは誰の指示だ? 誰が許した?」

「それは我は関わっていない。だが……事前にその話を聞いていたドルギマスは……『いいぞ、やれ』と言っていた」

「――っ! でたらめじゃ! その小僧に喋らされているだけじゃ!」

 ん~、ドルギマスどうしよっかぁ~。ドスとトレスの恨みもあるしなぁ~。


 うん、法的に全ての罪を償わせたらドゴーグのとこに送ろう!

 思いつく限りの拷問をして! 生まれたことを後悔させてやって!


 絶対許さない!


 しかし、セーヌ・カイマーはどうするか……正直こいつは他の八百長冒険者と一緒で大したことはやってないようだし。タイグルはまぁ……ドンマイ!

 もういいや。




「じゃ、最後に……パンツ一丁になって3回回った後ワンとないて土下座して負けを認めろ!」

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