第102話 集計期間中⑧~女神の衣~

「さて、武器を作ろうと思うんだが」


 決して昨日小次郎に言われたからではない。

 ではないが、作ろうと思う。


 そこで今、ドゴーグのところに来ているところ!


「……なぜ我にそんなことを言うのだ」

「だってお前、一応神でしょ? 神ならなんか強い武器の作り方知ってるんじゃないの?」

 せっかくなら強い武器を作りたいし!


「……前にも言ったが、神とてお前らとさほど変わらん。その分野を司ってるならいさ知らず」

「じゃあ司ってる神紹介してよ!」

 いるだろ知り合い! それか知り合いの知り合い!


「……いない」

「……そか」


 ……。


「そ、そうだ! 前に呼び出した例の神ならどうだ!?」

「た、確かになっ! そうしよう!」


 何かを誤魔化すように急いで女神様を召喚する!

 別に全くいないって訳でもないだろう! ドゴーグにも友達はいるはず!




「や~ん! これだけはぁっ! この『キュアキュアちゃんフルコンプリートセット』だけは持ってかないでぇ~!」

「「……」」


「え、あれ~? ……あ~っ! また召喚したんでしょ~! めっ! だよぉ~!」

 何やら可愛い女の子が描かれたBOXを大事そうに抱えた女神が現れた。


「だけど今回は助かったかもぉ~! この『キュアキュアちゃんフルコンプリートセット』を守ることができたからぁっ!」

「……」


 ……やっぱり、足りなかったんだぁ……。


 多分、『キュアキュアちゃんフルコンプリートセット』守れてないです、召喚から戻ったら回収されると思います。

 借金のかたに回収されそうなんですよね、それ。申し訳ない、申し訳ないけど。


「そんなことより! 武器を作りたいんだけどさ、誰か知り合いの神様で詳しい人いない?」

「え~? いるにはいるけどぉ~……今ちょっと気まずいんだよねぇ……『立て替えてやったんだから変わりになるもんよこせっ!』って~」

 おっふ。


「何かさぁ~、私の『仕事部屋』の魔力代、いつの間にかすっごいことになっちゃっててぇ~……ぐすん」

 ひえっ。


「何でだろう~何か知らない~?」

「さ、さぁ? 水でもだしっぱにしてたんじゃない?」

 風呂の水出しながら旅行に行ってた友人が、泣きながら話してたことがありましてね。えぇ、それはそれは大変だったと言っておりましたよ。


「え~そうなのかなぁ~?」

 見たところ水が出そうなとこなんかなかったけども。


「女神様や、何か私にできることはありますか!? この不肖アレク! 恩ある女神様のためなら頑張りますぞぉ!」

「えー本当!? やった~! じゃあ……へパイトスさんとお話してきてぇ~!」

 厄介な客を押し付けられた感があるものの……これはチャンス!


 へパイトスってもしかしなくても鍛冶の神様じゃない!?


「よっしゃー! 流れが来たぜ!」


 ◆◇◆◇


「黙れ小僧! 誰が貴様のような正神でもない奴なんかに武器を作ってやるかってんだ!」


 しまった、話す順番を間違えた。

 先に女神さんの借金の話だった。


「まぁまぁ。実は私、あなたのお話が良く伝わっている世界出身の人間でして! ギリシャ神話としてあなたのご武勇は――」

「うるさい! あの世界の話は聞きたくないわい! おのれアフロディーテ……くそっやはり女を信用するべきじゃなかったわ……」

 うむ、新たな地雷を踏んだぞ! 何だよアフロディーテって。大して知らんわギリシャ神話。

 しかし新たな情報もゲットだ。へパイトスは女性不振か何かなのかしら。


「……女性に並々ならぬ思いがある様子。それでいて、我が女神に力をお貸ししたのは何故です?」

「あぁん!? そりゃワンチャン狙えるかと思ったからだよ!」

 思ったよりしょうもな……いや、彼の神話ではそんな話ばっかだったような気もする。


「魔力立て替えてっつーから、ついにチャンス到来かと思ったのによぉ……まさかあんなバカみたいな量だとは思わねぇよあのバカ女! おかげで俺の貯蓄もすっからかんだ!」

「それは何と嘆かわしい……心中お察しします。こちらの魔力塊を献上しますので幾分かの足しにして頂きたく……」

 そういって『収納』から魔力塊を渡す。


「お前……いいやつだな」

 まぁ……もともと俺が使ったようなもんだしね。


「光栄です。それと……我が女神のお身体を、とは難しいですが……代わりのモノを必ずや献上致しますよ」

「おぉ……うむ。もし我が満足するものだったなら、お前の望み、聞いてやらなくもない!」


 ……よしっ!


 ◆◇◆◇


 後日へパイトスに献上品を納めると、彼はそれをいたく気に入ってくれた。

 早速匂いをひとしきり堪能し、さらに今夜活用するそうだ。


 そして本来の目的だった俺の武器も作ってくれるという事で、こっちも楽しみだ!


「わぁ~い! アレク君がくれたこの服、ゴロゴロしやすい~!」

 諸事情で女神さんにも、とある衣服をあげたのだが……喜んでくれて幸いである!

 前来てた服は俺が処分しといたからね!

 

 女神さんの機嫌も良くなったので万事解決!




 いや、さすがに騙してるようで申し訳ない……女神さんにちょっとずつ魔力をお返ししてあげよう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る