第101話 集計期間中⑧~小次郎の刀~

「ちなみに、拙者いろんな国の裏組織から追われているでござる。助けて欲しいのでござる!」

 おふ……、変な奴な上に厄介な案件もちと来たか……。


 ……よしっ、切り捨てるか!

 いや、待てよ? もしかして……。


「子どもの人身売買に手を出してる組織に喧嘩でも売ってんのか?」

 ロリコンを自称してるし、あり得るな。


「パパッ!」

「こ、こらっ! 外で待ってなさいと言ったでござろう!」

 おっと、いきなりの幼女が乱入! 5歳くらいのくりんっくりんな子だ!


「やー! パパの助けてって声が聞こえたもん!」

 おっと、聞こえちまったか。安心しろ、こいつはもうだめだ。


「……その通りである。しかし拙者、傷つける戦いしかできぬ故、この子を連れていく訳にも行かなくて……」

 あー、助けてってこの子を預かって欲しいって意味?


「その子は?」

「以前人身売買組織から助けた子である。他の子は孤児院や引き取り手に頼むことができたのでござるが、この子だけはどうしても離れてくれず……正直こ――」

 困るだと!? そんなこと言わせねぇぞ!


「バッキャローてめーバッキャロー! 面倒見れないんなら最初から関わるな! 父と慕ってくれる子なんだぞ最後まで面倒見やがれバッキャロー!」

「そう、父と呼んでまで慕ってくれてる故、興奮してしまうのが忍びなく……」


 ……こいつ、本当にどうしよう……。


「……」

「……」


 ……そう言えば、性的興奮を抑える的な魔法を俺の親父にかけていたっけ……。


「……その、興奮しなくなる的な魔道具、あげようか?」

「――っ! 恩に着るっ! お主は拙者の大恩人である! 一生をかけて報いていくでござる!」

 う、うむ……。


「ま、困ったらハンダート領に来い。その子も一時的でいいなら預かれるだろうし」

「重ね重ね、かたじけない!」

「いいよいいよ、転生者のよしみってことで!」

 女神様に頼まれっちったから……借金……うぅ……。


「後クリスタルな! 手に入れたら早急に俺のとこ持ってきて! あ、けど魔族とかに狙われたら渡しちゃっていいよ」

「承知仕り!」


 ◆◇◆◇


「さてさて、残りの転生者は2人か……」

「早く見つかると良いでござるな!」

「これおいしー!」


 せっかくなので、と小次郎とその娘アーリァちゃんと一緒に食事に訪れた。

 そこでふと考える、先日女神を召喚した時のことを。




 どうやら、時が止まった部屋から召喚されてきた様子の彼女。


『え~? 私のために働いてくれるのぉ~? よくわかんないけどぉ、それなら他の転生者の面倒見てあげてくれる~?』


 つまり、まだ事情を掴めていない様子の女神に先んじて恩を売っておき、借金のことを誤魔化す作戦だ!

 知らなかったんだよ……時を止める空間が電気代みたいに魔力が消費されるって!


 俺は転生前に魔法の特訓を、時が止まった部屋でしていた訳だが……そこで消費したウン年分時を止めるために使われていた魔力。俺換算で50人分くらい。

 神の仕事で使う魔力、その際に足りない分はシステムが自動的に魔力をあてがい、後日消費した分を治める形になるとドゴーグが言っていた。


 つまり借金! 金ではないけども……。

 せめて、彼女の保有魔力で足りますように……。




 そんな儚い願望を祈りつつ、意識を小次郎との会話に戻す。


「ま、なるようになるか。後の2人は常識的な人だといいなぁ~」

 カオルコと小次郎。悪い奴では無さそうなんだけど……いかんせん濃い。胸焼けする。


「そうでござるな! 拙者みたいに!」

 常識ない人はみんなそう言うんだよ! 俺とは違って!


「……そう言えば、小次郎の才能(ギフト)って何なの?」

「『全テ切リ伏セル者』でござる! 簡単に言えば敵の弱点や攻撃する場所が分かるでござる! それと攻撃力にも補正がかかると神は言っていたでござる! 持ち前の剣術と組み合わせ、今までは敵なしでござった!」

 おぉ~、そりゃまた攻撃特化の能力だな。前世が修羅の国っぽかったから、それも影響してるのかもね。


「して、アレク殿は?」

「俺は『限界突破』だよ。文字通り、成長の限界を突破できるってやつ」

 別に知られても対策取れないってのもポイントだね!


「ほぅ。しかしそれは特別な能力という訳でもなく、本領を発揮するには相当の努力が必要そうでござるな」

「まぁね」

「見たところ、アレク殿はかなりの使い手。相当な努力をしてきたのでござるな!」

「まぁね」

 そのせいで今困ってるんだよ……。


「ところで、得物は何を?」

 得物? あぁ、武器のことか。


「特にないよ。俺は魔法使いだもの」

 幼少期は剣を握っていたこともあるにはありましたが……魔法で十分なので!


「なんと! それはいかんですぞ! 己の全てを委ね、信頼できる得物があってこそ戦場で勝ち残れるのです!」

 さすが修羅の国出身の人は言うことが違うねぇっ!


「見て下され! 拙者の『無銘典太の竿』!」

「……」

 誰のチ〇コだって?


「雄々しく黒光りする美しき刀身! 何年も握り吸い付くように馴染む柄! さすが転生前からの拙者の愛刀! 無理言って持ってこれて良かったでござる!」

「……」

 い、いかん。武器の、刀の話だから、これは……。


「……う、うん。あれだ、俺には仲間がいる。全てを委ね、信頼できる仲間……彼女らさえいれば武器など必要ない」

 とりあえずそれっぽいこと言っとく。

 しまった、これではどこぞのチ〇コとメイちゃんたちを同列に扱ってるようなもんだった!


「……そう、でござるか。まぁ、使い慣れない武器を持ってしまえば、それこそ命取りになりかねないでござるしな!」

「……で、あるぞ」


 お前のは使い慣れていないどころか未使用品だがな!

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