第100話 集計期間中⑦~導かれしものたち~

「ど~もっ! あなたは確か……アレきゅん!」

「キュッ?」


 セイスの呼び出しに応じてくれたカオルコ。

 馴れ馴れし……やけにフレンドリーな呼び方をしてくるじゃあないの。


「急に来て貰ってすまないな」

「い~いよぉっ! イケメンさ~んからの呼び出しにはいつでもどこでも行っちゃう~んだ~からっ!」

 んんっ! なんだこのキャラは今まで会ったこともないタイプ。


「はぁ~ん、それにしてもアレきゅんはイケメンね~……セイスさんとどっちが受けか~しら……」

「……」


 ヤバい。何かわからないがとてつもなくヤバい!

 未だかつてないほどの猛烈な嫌な気配がする!


「……それとも、ドギルマスさんみ~たいな汚いおじさんとだったり……きゃっ♡」

「……リアルで、それも本人の前で掛け算するのはマナー違反です」

 ……?

 よくわからん呪文が頭に湧いてきたが……何のことだ?


「はっ! ごめんなさい……つ~い、昔の癖でぇ~」

「あー、それそれ。その昔の癖ってやつ。前世のことかな?」

「え? あ……うん。そ、そうだけど……」

「やっぱりか。その『百発百中』もギフトかな?」

「う、うん……何でそこまで……もしかして! あな~たも!?」

「そういうこと! ま、同郷どうし、仲良くしてくれたら嬉しい」

 せめて魔神を倒すまででも!


「うん! こ~ちらこそ! よ~ろしくねっ!」

 そう言って抱き着いてくるカオルコ。

 欧米かっ! 古いかっ。


「アレきゅんはど~この国の人? わた~しは合衆国!」

 本当に欧米だったわ。


「俺は日本だよ!」

「お~! わた~し日本だいす~きっ! カオルコの名前も日本の有名な小説家の名前だよっ!」

 あーそうなんか。てっきり前世の本名かと思ってたよ。


「まぁその辺の話はおいおいしていくとして。今回は転生者としてこれからの話をしたいんだよね」

「ん~? というと~?」

「ほら、魔神だよ魔神! 女神に言われてたでしょ?」

「んん~? わた~しを転生させたのは男の子だ~ったよ? それに、魔神ってな~に?」

 えっ!? アラアラっぽい女神じゃないの!?

 転生を行う神は1人じゃないってこと……?


「……じゃあ、その神には何かしろって言われなかった?」

「お~! それなら、クリスタルを集めろって言わ~れたよ~! まだ持ってないと思~うけどっ!」

 魔神って単語すら出なかったか……。

『転生者とコンタクトを取って導け』ってのは、こう言うのも含めてってことだったのかもな。


「そっか。ちなみに、冒険者活動はパーティ組んでやってるの?」

「ん~ん! 転生者だって家族に知られて、追い出さ~れて、それから1人、だよ~」

 おうふ。そっかぁ、受け入れて貰えなかったかぁ……。


「よかったら、『おうまさん』と会ってみない? 今は活動休止中だけど、ちょうど1人メンバー欠けちゃってさ」

「お~! 『おうまさん』の人達ですか~! これは……ふひっ、捗りま~すね!」

 ……なぜだろう、選択を間違えた気がしなくもない。


 いや、まぁ、うん。カオルコは最初からスフォークの味方になってたし悪い奴じゃないはず!

 単身でSランク到達してるし、力量も十分なはず!


 何の問題もない! 何も!


「……一応、彼らに確認してからだけど、良かったら、ね?」

「ふひっ……筋肉×筋肉……い~や、筋肉×細イケメン……ふひっ」


 う、うむ! 良きにはからえ!


 ◆◇◆◇


「富士山っ! 富士山はどこでござるかぁ~!?」


 例の依頼を冒険者ギルドに張り出して貰った数日後、早速いかにもな侍が現れた。


「あー、『一富士二鷹』?」

「『三茄子四扇五煙草六座頭』!」

 おふ、思ったより多かった。なんぞそれ、聞いたことないんだが……。


 しかし、こいつは転生者、しかも日本人決定だろう!

 良かった良かった、これなら幾分話もしやすいはず!


「拙者日の本の国より参った柳生宮本小次郎郎でござるっ!」

 混ざってる! 名前混ざってる!

 最後の追加の郎が誰のかわからんけども!


「あ、あぁ。よろしくな! 俺も日本生まれなんだ」

「日本……? いや、やはりそうであったか! 拙者は神仏暦1993年の生まれでござる。そちらは?」

 何……神仏?


「西暦1995年だよ」

「おぉ! 拙者と同じく彼の災厄以前の生まれですな! ん……? 西暦……?」


 あーこれヤバい! 絶対ヤバいって!

 何か微妙に違う気がする!


「時に、彼の災厄『恐怖の大魔王』についてはどの程度ご存知で?」

「何もなかった、ってことくらい」

 なかったよね? 例の大予言。


「なんと!? そんなバカなっ! あれをきっかけに日の本の国に魑魅魍魎が溢れかえってしまったではござらんか! ……ござらんのか?」

「ござらんのです」


 やっぱり……これ、きっと世界が微妙に違ってるわ……。

 パラレル的な世界なのか、全く別の似たような世界なのか……ふわわわわぁぁぁ~。


「はい、以降前世の話題禁止で!」

「かしこまりて候」

 まぁ良かった、話はちゃんと通じるし、常識人っぽいし!


「今の候は早漏のことではないでござる! 拙者早漏であれども!」

 フ〇ーックッ! 転生担当者フ〇ーックッ!!!


「ちなみに童貞で候」

 それは……生きろ!


「YESロリータ! NOタッチ!」

 くそがぁっ!




 常識人を喚べ常識人を! 俺みたいな!

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