第99話 集計期間中⑥~アラアラだけで十分~

「あっれぇ~?」


 反射的に魔力を切り、送還する。

 ボシュンと言う音を立てて消える。


 何もなかった。いいよ。


「い、今のは……?」

「……俺を転生させた女神……」

 恐らく、多分、間違いない。あのふわふわしてる感じ。


「単身で神を召喚するとは……流石である。しかし、なぜすぐに送還を……何やら奇怪な声を出していたが……」

「……い、いや……何となく、ね」

「そうか……」

「うむ……」


 きっと、お仕事終わって疲れていたんだろう。邪魔しちゃいけない場面だった。そうだ、そういうことだったんだ。

 それに、あの枠はアラアラでいっぱいであるっ!



 

「で、では、我はこれで帰るぞ」

「あ、あぁ。いろいろありがとな!」

 何だかんだこいつには世話になってしまったな。

 お礼に飴ちゃんでもくれてやろう。


「一応、言っておいてやる。時を止めることができる空間、あれはこことは別物だからな」

「え、そうなの?」

 あれができればいろいろと活用できると思ったのだが。


「先日も言った、『正神』になる際に与えられる作業場。それがあそこの正体だ。司る概念の調整をそこでしたり、時を止めて作業することが可能となっているのだ」

「あぁ、なるほど。いくら神と言えども、個人で作れる能力を超えてそうよね」

 時を止める、全くできる気がしないもの。


「多少の魔力は消費するがな。お前が過ごした100年程で50我程だ! 立て替えてやったんだから感謝しろっ! って言うか今すぐ返せっ!」

 電気代みたいだな! 似たようなもんか!


「え~? しょうがねぇなぁっ……ほれ、飴ちゃん」

 飴ちゃんこと、俺の魔力塊をプレゼント。


「……またあの空間が使いたければ、いつでも言え」


 そう言って去って行ったドゴーグ。

 まぁ、たまにならいいだろう。


 しかし……ん~、何やら引っかかるものが……。

 ……はて?




 ……100年で50ドゴーグ。


 ……200年で1アレク。


 …………。


 少なく見積もっても50アレク……。




 俺は土下座の体勢で、再び召喚魔法を使ったのだった……。




 ◆◇◆◇




「カオルコだ! カオルコを呼べぃっ!」

 リビランスを拠点にしているセイスの元へ『転移』する。


「……突然現れて如何しましたか、主よ。新たな女性をお望みですか?」

 新たな女性って何よっ!

 いや、こいつにも協力を頼むか。


「新たな神託だ。転生者の情報、できるだけ集めてくれ。頼む」

「……かしこまりました。ではカオルコさんも?」

「うむ。恐らくな」

 名前もそうだし、『百発百中』ってとこも気になっていたところ。


 モーリーの件で完全に忘れてた!


「はぁ。ではアレク様やカオルコ様のような転生者の情報を集めればよろしいですね?」

「うむ。ただ転生者と言うことを隠している者も少なくないからな。その辺の配慮はして欲しい」

 そう、俺のようにな!

 知られたくないことを広げられてしまったら今後の関係に響きまくり間違いなし!


「なるほど……ではどのように探しましょうか?」

「う~ん、『百発百中』や『虹色の』みたいな2つ名だったり、目立った実力者を探すのが手っ取り早いかなぁ~」

 今はまだ爪を研ぐとき、とばかりに実力を隠してるやつだとめんどくさいなぁ。

 俺みたいに!


「そうですね。しかしそれだとアレク様みたいに力を隠している者は見つけられませんね」

「そうなんだよなぁ~……よし、じゃあキーワードを設定しよう!」

 これを知ってれば転生者でしょってキーワード!


「なるほど、その言葉を知る者は集まって欲しい、と冒険者ギルドに依頼を出せばいいですね」

「それ採用! さすがセイス! じゃあキーワードは……難しいな」

 いざ考えるとなると難しいなこれ。

 趣味とか国籍とかわからんと何とも言えんしなぁ……。


「一度に集めることに拘らず、数回に分けては如何ですか?」

「お前すげぇな! よし、それなら最初のキーワードは『富士山』だ!」

 これなら時代も世代もある程度超えられるし、世界的にも割と通用するんでは!?

 なかなか粋な選択だぜっ!


「『富士山』ですね。ちなみに、それは何ですか?」

「俺の育った国を象徴するような荘厳な山、ってとこかな?」

 新人研修の折に登らされたなぁ……あれに何の意味があったのやら……。


「では、『富士山を知る者、リビランス冒険者ギルドにて話し合いたい』と冒険者ギルドに張り出して貰いましょう」

「おー! 勢いで決めたけど、何とかなる気がしてきたよ!」


 しかし……ん~、何やら引っかかるものが……。

 ……はて?




 ……俺、転生者。


 …………。


 ……セイスにいつ話したっけ。


「……いつから知ってた?」

「何のこと、と返すのは野暮ですね。些か抜けている主の穴を埋めるのも我々の仕事、ということです」

 ムッキー! ですわ!

 結局はぐらかされてるし!


「もちろん、誰かに話したりなんかしませんよ。特に、クワトには」

「……」


 いつになったらこいつにぎゃふんと言わせられるん?

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