第98話 集計期間中⑤~白い世界と召喚魔法~
「時に、何故宇宙に行こうとしたのだ?」
「あれ、言ってなかったっけ? 実は――」
そう言って『召喚魔法』を試したいけど――という事情を話す。
「……それならば、より確実な方法があるだろう?」
「あん?」
さっきまでの努力を無に帰すようなこと言うな!
「『空間収納』、どうせできるんだろう? それと似たように自分の世界を創るのだ。我の世界の感覚を思い出してみろ、そして何もない空間をイメージしてみるといい」
なんだ、アドバイスくれたりしちゃって……デレてんのか?
「……んん?」
「……しょうがないから、我が支援してやる」
「……」
「……」
「……や、何かめちゃくちゃ魔力吸われるんだけど……? あと手強く握んなよ」
「……最初は、な。我かて好きでやっているのではない!」
「……ちょっと、いつまで吸ってるのよ!」
「……何かいかがわしいぞ?」
「……む、無理っ! マジで無理くなってきたっ!」
「……言ってみれば、世界の創造だ。ありったけを込めろ!」
「先に言えっ! 具体的にぃっ!」
「……害する気はない、今のところ」
「お前っ! 絶対許さ――んあーーーーーーっ!!! あふん」
全ての魔力が抜け出たと同時に、何かが生まれた手ごたえ。
ごめん、みんな……先にママになっちまったみてぇだ……。
「……決まり、だな……」
「……で、できたぁ?」
「うむ、そのはずだ。手ごたえがあっただろう?」
「う、うん……とりあえず、また明日な……」
「……さらばだ」
……あれ? 俺置いてけぼり……?
◆◇◆◇
そして翌日。
「てめぇ、昨日はよくもやってくれたなぁっ!」
何とか無事に家に帰れた俺。消耗した俺を心配してくれたみんな。『ド』のせいだと知ったメイちゃんがブチ切れて、なだめるのに苦労した。
「お前、うちのメイちゃん怒らせたからな? 知らねえぞ?」
三下チンピラ見たいな言い方になってしまったがしょうがない。姉貴には逆らえねぇぜっ!
「……わ、我は……良かれと思って……」
「……」
ビビり過ぎ。まぁいいや。
「さて、早速行ってみたいと思います!」
「……ちゃ、ちゃんと説明しておいてくれよ……?」
わかったよ! てかお前メイちゃんの事あまり知らないだろ!
◆◇◆◇
次元門を開いたその先は、何もない空間だった。
しかし、確かに感じる居心地の良さ。ここは俺の世界、そう実感できる程の実家感。
「おぉ……ここが俺の世界……」
「その通り、ここがお前専用の世界。基本的には招かれなければ来ることができない場所だ」
すごい……何もない。せめてソファとかあるといいんだけど……。
そう思った瞬間、ソファが出現する。
「おぉっ!」
「うむ、今のように欲しいものを願えば現れる。ただし、発動時に使った魔力を消費していくから気を付けろ。時々補充するんだ」
補充すればいいのか。とりあえず、適当に魔力放出しておこう。
「にしても便利な魔法だな!」
「言うほどでもない。魔素は非常に限られているし、この規模にしようとしたら25我はいる。つまり……お前の保有魔力が段違いすぎる」
25ドゴーグ=俺? 過大評価しすぎじゃない? ドゴーグ自身を。
「それと、基本的に招かれなければ来れないと言ったが、次元門というのは閉じてからもしばらくは残滓が残る」
「あー、それを追ってくることができるって訳ね。戦いとかには使いにくいねぇ」
ここに逃げても追いつかれ、自分の世界が滅茶苦茶になってしまうということか。
「そういうことだ。ここはあくまで、神が自身や眷属を休めるための場所だからな」
俺は人の身でその空間を作ることができたのか。努力した甲斐があったぜ!
「おう、魔法の特訓頑張ってきたからな! このくらい余裕よ! はーっはっはっは!」
「……さて、今日の目的を早速果たしてみろ」
『ド』に促されるのは腹立つが、まぁいいだろう。
「うむ。では……早速魔法陣を書く……紙を創る」
ポンッと出てくる模造紙のような紙。マジで便利だなこの世界。
「……一応言っておくが、ここで作った物質は外には持って行けないぞ」
「……あ、そ」
少しだけ残念な気持ちにはなるが、今は『召喚魔法』!
「こうして、こうやって……よし、問題ないだろう!」
デール君の時にも描いたし、問題ないハズ!
「我のとはずいぶん違うな……」
「お前の、ロスが多すぎだって。『我のために我に忠実な我に魔力を捧げよ』みたいな感じよ?」
どんだけ我って言いたいのか知らんけど、『我に忠実な我』ってなによ?
「……」
赤面してる! さすが炎を司ってる神! 顔が真っ赤っか!
「……さて、できたぞ! ではさっそく……」
今回は願望とかは考えないで、純粋に魔力だけを込めようと思う。
けどやっぱり、せっかくならキレイな人がいいなぁ~、ボインボインな感じで……退廃的な感じ……あ、願望もろに込もってる。
そして、でてきたのは――!
「いっけ~! キュアキュア~! がんばえ~!」
キレイで、ボインで、退廃的な感じ……。
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