第97話 集計期間中④~神の存在証明~

「行ってこい、我が下僕よ!」

 例えお前が宇宙の塵となろうとも、この一歩は確かな一歩だ!




 さて、宇宙である。唐突ではない。

 予てより考えていた、『召喚魔法』。それを試すために、我々は今、宇宙を目指す!


 ……地上でやった場合、やばい奴が出てきたらと思うとなかなか使う勇気が出なかったんだよね。

 召喚魔法は魔力量や願望、素質。その辺が影響して呼び出される対象が決まる。


 概ね英霊だとか精霊、稀に神様も釣れるらしい。『ド』みたいなのが出てきたら嫌じゃない?


 だから変なの呼び出してもいいように、と思っていつか宇宙に行ってみたいなーなんて考えていたのだが。

 先日『ド』を訪ねた時に改めて思ったんだよね。こいつになら何やってもいんじゃない? ってこと!


 宇宙では様々な有害物質が存在しているとかなんとか。そのために、『ド』を使って色々試行錯誤をしてみようと考えたのだ。

 この『ド』はかつて悪徳領主に生贄を捧げさせて利用していた悪い奴だから、雑に扱っても問題ない! さらに不滅らしいので便利!


 そんな訳で俺は今、先日見つけたドラゴンが住んでためちゃくちゃ高い山にてその『ド』と一緒にいる。

 家主である例の喋るドラゴンの姿は、残念ながら見当たらないけど。




 ということで、話を戻そう。


「……せめて、名前で呼んでくれ」

「うるさい、早くいけ『ド』」

 正式名称ドなんちゃら。覚えられないと言う事だけ覚えている。


「……ドファクゴーグ、だ」

「……いっけー! ドゴーグ!」

 うん、今日からこいつは『ドなんちゃら』改め、ドゴーグ! いい名前じゃないか!


「……御意」

 隷属魔法で縛っているから逆らえない、そういった感情を滲ませながら飛びたつドゴーグ。

 ぷっ、神のくせに隷属されてやんの!


「おー、大気圏どうこうのは『火耐性』と『結界』で何とかなってるみたいだ……」

 一応、酸素ボンベ的な魔道具を用意したが……どうだろうか。


 ……暇だなぁ……。


 ◆◇◆◇


 数分後、次元門が開いてドゴーグが出てきた。


「……死ぬかと思った」

「ふむ。やはり厳しいか……各属性の耐性と『結界』だけじゃどうにもならんね」

 最初から行けるとは思っていない。しかしどう防げばいいのかわからない。

 宇宙線ってなんやねん! 光属性耐性じゃ無理なん!?


「何故各属性で耐性を分けているのだ?」

「え? 全属性耐性なんてもん、ないでしょ?」

「……」


 あ、こいつ誤魔化そうとしてやがる。


 以前試した時は、全属性耐性の魔道具はない、とのことで……。

 いやクネクネの糸ではダメだったけど、もしかしたらこのよくわからんドラゴンの素材ならいけるか?


「ものは試しだ! 『全属性耐性』を込める!」

 ドラゴンの体を守っていた鱗、これなら防御系の相性ともいいハズ!


「相変わらず、ぶっ飛んだ魔力量だ……」

「……ふぅ、いけるもんだな!」

 俺のイメージ力が上がったのか、素材が全属性耐性が付与された鱗ができた。


「よし、行ってこいドゴーグ!」

「……ドファクゴーグ、だ」


 ◆◇◆◇


「無理」


 そして先程と同じ時間で戻ってきた『ド』。


「『極大火魔法』(フレア・バースト)!」

「ひぃっ!」

 情けない声を出しやがって。しかし、鱗の耐性は機能しているようだ。


「なんなん!? 『全属性耐性』だろ!? 何でダメなんだよ! 宇宙に何があるってんだよ!」

「……」


 こうなったら、逆に何にも装備させないで突っ込ませるか……?


 ……逆に?


 逆。


 逆!


「そうだ! 防ぐんじゃなくて戻してみよう!」

「と、言うと?」

「今いるような、適した環境にするようにイメージする! 有害だったり不要な物を取り除く!」


 環境を記憶して、それ以外の要素を排する……必要だと思ったものは取り込む……そんなイメージ……。


「よし、行ってこい!」

「そんなこと、できる訳が……いや、もしできるならやはり……」

 つべこべ言ってるドゴーグに新たな鱗を持たせて、思いっきり蹴り上げる。


「くっ! ちっくしょーーーーー!」

 やけっぱちだな、『ド』。蹴り上げた勢いのまま飛んでいった彼を見送った。


 ◆◇◆◇


「……この星は青かった」

「しかし神もいただろ?」

「ついに自覚――?」

「あぁん?」

 おーっと!? 耳に何か詰まったぞ!?


「まぁいい……成功だ。怖ろしい奴め……」

「マジ!? やったぜ!」

 今までの努力が報われたぞ! 遂に我々は宇宙を手に入れたのだ!


「うむ。だが魔力の消費量が多いようだ。長時間の活動は無理だと思え」

「おぉ~、何だか感動したよ! 協力ありがとな、ドゴーグ!」

「……まぁ、いいだろう」


 よし、次は宇宙遊覧……は正直怖いので、本来の目的である『召喚』!

 手頃な隕石の上で……隕石自体にも付与すれば問題ないか?


「正直、何度でも行ってみたいと思える程の素晴らしい体験だった。また誘うがいい」

「……」


 まぁ、いろいろ協力くしてくれたしもう1回、今度は俺も行ってみるか。


 そうだ、さっきの魔法に名前を付けよう。忘れないように……。

 名前を付けておけば、イメージの固定がしやすいからね!


「『快適空間』(マインスペース)!」


 ◆◇◆◇


「うっはー! すっげぇー! ずるいぞお前こんな景色1人で見てたのかよっ!」

「はーっはっはっはっ! お前の憎まれ口も気にならなくなる程壮大な景色よっ! はーっはっはっはっはーっ!」

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