第96話 集計期間中③ ~崩壊した世界~
「これは……ひどい。一体何があったというのか……」
聖奴隷とのダンジョン周回を終えた数日後。
その時に使っていた『元素爆発・四重奏』のことを考えていたのだが、そういえばエリーによる『元素爆発』を『ド』の世界に放り込んだなぁと思い出した俺。
どうなってることやらと見に来てみたのだが……。
未だ暴れ狂う魔素、がれきの山々、時折走るプラズマのような光。
良かった、あのままあのダンジョンで発動してたら大変なことになってたなぁ。
「この惨状を見て、なぜホッとした顔をしている」
「お前は……ちっちゃっ!」
声を掛けてきたのは『ド』。しかしめちゃくちゃ小さくなっている。クネクネと同じくらい。
「笑いたければ笑うがいい。今は抗う力も気力もない……」
「いったいどうしたんだよ」
その姿は、と続けようとしたのだが。
「我が聞きたいわ! いきなり次元の門が開いたかと思えば怖ろしい威力の爆発が! 我の世界どころか我そのものまで破壊し尽くしたのだぞ!」
「……それは、ご愁傷様」
ごめんて! でも俺の仕業ってバレてなさそうなので一安心!
「おかげで我も存在の維持が著しく困難になり、このような姿を晒しているのだ……」
「ほん? 不滅の存在じゃなかったっけ?」
以前偉そうにそう言っていたじゃない。
「不滅ではある。しかし、身体を維持するにも、この世界を維持するにも魔力が必要なのだが……」
「この荒れ狂った魔素ではなかなか回復もできないってことか」
どんまい!
「……で、うぬは何をしにここへ?」
「……」
い、いかん。様子を見に来たなんて言ったらバレちまいそうだ。
「……あー、っと。そうだ! 神について聞こうと思ってたんだ!」
本当は今思いついたんだけど!
「……なぜ、我がそんなことを教えねばならんのだ」
「無理矢理言わされるのと、進んで言うの、どっちがいい?」
隷属魔法に逆らうと苦しいらしいじゃん! どのくらいのもんか試してみるのも悪くないな!
「……この惨状を目の当たりにして尚平然とそんなことを言える貴様が怖ろしい」
「まぁまぁ! 教えてくれたらちょっとだけ魔力分けてやるからさ!」
俺ってばやっさしー!
「……まぁいいだろう。神とは別に貴様らが思う程特別な存在でもない」
「え、不滅の時点で特別じゃない?」
「まぁ、聞け。神になるにはいくつか方法があるが、手っ取り早いのは同じく神に認められること、もしくは周囲と隔絶した力をもつこと。それらのような条件を満たしたものが神と呼ばれる」
「へ? じゃあ割と誰でも神にはなれるんじゃ?」
あの人神ってるとか神絵師尊いとか、そんなノリ?
「そうだ。ただし、ただ神になっただけのものは『亜神』と呼ばれ、特に権能や司っているものはなく、不滅でもない。我が炎を司るように、世界の維持に何らかの役割を持つことで正式な神、つまり『正神』となるのだ」
「じゃあ、お前みたいのでも世界の維持に携わってんのかよ。ってかお前『悪神』って自分で言ってなかったっけ?」
生贄とかなんとか言ってたし!
って、あれ? よく考えたら神様の話ってそんなんばっかだったような……。
「『正神』の中でも、我のように知的生物へ試練を課して成長を促すとされる神々を『悪神』、単に恵みを施すのが好きな者どもを『善神』、役割を担っておきながら世界の破壊に繋がることをする者を『魔神』と呼ぶ」
あー……えー……? 思ったよりめんどくさい話になって来ちゃってんじゃんこれ。
ただの思い付きだったのに……。
ってゆか、魔神ってそう言う意味だったの……?
「……お前がやってたことも、試練だと? 成長を促すと?」
「そうだ。まぁ、我も元は人間だから言いたいこともわかる。しかし、ハンダート家の奴のように他人を犠牲にすることもあれば、自ら命を投げ打って救いを求めることもある。その先にあるのは、同じものだ」
言わんとすることはわかったような。所詮善悪を決定づけるのもどう利用するのかも嫌悪感を感じるのも、使う人次第ってことかしら。
すっげぇモヤモヤするけど!
「結果的にお前のような奴が現れて救われることもあるしな。当然我自身の利にもなるが、代価には代価を与える。悪心も善神も似たようなものよ」
「……そっか~」
で、俺が討伐するように女神様から言われているのが『魔神』ってことね!
やだなー絶対めんどくさいじゃん。権能とかなんとか。
「ちなみに『正神』になりたければ、自身に呼びかければいい。『世界維持したいなー』とか適当に」
急にフワッとしだしたぞこいつ!
「別にそれは知らなくていいんだが」
「そしたらナビゲートシステムが案内してくれるから、指示に任せるのだ。さすれば司る概念や権能と作業部屋を割り振られて――」
「いや、だから知らなくても――と思ったけど、誰が? お前らを任命する存在でもいるのか?」
正神である『ド』、彼を神として任命する存在が……ナビゲーションシステムとやらを設計した存在が?
「――さぁ、な。我々を統括する上司のような存在はいるが……少なくとも我は会ったことも知覚したこともない」
「あっそ」
何か上司とか、会社っぽいな! 『株式会社世界維持運営屋」的な!
しかも社長は誰も見たことないやつ!
「……お前話長すぎ。もう疲れたわ」
「貴様が聞いてきたんだろうがっ!」
こんな話聞きたかった訳じゃないんだが?
いや、そもそもここに来た理由って何だったっけ……?
割とどうでもいい理由だった気がするし、もう帰るか……。
「んじゃ、またな!」
「……あの、魔素、分けてください……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます