第95話 集計期間中① ~材料集め~

 みんなが言い合ってる場所からちょっとだけ進んだ森の中、少し開けた日当たりのいい所に到着する。


「この辺とかどうかね?」

「ふむふむ。悪くはないと思いますのぉ。もう少し地面の質を確かめて見ますかの」

 そう言って地面を触れたり、魔力を通してみるケン爺さん。


「問題ないですな。まずはここの土地を魔法で押し固めますので、範囲を教えて下されば――」

「うむ、このくらいかな? 『グラビガ』」

 手っ取り早く圧縮するには闇属性の重力魔法!

 大体プール1個分の広さに、1メートルほど均等に地面を押し固める。


「……ふがっ! ふがふがっ!(なんとっ! しかし深すぎますぞ!)」

「そっか。じゃあ半分くらいまた埋めようか」

 ならばとついでに地属性魔法で土をかき集めて、ついでに硬質化させておく。


「ふがっ! ふがふがっ!(おぉっ! これなら地盤は問題ないでしょう!)」

「ふむ。では他に準備することは? できれば木の温かみを感じられる的な家がいいんだけど!」

 基本的にはこの世界は木造が多いようで、ケン達もそちらを専門として扱っているそうな。


「ふがっ! ……では大量の木材を丸太状にしてご用意して頂けますかな。大きなものでお願いしますじゃ」

「了解! あ、そう言えば……」

 ここにも木材は大量にあるけど。前にドラゴンを見つけた時に何かでっかくて神々しい木々が生えてる場所があったなっ!

 せっかくだしそれを使ってみよう!


「ちょっと待っててくれ!」

 そう言って『転移』で移動する。




「おぉ、でっけー木がたくさん! これならちょっとくらいいいよね!」

 やけに神々しさを感じる太さの直径5メートルはありそうな大木。

 我が家の中心を飾るのにふさわしいじゃないか!


「……おわっ何かでっかいひよこ!」

「ぴよっ! ぴよぴよぴよっ!」

 木を切断しようと思ったところ、2メートルはありそうな巨大なひよこが現れた。

 何かめっちゃ怒ってる! よくわからんけど攻撃してきた!


「やめろっ! 邪魔するなら焼き鳥にするぞ!」

「――ぴよっ!? ぴよっ!」

 お、逃げやがった。さぁ気を取り直して……。


「ぴよ~っ! ぴよ~っ!」

「何だよ、うるさいなぁ……」

 遠くから何か泣きそうな目で見つめてくるんだけど……。


「ぴよっ!(うるうるうる)」

「……わかったよ」

 そんな顔されたら非常にやりにくい。今回は勘弁してやろう。


「ぴよっ! ぴよぴよ~!」

 ありがとう、そんな感じの笑顔を浮かべるひよこ。


「1本だけで勘弁してやるってなぁー! はぁ~っはっは!」

「ぴよっ!? ぴよーっ!!!」

 1本、根元の方からバッサリとカットして『収納』にしまい込む。

 ぴよすけが泣きながら突進してくるが、その前に『転移』だぁっ!




「お、戻ってきたな!」

「うっす。どうだこれ! 1本しか手に入らなかったんだけど……」


 神々しい木を取り出してケンやジョーに見せる。

 高さは30mを超えており……俺、今めっちゃくちゃ身体強化している。重っ……。


「ふがぁ……」

「……おい、これ本当に大丈夫なのか? 何か物凄く神々しいんだけど」

「大丈夫だろ! もう切っちゃったし!」

 やっちまった物はしょうがない。有効活用してやろうではないか!


「な、なんと生命力溢れる立派な木じゃ……坊主、この木を土地の中心にぶっ刺すのじゃ!」

「えーなんか邪魔じゃない?」

「いいからやるのじゃ! これほどの木……家の全てをこの木中心に考え……余ったところを床に回し……」


 やばい、ケン爺さんに謎のスイッチが入ったぞ。眼力が引退間近のそれじゃなくなってる!

 いつの間にか俺の事坊主呼ばわりだし!


「チック! チックよ! こっち来んかいっ!」

 離れたところにいるであろう孫娘を呼びつける。

 どっから沸いたんだその覇気は。


「――おっ、親方ぁっ! お待たせしましたっ!」

「遅いぞ! 大仕事だっ! 命賭けて気張れやっ!」

 いやいや、家造りだから。命賭けてまでは……。


「こっ、この大木はっ! 合点でぃっ親方ぁっ! ……かあちゃん、すまねぇな……ここがあたいの死に場所だ……」

 何だよこいつら……。


「ママァ~っ! アレク様がすごいの持って来ちゃったよぉ~!?」

「こ、これは……まっまさかっ!?」

 騒ぎを聞きつけたか木に当てられたか、ぞろぞろとガーベラを始めとするエロフさんたちも集まってきた。


「小娘どもっ! 魔法は使えるなっ!? わしらを手伝えっ!」

「「「はっはい~っ!」」」


 はぁっ!? 何勝手に我が愛人さんたちを使おうとしてのよっ!


「まずはあの辺の高さから水平に切り落として――」

「はいっ!」


「残りの幹と枝を均等にカットしろっ!」

「はいっ!」


「足りない材木はその辺の木を同様にして――」

「はいっ!」


 もう始まってるし……。


「坊ちゃま、私たちもお手伝いしてよろしいですか?」

「え、あ、はい」

 いつの間にかメイちゃんたちも来たんだが……。


「しまった、粘着剤とかが足りないねぇ……」

「チックさん、クーちゃんの糸がねちょねちょしてますわ!」

「ふむ……これなら大丈夫そうだね!」

 えぇ……本当に大丈夫なのそれ……? ねちょねちょしてるの、クネクネの涎だよ?


「みなさぁ~ん! 疲れたら回復魔法をしてあげますからねぇ~!」

「私も飲み物とか用意してきます!」


 あぁ……。




「我が家を建てようとしてるのに、置いてかれた感」

 本当はもっとこう、得意の魔法で積極的に……。


「……何か、もの凄いな……お前の嫁さん達もそうだけど……あのエルフたちも……」

「……うん」

「……釣りにでも、行くか?」

「……うん」


 心を無にするには釣りが一番! よーしっ! 頑張っちゃうぞぉ~っ!

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