第94話 集計期間中① ~お家を建てよう~

「アレク君、お待たせして申し訳なかったが、ようやく技術者の派遣ができるよ!」


 時は少し遡り、ギルマス選挙の件が終わって数日たった頃。

 リョーゼンの王様に呼び出された俺。


 そういえば、そんなことを言ってましたな……。


「おぉ、それはありがたいです! いつから来れますか?」

「うむ! ……ちなみに、どこに連れて行くのかね?」

 あ、まだ言ってなかったっけ?


「すぐ近くですよ!」

「……我が国内かい? それとも、友好国のマァーゼンかい? まさか……敵国のクイードァなんてことは……」

 いやだなぁ、敵国だなんて!


「ハンダート領です!」

「やっぱりクイードァ! ……アレク君、もしかしなくても君は追放されたと噂の――」

「さぁ! 技術者たちはどこですか!?」

 危ない危ない、いらんことがバレてしまうところだった!


「あ、う、うむ。建築指導の者はすぐに来てくれると思うけど……」

「おぉ! ではすぐにでも呼んでくれませんか?」

 善と契約は急げって言うし!

 そうだ、せっかくだしミネフあたりも連れて来ようか。


「うむ! 誰か! ケン達をここに!」




 間を置かず、おじいさんと若い娘連れて来られた。


「お初にお目にかかります、私はケンと申します。こちらは孫娘のチックです」

「よろしくなっ! あんたが依頼主さんかい!? 男前だねぇ~!」


 あんたもな! な感じの娘さん。


「アレク君、実はこの件を引き受ける代わりにケンさんの孫娘さんも同行させてほしいとのことでね……」

「あぁ、孫娘さんに経験を積ませたいと。構わないですよ」

 育成大事!


「それはありがたいですじゃ。このケン、全力を尽くすことを誓いますじゃ」

「ありがとよ! で、あんたの名前は!?」

 チャキチャキって感じやな!


「俺はアレク。じゃ早速行こうか!」

 そう言って次元門を開く。


「「「え?」」」


 ◆◇◆◇


「ななな! なんだい今のは!?」

「フガッフガッ!」

「次元門って言って……まぁ、気にするなよ。ここが目的地だ」

「おー、ここがアレクの土地かぁ~緑ばっかりだなっ!」


 ……何か1人多い気がするんだが?


「おいジョー! てめぇ何でいるんだよ!」

「いいじゃねぇか。妹と旦那がどんなとこに住んでんのか気になってなぁ!」

 こいつ! リョーゼンの王子の癖に勝手についてきやがった!


「おまっ! ここ一応敵国だからな!」

「危険なことなんかあんのかよ?」

 特にないけど! いや魔物は出てくるけど!


「そう言う問題じゃねぇ! ……じゃあ何の問題が?」

「さぁ? 何もないんじゃねぇか?」

 ま、いっか! 考えるのはやめだ!


「アレクー! どこですのー!」

 おや、少し離れたところにいるはずのエリーの声がするぞ。


「エリー! こっちだよ! どうしてここに?」

「アレク! えっへっへ~、アレクの臭いがしましたの!」

 結構離れてると思ったんだけど……それに犬系獣人のメイちゃんより早く見つけるなんて――。


「坊ちゃま、私もおりますよ」

「……メイちゃん、来てくれて嬉しいよ」

 だけど心は読まないでね。


「アレクの旦那、こちらの別嬪さん達は?」

「あぁ、俺の大切な人達だよ。この辺に、彼女らと過ごすお家を建てて欲しいんだ」

 いつまでも小屋だなんて言ってられないからね!

 あとエロフランドとかもいい加減言ってられないし、その辺も変えていきたいぞ!


「あん? そりゃあ構わねぇけどよ……あたいらは人材育成のために指導するって話だったと思うんだけど」

「あぁ、これが終わったらハンダートの王都に行って育成に当たって欲しい。もちろん報酬は別途で出すからさ!」

 業務外の頼み事! 下請けの悲しいところだよね!


「坊ちゃま、お家を建てるなら是非ともお願いしたいことが……」

「私もですわ!」

「あらあら~、アレクちゃまのお部屋の隣はお姉さんにしてね~」

「みなさん、好き勝手言って!」

 とかなんとか言ってるうちにアラアラやアンジェも到着したぞ。


「……って何でジョージ兄さんまでいるんですか!?」

「おぅ! 大切な妹が元気かどうか見に来てやったんだぜ!」

 嘘つけ! 本当はただ遊びに来ただけだろう!


「はぁ……まぁいいですけど。ところで、私のお部屋なんですけど――」

 お前も言うんかーい!


「じゃあ、俺の部屋は――」

「まずキッチンですが、広めのスペースに水回りを坊ちゃまのお知恵をお借りして――」


「俺の部屋は――」

「それより! お洋服の仕立て部屋ですわ!」


「俺の――」

「まぁまぁ、授乳スペースも用意してくださるんですかぁ~?」


「お――」

「私は本をたくさん収納できるスぺースが欲しいです!」


 ……あの、俺の意見……。


 ポンッと俺の肩を叩くジョージ。

 諦めろ、そう目で語り掛けてくる。


「あーっ! アレク様ー! 私たちのマイスイートホームを作るのにのけ者にするなんてっ! ひどいですよぉーっ!」

 どこから聞きつけたか、聖奴隷がやってきた。

 お前は外に犬小屋を用意してやるからそれで我慢して欲しい。家に入れたらうるさそう。




「ほっほ。我々は先に、建築予定の場所を見に行きましょうかのぉ」

 あーでもないこーでもないと騒ぎ出した女子たちを尻目に、爺さんがそう言う。


「……うす」

「か~っかっかっか! 既に尻に敷かれてやがる!」

 うっせ!

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