第88話 ナンバーワン決定闘技大会
「なぁおい、冒険者ギルドの件は終わったんじゃないのかよ?」
隣にいるセイスに悪態をつく。
それもそうだろう。目の前にあるこれを見てしまえば――。
『新ギルドマスター就任を祝し、全冒険者ナンバーワン決定闘技大会(仮)を開催!』
「いえ、むしろ我々の戦いはこれから――」
「そうじゃなくって! いやわかるけども!」
1カ月だぞ!? 1カ月もモーリーたちの面倒を見てっ!
強いられた禁欲生活! 解放された今! 1秒でも早くメイちゃんやアラアラと桃色パラダイスに突撃したい!
いや待てよ?
「あ、もしかして俺には関係な――」
「ありますね。むしろ主役として動いてもらいます」
現実は非情である。いや、セイスが非情である。
「そういえば、アラアラさんの件を誤魔化す際に確か『俺にできることはなんでもする』と仰ってましたね」
「お前……マジかよ……」
マジかよ、こいつ……。
「まぁまぁ。それよりも詳細をよくご覧になってください」
何がまぁまぁなんだよちっくしょー!
「……なになに? 参加資格は冒険者であること、トーナメント参加者全員にAランクの魔道具を贈呈、優勝者には……史上初のSSランク冒険者として認定!?」
おぉ、現状最高ランクであるSよりさらに上のSSランクか!
これは少しやる気でてきたぞ! 特に史上初ってところが!
魔物ではたまに見かけるSSランク。これは実質討伐不可扱いのため、Sより上としてSS(伝説)とランク付けされているらしい。
ついにこの俺も伝説となれるのだ! しかも史上初!
……あれ、俺の仲間にSSランクのやつがもういたような……キュッ?
しかもそいつから取れる素材をふんだんに使った装備品もたくさん持ってるような……キュッ?
「先日の選挙に不満を持っている層への最後のチャンスですね。彼らにしても腕っぷしで解決、わかりやすいでしょう」
「SSランクにさえなれれば、新ギルマスに物申せる的な?」
確かにチャンスっちゃチャンスだけど……先んじて準備してることを考えると、実際はただの罠なんだろうなぁ~。
「ギルマスどころか、リビランス王に直接会う機会が設けられていますよ。ちなみに、公平を期すために大会委員長は旧ギルマスのドルギマスです」
「え、大丈夫なの?」
「問題ないでしょう。委員長としてできる企てはトーナメントでの対戦相手を操作する程度。逆に何か問題があれば、さらに奴を貶めることができますし」
あー……つまり、予想可能な範囲でズルするのは特に問題にはならない程度だし、それ以上の不正があればそれこそお終い、ってことね。
「……まぁ、いいだろう。で、俺は何をすればいいんだ?」
「まず前提として、トーナメントに出場するのに必要なポイントを自力で稼いで頂きたく必要がありますが、これについては目星がついています」
ふむふむ、『期間中に達成した依頼によりポイントを獲得し、上位32名がトーナメントに出場できる』とな。
ポイントは依頼の難易度に応じてDは1、Cは3、Bは5、Aは50、Sは100、SSは1000だって。
A以上のポイントが高いのは一種の優遇措置だろう。これらが達成できる強者はトーナメント出てねってことかな。
「つまり、1度の達成で100ポイント獲得できるSランクダンジョンを周回すればいいのか?」
「いえ、今回はダンジョン攻略及び魔石の納品はポイントに入りません。あくまで市民や各機関からの依頼がポイントになります」
あー、これまた何か企んでそう。
「それについては後程。主には至急SSランクの魔石を10個、できればそれ以上持ってきて頂きたいのです」
「え、何で? ダンジョンはポイントにならんのでしょ?」
「金策です。諸事情で現金がたくさん必要です。滅多に出回らないSS魔石を同時にオークションで売り出し、裕福な方からお金を頂きます」
「ほーお金。うむ、実にいいものである。ちなみに、俺にその分け前は?」
「……」
「……ですよね~」
知ってた。知ってたけど、聞かずにはいれなかった。
まぁでも、SSダンジョンを10回くらい余裕っしょ!
◆◇◆◇
えぇ、僕もそう思っていた時がありました。
3回目で飽きました。
なので、4回目の今回から聖奴隷と一緒に来てみました。
「いやんっ! アレク様ったらーっ! こんな薄暗いところに連れてきてどうするおつもりですかーっ!? 遂にですか? 遂になんですかーっ!?」
相変わらずうるさいし、うざい。
「あぁ、遂にだ」
「へぁ? えっ……ちょっ!? えっ!? ままま待ってください! こここ心の準部がががぁーっ!」
ほう?
「準備などいつでもしておけ。ほれ!」
「やぁっ! せ、せめて最初は優しくぅーっ!? ……って、え?」
どうやらこいつの弱点を掴んでしまったようだ。あけすけな感じと見せかけて実はその手の話に弱いな? いつも喚いてるのは照れ隠しか?
まぁ、そんなどうでもいいことは置いといて、聖奴隷を放り投げた先にいたのは――。
「グォォォオオオーーーンッ!」
本日4回目のSSダンジョンボス! その名もスーパーサウルス!
いや、本当は名前なんか知らないんだけど。鑑定魔法なんかないし。
「……でっかぁー……」
いつもやかましい聖奴隷も言葉を忘れて呆然としている。
誰だって初めてこんなでかい、推定40mの恐竜を見たらこうなる。そうだよねぇ、メイさん。
「あ、あのぉ……こんな大きいの、入らないです……」
ブフォッ! すげぇ、この期に及んでそんなこと言えるこいつすげぇっ!
「いや、どこに入れるつもりよ!」
「え? お家、ですけどぉ……」
あぁ、そういう……いや持って帰らないし持って帰れないよ?
「冗談言ってないで、はよ倒してくれ」
「……へ? はぁっ!? 冗談言ってるのはアレク様でしょーっ!? 私が倒すんですかぁ!? ムリムリムリムリ! リムリムのムーッ!」
いつもの調子に戻った。うざっ。
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