第73話 メイとデート

「(つーん)」


 出た、つんぷいメイちゃん! 公認とは言え、他の子たちとデートしてた訳だしね……。

 それに加え、エリーの赤ちゃんできた報告。つーんとしちゃうのも無理はない。


 なので……よーし、今日は頑張っちゃうぞー!




「ということで、今日はメイちゃんのお世話をしたいと思います!」

「……何が『ということで』なんでしょうか……」


 ふぅ、まずはつーん状態は解除されたぞ!


「いやー、やっぱりメイちゃんには日頃からお世話になってるし? 今日だけでもゆっくりして欲しいって感じ?」

 みたいな?

 ちなみにエリーたちは服などを見に行っている。赤ちゃん用の。


「はぁ……坊ちゃまがそうしたいなら、お願いします」


 うむうむ。


「……」

「……」


 ……お世話って、何すりゃいいんじゃろうか?


「……あー、肩が凝りましたー」

「よっし! もみもみマスターと言われた俺のテクニックを見せてやろう!」

「……何だか卑猥なんですが」

 卑猥だなんて心外な! 上客と会うときは基本もみもみしてましたからね!


 もみもみ……。

 トントントン……。


「……あまり凝ってないみたい」

「さ、さすが坊ちゃま、一瞬で凝りが取れました! では次は私が致しますね」

「ありがとう!」


 もみもみ……。


 はぇ~~~、やっぱりメイちゃんのマッサージは気持ちいいわい……。


「って違ーう! 今日は俺がお世話するの!」

「あ、そうでした。それでは……お腹が減ったなぁー」


 よしよし、ご飯だな!


 ……キッチン、どこ?


「……ハンダートの私の小屋に、キッチンがあります」

「よしっ! 『転移』!」




 さぁ、料理! と言えば!?


「……俺、何が作れるの……?」

 生まれてこの方作ったことないし、前世ではもっぱらコンビニのお弁当……。

 ど、どうしよう……。


「では、私の好きなスープを作りましょう。材料は私が用意しますので、坊ちゃまは切ってください」

「おっけー!」


 用意されたまな板と包丁を使い、メイちゃんが『収納』から出してくれた野菜を切る。


「坊ちゃま! まずは洗ってください!」

「は、はい!」


「坊ちゃま! へたは捨ててください!」

「は、はい!」


「坊ちゃま! そのままでは指を切ってしまいます!」

「は、はい!」


「坊ちゃま! まな板ごと切ってます!」

「は、はい!」


 ……。


 ……。


 ……。


「ふぅー! 上手にできたぞー!」

「えぇ、さすが坊ちゃまです。せっかくですので、お外で食べませんか?」

「お、いいねー!」


 そう言ってメイちゃんはスープを鍋ごと『収納』にいれ、合間に作ってくれていたサンドイッチをバスケットに入れる。




「メイ、この辺にしようよ!」

 少し開けた場所、木漏れが降り注ぎとても気持ちよさそうだ。


「えぇ、いい場所ですね。では――」


 メイちゃんは『収納』から敷布を出し、その上に先程作ったスープやサンドイッチを広げる。


「うはっ! うまそう! いっただきまーす!」

 やばっ! うまっ! 外で食べるご飯はなんかうまいっ!


「えぇ、このスープとても美味しいです。さすがは坊ちゃま」

「本当に美味しい!」

 結局かなり手伝って貰ったからさすがとは言えない気もするけど……。


 その後もキャッキャ言いながら、いつもとは違う味を2人で堪能した。


 ◆◇◆◇


「坊ちゃま、お疲れでしょう。お膝をお貸ししますからお昼寝でもいかがですか?」

「おー! ではお言葉に甘えて!」


 心地よい満腹感、暖かな木漏れ日、気持ちのいいお膝、時折くすぐってくる尻尾……最……高……。


「……じゃなかった! メイこそお昼寝したら!? 俺の膝でよければ貸すよ!」

 今日は俺がメイちゃんにご奉仕する日だったっ!

 マッサージも料理も割と何もかもメイちゃんに手伝って貰った感が強いけども! 気持ちだけは譲れない!


「……坊ちゃま、今日は楽しかったですね」

「え? あ、うん。楽しかったけど……」

 人の話聞いてる!?


「坊ちゃま、私はあの日お会いした時からあなたのメイド。坊ちゃまのお世話こそ生きがい、尽くすことこそが歓びなのです」

「う、うん……けど、今日は――」

「私を労わってくれるなら、いつもより坊ちゃまのお世話をさせてください。それが私にとって最高のご褒美なのです」

「……」

 メイ……。


「ふふ、さぁ坊ちゃま。ご命令ください」

「……ず……ずっと……」


 ずっと……。


 ……言えない! 恥ずかしくって言えない!

 あー! 日頃の感謝とメイちゃんへの思いを伝えるチャンスなのにぃっ!




「かしこまりました、坊ちゃま」


 ……また、心を読まれてしまったようだ。

 いつか、ちゃんと言える日が来ればいいな……。

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