第71話 アンジェとデート②
「ここが冒険者ギルドです!」
屋台通りを抜けた先、良く見る看板があった。
「そういえば、アレク様のランクはおいくつなんですか?」
「Bだよ」
「……え?」
「Bだよ」
「えっ、だって……Sランクのヒルデよりお強かったと……」
「この世には、知らなくていいこともあるんだよ」
結局ランク上げ、めんどくさくなってね……いいじゃんSランクの魔物倒してきたらSランク認定で!
「そ、そうですか……あ、見てください! ヒルデがいますよ!」
「お、本当だ」
今日は休暇中だというヒルデが依頼達成の報告をしているところのようだ。
「Sランク冒険者、ヒルデ様。Aサイズの魔石、確かに受け取りました。こちらが報酬となります」
俺が先日討伐したグレートタイガーの魔石より1回りほど小さい魔石だ。
ダンジョンの魔物は装備品等のドロップ以外は魔石となる。素材等はとれず、死体はすぐに消滅してしまうのだ。
そのため、ギルドへの報告はボスの魔石を以て完了となる。あれで金貨10~20枚ってところらしい。
さらに、稀に落とす装備品や魔道具なども売れる。値段はピンキリだけども。
1日で一般家庭の年収程度。これを高いとみるか、命の危険と隣り合わせなことを考えて安いとみるか。
パーティでの達成ならさらに報酬は山分け……と思ったけど、周りには誰もいないな。
「ヒルデの姉貴! またソロでの討伐ですかい!?」
「ヒルデお姉さま! 今度私もご一緒させてください!」
おぉ、ソロでの達成だったか! さすがヒルデお姉さま!
「はっはっは、今度な!」
「はいっ!」
出た! 今度と言いつつ絶対行かないやつ!
「私の次の休みはちょうど1週間後だ。そっちはどうだ?」
「イクイク! イっちゃいますぅ~! お姉さまと一緒なら何度でもイっちゃうぅ~!」
あ、イクのね。おいそこのモヒカン、股間を押さえてどうしたん?
「ふふ、ヒルデは面倒見がよく、みなに慕われています!」
「あぁ、アンジェの事を大事に大事にしてたもんね」
モヒカンのいかつい野郎に姉貴呼ばわりされていれば察せられる。
出会った時も魔族と必死に戦ってて、助けを求めるために自分を犠牲にしようとしたり……うん、選択を間違えなくてよかった!
「こ、これはアンジェ様! ご挨拶が遅れまして申し訳ございません!」
「良い。楽にせよ」
ようやくアンジェに気付いたようだ。
そしてアンジェの代わりに答えてやる。アンジェの護衛なら俺の護衛も同じ!
「……あ、えっと……」
「ちょっとなんでアレクが答えるのよ! 楽にしていいけど!」
ケチ。
「おいおいおい! 何だぁアンちゃんはよぉ!?」
「俺たちのヒルデ姐さんに舐めた口きいてんじゃねっぞっ!? おぉ!?」
「俺たちの姫ちゃんと仲良さげにしやがってこんちくしょうめっ!」
わぁ、何か絡まれたぞぉ。
「っふ、悪いな。姫とヒルデは既に俺のものだ」
「「「表出やがれゴラァッ!!!」」」
そう言って両サイドから肩を掴まれ、表へと連れていかれる。
わぁー助けてー! 本当のこと言っただけなのにぃっ!
「ど、どうしよう! 止めなきゃ……!」
「……ほっとけばよろしいかと」
ひどい。
「さぁ! どっちが勝つのか!? 賭けた賭けたぁっ!」
「俺はヤンガス達に1口!」
「俺もだ!」
「俺も俺も!」
賭けまで始まってらぁ。俺に賭ける奴は皆無なんだが。
「ふっ、では俺に20口!」
「おー! アンちゃん強気だねぇ! 賭けが成立しそうで良かった良かった!」
この場にいる人数分だもん。
「さぁ! 両者準備はいいかっ!?」
「おう!」
「「「いいぜぇっ!」」」
「両者見合って……ファイッ!」
◆◇◆◇
「さぁっ! お前らっ! 今日は俺の奢りだーっ! 遠慮せず飲みやがれっ!」
「うぉー! 兄貴っ! 一生ついて行きやすぜっ!」
「町中の飲みもん持って来いやーっ!」
うむ、様式美!
こいつらもわかっててやってそうだ。気のいい連中だこと。
「うぅ……兄貴、絶対っ! 絶対姫ちゃんと姐さんを幸せにしてやってくれよなーっ!」
「うぉぉぉーーー! 頼むぞ兄貴っ!」
「兄貴なら任せられるっ! そんな気がするぜぇっ!」
勝負を仕掛けてきて瞬殺された3人。
「任せろ! 今日と言う日に誓って、必ず!」
「「「うぉぉぉーーーんっ!」」」
きったねぇ唾やら涙やらの水分を撒き散らして号泣する3人。
よくわからんけど、悪い奴らでは無さそうだ。多分。
「ふふ、どうなることかと思いましたが、一件落着ですね!」
「そうですね……ところで、私も幸せにされるのでしょうか……?」
いや、ほら……ノリとかあるじゃん?
「……私は、ヒルデが良ければ一緒でも……」
「……考えておきます」
や、やめてね? またメイちゃんに怒られちゃう……。
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