第59話 リョーゼン国の王様
「なんとっ! 我が姫を救ってくれたと申すかっ!」
婆を送り、その足で王城へ招かれた俺たち。
そしてあらましを説明する。
「むむむ! これは何か褒美を与えねば!」
「いえいえ、お気になさらず~」
無礼な話し方で申し訳ない。けど、一介の冒険者と思われていた方がいいだろう。
まさか追放された王族だなんて、ましてやおっかないクイードァの王族だなんて知られたら百害あって一利なし。
「それでは王家の面目立たない! 何か望みの物はないのか?」
「んーでは、体術や武術の指導ができる人間及び建築指導ができる人間、それと魔法指導ができる人間をお借りしたいのですが!」
そちらにお金がないのは知ってます! お金ないとこういう時困るだろ!
「ほっほう~それはそれは……何て?」
「我、人材欲す」
予想外でしたか、そうですか。そりゃそうか国の強さをばらす様なもんだし、厳しいか?
しかしこの要望には訳がある。
ハンダートの人間を粛清したり、獣人を公平に扱うよう御触れを出したら、人材いなくなってもうたんや!
「……え、えーっと。それは、その……」
「私には訓練が必要な部下が数名おりまして……さすがに厳しいでしょうか……?」
チラッとお姫様を見る。
「くっ……父上、彼は私の命の恩人。できる限り叶えてあげて欲しいのですが……」
うむ、良いぞ。我に牙を剥かれてはたまらんだろうからなぁっ! はーっはっは!
「……ふむむ。しかしさすがに魔法技術はのう……いやでも、娘の恩人だしのう……」
「では、魔法部隊は結構ですので前者2つの指導者をお願いできますか……?」
これぞ必殺! ドア・イン・ザ・フェイス!
前者2つは割と戦略的に問題ない分野。一方魔法の技術や戦略は極力他者に漏らしたくないだろうと踏んでの提案だ!
「あいわかった! 魔法指導含め、その3つの分野の指導ができる者たちを派遣しよう!」
「んえ!? あ、いや……魔法に関しては、やっぱり結構と言うか……」
正直、魔法指導はこちらでやった方がいいんでとは言えない……。
「ほう! そなたのような謙虚な人間に会ったことがない! よし、ついでに姫と結婚するがよい!」
「はぁっ!?」
やべ、思わず王様に『はぁっ!?』とか言っちゃったわ。
「……賜りました」
「いやいや、はぁっ!?」
「なんじゃ、我が姫では不満か? 我が娘ながら美人で器量も良くて可愛い子じゃぞ! それとも余をパパと呼ぶのが不満か?」
いや意味がわからない……何だどういう意味だ? いずれにしてもパパとは絶対に呼ばんけど。
「いやいやいや、だって俺たち昨日今日会ったんだよ? 大事な娘さんでしょ、もっと大事にしなさいよ」
王様に説教しちゃったよ俺。
「滅多にないチャンスにもかかわらず遠慮する姿勢、ますます気に入った!」
「どうすりゃええねん!」
あ、心の声が漏れた。
「よく考えてみよ。絶体絶命のピンチ、颯爽と駆けつける王子、様のようなイケメン。ロマンチックじゃないかっ!」
「おっさんがロマンチックとか言うなや!」
「おい貴様っ! さすがに不敬が過ぎるだろうっ! さすがにっ!」
ついにヒルデが怒ってしまった。確かに不敬が過ぎたわ。
「……申し訳ございません。つきましては、報酬の一部を返却させて頂きたく……主に姫様を」
「却下じゃ!」
「……ちょっといい加減にしなさいよ! 何よあんた! 私にちっとも興味持たないじゃない! そんなに私のことが気に入らないの!? 自分で言うのもアレだけど結構美人で通ってるのよ! 私だってあんたに感謝してるしできる限りの協力はしたいと思ってるけどそんな失礼なこと言うなら考えるわよっ!? それがいやだったら黙って『姫を必ずや幸せにします』くらい言いなさいよ!」
「は、はい」
「『はい』じゃないっ!」
「ひ、ひめを必ずしやわせにします」
「それでよしっ」
よし、ちゃうわ。
◆◇◆◇
客室に案内され、最初にしたことは指輪を作ることだった。
慣れた手つきで台座(市販)に魔石を嵌め、魔法で接着させる。ついでに『極級水属性』の魔法を付与する。
「メイさん、受け取ってください」
完成した指輪をメイさんに渡す。
「何で!? 指輪渡すの私でしょ!? どういうことよ!」
うるさいなぁ、このオマケ。オマケでどこの馬の骨とも知らない男と婚約させられた姫。ぷぷっ。
「……アレク様、詳しくお願いします」
「アレク! 私にはないんですの!?」
「もちろんあるよ、エリー!」
そう言ってエリーに同じものを渡す。
「ふぅ……さて、何から話すか……」
「ちょっと待って! 百歩譲ってその方たちに渡すのはいいとして! 私には!? 私には何でくれないの!? 婚約したんでしょっ!?」
「ちょっとアレク! どういう事ですの!? 婚約者は私ですわ!」
その通り、その通りなんだよ。ちょっと待っててね、今から説明するからさ……。
何なんだよ、もう。
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