第4章 魔族暗躍

第57話 冒険者狩り

 エルフランド建設から数カ月。

 今日はとある町に冒険者ギルドに来ています。


 ここしばらく拠点作りやエルフさん達との交流、セイス達との調整と忙しがったので、久しぶりに町に出て情報収集をしようと思います。

 リビランス? もう行くことはないと思います。




「おい、聞いたかよ! 冒険者狩りの噂!」

「あん? 何だよそれ」


 ギルドに併設されている酒場でチビチビしていると、早速聞こえてきました。

 顔なじみらしい冒険者同士が情報交換を始めるようです。


 仲のいい冒険者? 『おうまさん』くらいしかいないですね。彼らはリビランスを拠点に頑張っているようです。

 さて、意識を彼らに戻しましょう。


「何でも、高ランク冒険者を狙って戦いを挑む奴らがいるらしいぜ」

「ほーん。何でまたそんなことしてんだ?」

「さぁな。力試しでもしてんじゃねぇか? 今のとこ全員返り討ちらしいぜ!」

「そりゃ高ランク冒険者様に喧嘩売って勝てる訳ねぇもんなっ!」

「Sランクなんて、世界に数十人しかいねぇんだろ?」

「そうだ! 世界最高レベルのSランク様にゃ逆立ちしても勝てねぇだろうよっ!」




 冒険者狩りですか。とても怖いですね。

 私たちも気を付けなきゃないけませんね。




 しかし、この時の私は重要なことを見落としていたのでした。


 ◆◇◆◇


「メイさん! 情報収集に行ってきました! どうやら冒険者狩りが流行っているようです! 我々も気を付けましょう!」


 メイさんとエリーの所に戻って来て報告する。

 今日もメイさんは美しいなぁ!


「坊ちゃま、変な言葉使いはおやめくださいと言っていますでしょう?」

「アレク変ですの!」

「変だなんていやだなぁ、元からですよぉ?」

 私は元々『キレイなアレク』ですよぉ?


「私は気にしていませんから……おや、ガーベラさんの時の指輪が汚れていますね。あら、ビオラさんの時の指輪も」

「……」

 やっぱり気にしてるやんけ!


 そう、エルフランドの件で色々あって……指輪が10を超えたところでメイさんが大爆発してしまいました。

 調子に乗りすぎてしまった私は、反省の意を表すためにキレイになると決めたのです。


「……」

「……」


「……ふぅ。坊ちゃま、私は坊ちゃまが他の女性を抱かれるのが嫌なのではありません」

「……?」

「私に構ってくれないのが嫌なのです。そこのところ、お分かり頂いてますか?」

「――っ! 今夜早速構い倒そうと思います!」

 メイちゃんを抱きしめながら、もうキレイでいなくていいのかと安堵した。


「? 私も抱っこして欲しいですの!」

 満面の笑みで両手を広げるエリー。

 こいつマジか? 抱くってそういう意味じゃないぞ! エリーへの性教育はどうなってたんだよ! 性癖は歪んでるし!


 ◆◇◆◇


「なかなか襲われないなぁー」


 という訳で、ここしばらくはいつ襲われても困らないようにダンジョンなどの狭い場所、人気のない場所は避けている。

 そのため最近は護衛依頼を中心に活動している。街道沿いの移動がメインだし、目撃者がいれば正当防衛を主張しやすいし。


 今回の護衛対象は気のいい婆だ。何でも1人息子が隣国のリョーゼン王国に店を構えたから一緒に住もうと呼ばれたらしい。

 正直長めの拘束の割に報酬は少ないが、まぁ気楽にできそうな依頼である。


「ほら、お嬢ちゃんお食べ。そっちの蜘蛛さんも」

「ありがとうですわ!」

「キュッ!(わぁーい)」

 そう言っておせんべいのようなものを差し出す婆。


「キュッキュッ!(クッキーと違っておいしいー!)」

「おやおや、蜘蛛さんも気に入ったようだねぇ~」

 おい婆! クネクネは柔らかくって甘いものが好きなんだぞ! 気を使って喜んでるだけなんだぞ!


「この子はクーちゃんと言うのですわ!」

「蜘蛛だからクーちゃんかい? いい名前だねぇ」

「そうですの!」

 そうだっけ? まぁそうだったかも。




 休憩を終わらせ数分程進んで行くと、不意に喧噪が聞こえてきた。

 お、まさかお約束の展開!?


「婆さんや、ちょっと休憩にしないかい?」

「もうかい? さっき休憩したばっかりだから、もう少し進まないかい?」

 メイちゃんにアイコンタクトを送る。


「いたたたた~……お腹の赤ちゃんが暴れてるぅ~」

 ……その誤魔化しは俺にダメージが入るぞ!


「ほぁっ! 子どもがおるんかい! そんなら休憩しようかねぇ」

 何てお人好しの婆なんだ! ちっとも疑いもせず聞き入れてくれたぞ。


 まぁ、護衛対象を何らかの闘争に巻き込まないためだ、許せ。


「あ、アレク! あっちで誰かが襲われていますわ! お助けしなきゃですわ!」

 ……チッ、エリーめ。せっかくうまく誤魔化せたというのに。

 それについ最近人助けして嫌な思いしたの忘れたんか! まさか本当に寝て忘れたの……?


「何だって!? お兄さん、助けに行っておやり!」

「えぇっと、さすがに護衛依頼中に対象の方から離れるのは……」

 間違ったこと言ってないよね? むしろ正しい立ち回りでは?


「困ってる人を見過ごせないよっ! お賃金弾むから行っておやり! 子どものために稼ぐと思って!」


 ちくしょう! とんだお人好し婆めっ! 有り金全部かっさらってやるからな!

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