第55話 エルフ(慎ましい)
「見つけたっ! あっちだ!」
広範囲の『索敵』でオークを発見し、素早くたどり着く。
良かった、まだ悲惨なことにはなっていないようだ。
「ブィヒッヒィ~、誰カラ頂コウカナ~美人揃イデ迷ッチャウナァ~!」
「ママァ……怖いよぉ~」
「大丈夫よ、ママが守ってあげるから……神様どうか、この子だけは……」
「ブヒッ! ソコノムチットシタ女ァッ! オ前ニ決メタゾッ! ブヒィッ!」
「――っ!? ママッ! ママァーッ!」
「大丈夫、ママは大丈夫だからっ。目を閉じて、耳を塞いでおくのよ……」
しかしここで1つ問題が発生する。
見てからやるかどうかだ。
「……(ジトー)」
「おい、豚野郎! 美しい女性を攫って何をするつもりだ!」
メイちゃんに見つめられると恥ずかしいっ!
てゆか、豚のくせに喋ってるの何で?
「ヒ、ヒトッ!? い、いえ、誰でもいいっ、どうか娘や他の方たちを助けてください!」
おぉ、本当にエルフの男どもとは違いそうだ!
「ナ、何ダオ前ハッ!? 邪魔ヲスルナ! オ前ラ、犯ッテシマエッ!」
「「「ブヒィーーーッ!!!」」」
「うおぉぉぉっっ! 助けて貰ったくせに逆に感謝しろだとこのやろーっ!」
さっきまでの憤りを! ムシャクシャを! ストレスを! 全て拳に乗せて殴る殴る!
「死ねっ死ね死ね死ねっ! 死ねぇっ!!!」
「キッシャァッーーー!!!」
見るとメイちゃんもクネクネもかつてない怒りの形相でオークのミンチを量産している。
エリーは寝てる。あいつ寝て忘れるつもりなんだ……クネクネの背中に糸で固定されている。ありがとな、クネクネ……。
「ママァ……怖いよぉ~」
「大丈夫よ、ママが守って……あげられないかもしれない……神様どうか、この子を守って……」
「「「ブッギャァッ!」」」
豚の断末魔とエルフの悲鳴が木霊していた。
◆◇◆◇
「ありがとうございます、ありがとうございます……どうお礼申し上げたらいいか……」
数十分後、ようやく落ち着いたエルフの女性たちと会話をする。敵の殲滅は数十秒で終わったんだけどね……落ち着かせるのに時間がかかった。何やらとてつもなく怖い体験をしたようだ。おのれオークめぇっ!
「あ、あぁ。いいんだよ。怖がらせてしまってすまない」
「い、いえ……聞けば村の男性と先に会っていたようで……お気持ちお察しします」
良かった、どうやら本当にまともな方々だったようだ。これならえろえろとお礼も期待できる!
「ていうかさぁ、その男どもはどうしたんだ? 助けに来るそぶりもないけど……」
「恐らく……私たちは見捨てられたんでしょう。オークが私たちに夢中になっているうちに逃げだしてるのではないかと……」
えっそんなことあるぅ? いや、さっきのこと考えたら……いやいや、それにしたってさぁ……?
「そんなっ!? あなた達の夫や兄弟もいるのでは!?」
「我々エルフにとって……女性は男性のために存在するのです」
「男は森へ命を懸けて狩りに行っている、その代わりに女は家のことや農作業をして男を支える、そういう生き方をしてきているのです」
命を懸けてるから、女は代わりに男のために生きる。そういう事なのかしら。
「そ、それではあなたたちはこれからどうするんですか……?」
「……彼らの元に戻る他ないかと」
「私たちだけじゃこの森を生きられない……魔法の訓練とかもさせて貰えないから……」
うわぁ、魔法も使えないのか……完全に男性社会なのね。
「そ、それでいいんですか……?」
「……良い訳がありません! 何年も、何十年も死ぬまであんな男たちのに生きる! 毎日気が狂いそうなんです!」
「でも! 私たちにはそうするしか生きる道がないんです……」
「ぐすっぐすっ……いっつもママたちいじわるされてるのぉ……」
……お? もしかして、この流れは……!
「……話はよくわかりました。あなた達がよく頑張ってきたことも。あなた達の手、それを見れば、どんなに苦労してきたかわかります」
美しい外見と比べ、毎日多くの家事や農作業に追われてきたのであろう、手は荒れ果てている。
「だからこそ、もう十分です! あなた達は報われるべきだ! 私はあなた達を救いたい!」
「……いったい、何を……?」
「何が、何ができるって言うのよ……」
よくぞ聞いてくれました!
「私には、豊かな森の中での生活環境、それと生き抜くための力を提供する用意があります!」
「そ、そんなっ都合のいいことなんてある訳ないわっ!」
「そうよ! 私たちの弱みに付け込んでひどいことしようって言うんでしょ!?」
薄い同人誌みたいに!
「信じられないのも無理はないでしょう。しかし、よく考えてください! このまま、再び地獄のような日々に戻るのか! それとも新天地であなた達らしく生きるのか! どちらがいいのか考えてくださいっ!」
「そんな……信じられないわ……でも……」
「わたしたち、らしく……?」
しばし黙り込むエルフの女性たち。むむむ、うまくいかないか……?
「あ、あのー! もう少し具体的に教えてくれませんかぁー? 生活環境とか、力をくれるとか~」
お、我が聖奴隷から質問が! いいぞ、いいタイミングだ!
「環境はこことあまり変わりはないかと思います。なので狩りでも農作業でもして頂いて構いませんし、町に出ることも可能です。力とは、あなた達への魔法の訓練、それとエルフの特徴を隠す魔道具の提供も可能です。メイ」
「かしこまりました」
そう言ってメイは獣人の特徴を隠していた魔道具を外す。
「――っ! あ、あなたは獣人だったの!? 人間が獣人と一緒にいるなんて……まさか本当に?」
「このような魔道具を用意できます。人間に怯えることもなく過ごせます! さぁ、後はあなた達の決断次第です!」
メイちゃんのジト目を無視して再び問いかける。
「わ、私はっ! 行きますよぉっ!」
おぉ、マジでいいタイミングだ我が聖奴隷。後で名前聞いとこう。
「――っ、わ、私も行くわ!」
「ママ、行こうよっ! お兄ちゃんについて行けばママがいじめられないもんっ!」
ぐっ! やめろ幼女! そんな純粋な目で見られたら罪悪感で焼き尽くされてしまう!
「で、でも……やっぱり騙されてるんじゃ……」
「大丈夫だよっ! 本当に攫う目的なら、力づくで攫われてる気がするよっ!」
「「「確かに」」」
この日一番の息の合いよう。そんなことせんわい! 自主的に来てくれることに意味があるんだからな!
ともあれ、これで我が領土(仮)に新たな手駒が加わったぞっ! しかも全員女性っ! これはエロフランド建設待ったなしっ!
やったー!
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