第51話 永遠とは、儚いもの

「ぶっちゃけ、メイちゃんいれば魔神とか楽勝じゃない?」


 ダンジョンから戻り、『おうまさん』の男どもと居酒屋にやってきた。

 愚痴と言うか反省会と言うか……まぁ、話を聞いて欲しかったのである。


「それな! マジメイちゃん最強説☆ ウケるんですけどー!」

「推定SSランクのボスをワンパン、ですか……」

「破壊を司る者……」

 厳密には3パンだけどね。まずそのパンチが早すぎて見えないんだわ。


「最初はSランクのヘカトンケイルに若干苦戦してたはずなのに……おかしくね?」

「ヘカトンケイルは確かに身体能力が強いタイプではありますが……」

「ダンジョンの敵みんなそうじゃね?」

「身体のみで破壊を望む魔物ども」

 そうなんだよねー、魔法とか使ってくるやつほとんどいなかったし。

 ダンジョンのコンセプト的なのが、身体能力特化だったのかもしれん。


「恐らく……メイ殿はまともに戦われたのが初めてだったのでは……?」

「え? ……あーそう言えばそうかも?」

 訓練以外では、闘技大会もそうだったけど、基本的に本気とは程遠かったのかもしれない。


「初めて己の力を本気で振るい、その使い方を理解していったのかもしれませぬ」

「そう言われてみれば、確かにそんな気がする。最初のヘカトンさんも執拗にぶん殴ってたしなぁ……」

 さすがブッディ! 相手を納得させるのがうまい!


「ところでアレクっち! アレ見せてよアレ!」

「アレ、かぁ……いいけど、正直そんないいもんでもないよ?」

 そう言って、アレ、クリスタルを取り出す。


「……む」

「……あー、ね」

「……破壊すべし」

 3人とも不穏なものを感じたようで、一気に顔をしかめる。ほろ酔い心地も吹っ飛ばしてしまったようだ。


「見た目はきれいなんだけどね。まぁ、これを保管するために時魔法を付与した『空間収納』の道具を作ってみようと思ってる」

「……収納したものの時を止める袋、これを巡ってかつて大国同士の戦争に発展したとか」

「維持を司る我でも実現不可能」

 

 そうよね、物流とか防衛面の概念がひっくり返るレベルよね。是が非でも欲しくなるのはわかる。


 わかるんだけども魔力がなー。以前『回帰』で使った魔力がとんでもないものだったこともあり、『時属性』の使用は避けてきた。

 外的魔素を用いるにしても、周囲への影響が大きそうなので誰もいないところで試した方がいいと思っている。


 まぁ、イメージはできてるんだけどね。前世ではありきたりだし。漫画とかで。

 


「時と言えばよ? 最近この町にいるっぽいよっ☆ 『永遠の28歳』!」

 何その半端な年齢。


「……遠き過去より年齢を維持し続ける美しき魔女」

「こほん。拙僧はよくわからんが、とても魅惑的な女性との噂であるな。良くはわからぬが」

 ブッディよ、顔が煩悩にまみれておるぞ。


「ふむ。別に美しさとか魅惑的とか興味ないけど、時魔法のヒントになるかもしれないから明日探してみるよ。おっぱいは大きいの? 興味ないけど」

「ボインボインらしいで候」

「左様か。ならばいざ往かん! ニルヴァーナ!」


 ◆◇◆◇


「私は『永遠の28歳』! エカチェリーナよ!」


 翌朝、エリーを連れて冒険者ギルドに向かうと、目的の人物はすぐに見つかった。人だかりが凄いんだもの。

 1人で行こうと思ったのに、エリーに見つかってしまったよ……。


 28歳、少し年を取っているのではと思ったがそんなことはないむしろ逆である。女性と言う存在の魅力が最高潮に高まりまさに絶頂期と言っても過言ではなく全体を見ても程よい肉付きが張りと柔らかさとで競合しているその豊満な胸を惜しむことなくささやかな下着のようなものだけで包み込み、隠すどころか強調している。


 つまり、とっても美人ってこと!


「あなた、なかなかイケメンね! どう? あっちの部屋でパフパフしてあげよっかぁ~」

「是非もなし!」


 イケメンパワーに惹かれたのか、向こうから話しかけてくれた。

 これが噂のパフパフイベント! くぅ~! イケメンで良かった!


「ぱふぱふ? 何ですのそれ……? それよりもアレク、その人は――」

「いいかエリー。今からすることは別にいやらしいことではない。生きていく上で時に起こり得る避けられないことなのだ。だからしばしの間待つがよい」

 エリーにはする機会もされる機会も訪れないだろう。おっぱいが……いや、戦力が足りない。


「あらぁ~ん、お姉さんも嬉しいわぁ~ん。こんないい男とデキるなんてっ」

「あっ、アレクったら~、ですの……」




 そして奥の個室に連れ込まれる。


「さぁ、坊や。いらっしゃぁ~いん」

「ふわぁっ…………ん?」


 そこでようやく、違和感に気付く。


「貴様、何者だ。エロくて美人なエカチェリーナをどこにやった!」

「い、いやねぇ。私がエカチェリーナよ? 何言ってんのよぅ」

 あきらかに見た目と体を形作る魔力があっていない! 俺の目は誤魔化せないぞ!


「無駄な問答は好きではない。正体を現せ」

「……さすが、――に選ばれし者、か。いいじゃろう、真の姿、とくと見るがよいっ!」


 そして現れたのは――……。


「オゲェェェェエエエーーーッ!!!」


 じじい! 間違いなくじじい! 見た目がとかじゃない! まごうことなきじじい!

 無理っ! どう見ても90近いじじいがあんな美人の姉ちゃんに化けてたって事実が無理っ!


「よくぞ、このSSランク魔道具の変装を見破っ――」

「ウゴォェェェェーーーッ!」

 パフパフとか無理! あのおっぱい無理!

 この化け物、イケメンとデキるとか言いやがってたんだぞ! くそっ鳥肌がっ!


「は、話を――」

 無理だ、無理。殺そう。


「『アバタ・ケタブ』ロロローーーッ!!」

 騎士団長の言ってたこと、ようやくできたよ……魔法は残念ながら不発だったようだが……。

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