第47話 そして気付く大切なもの
「最初に出会う敵があんなんじゃ、たいていの冒険者はしっぽ巻いて逃げるよねー」
「そうですね、なかなか手強い相手でした」
結果無傷での勝利でしたけどね。
そんな会話をしながら奥へと進む。しばらくすると――。
ガクガクブルブル……。
「おおおっ、わわわ『わなわな君』が反応してるぞぞぞぞ」
いよいよ、この時が来てしまった……。
「? 坊ちゃま、驚きすぐでは?」
「あそこですわ! 私に任せてくださいですの!」
「待ってエリー! 他にも罠があるかも――!」
「大丈夫です――わっ!?」
その言葉が言い終わらないうちに、床が抜けてエリーの姿が消える。
「いたたた……え?」
そして同時に降ってくる天井!
「キャーーーぷぎゃ」
「――っ! エリー! エリーーー!?」
た、大変だっ! お嬢様が出してはいけない声が聞こえた!
お、俺が……俺が間違っていた!
危機感が薄くて心配だからって予め下見をしてこの程度の罠なら大丈夫だろうと思ってエリーにこっそり防御関連の魔法全てとたくさんの魔道具を付けさせてわざとエリーにここで引っかかって貰ったけどそんなことする必要なんてなかったダンジョンなんか来なくても良かったんだダンジョンの外でもまだまだ冒険できたはずなんだから!
「……」
「エリー! エリー! ごめんよ! 俺が悪かった! 生きててくれぇ~!」
人間はこんなにも泣けるのかってくらい大量の涙が溢れてくる。
あんなにめんどくさがりのエリー、それなのに俺が追放されてからは文句も言わずについてきてくれたエリー!
落ちてきた天井をなんとかどかし、そこで見たエリーは――。
「ふわぁ~、びっくりしましたわぁー!」
――笑っていた。
「――ベリィ……」
「きゃぁ! ……どうしたんですの? そんなに泣いて、鼻水まで垂れてますわ!」
無事だったエリーに安堵し、強く抱きしめる。
「ず、ずまないベリィ……こんな目に遭わぜでじまっで……俺が、間違ってた……」
「? 大丈夫ですわ! だって、アレクが守ってくれてるんですもの!」
「……防御魔法、気付いて……?」
一応、気付かれないようにしてたんだけど……あ、エリーの才能……。
「? もちろんですわ! いつだってアレクは私を守って下さっている! だから安心して過ごせるのですわ!」
「――っ! エリー! いつだって俺が守るよぉ~~~っ!」
「何でしょうか、この茶番は……」
「いいですか、エリー様。いくら坊ちゃまが守ってくれてるからってダンジョンは何が起こるかわかりません。もっと危機感を持ってください」
「わかってますわ……ほらアレク、ちーんなさいですの!」
「ちーん」
ずるずる。
「坊ちゃま何ですかその情けない姿は! そもそも坊ちゃまがエリー様のために行動してこうなってるのでしょう? しっかりしてください」
「う、うん……」
けど、もうダンジョン探索やめよっかと思っています。外の世界でクネクネみたいなやつを探して――。
「け、けれどメイさん……私、せっかくなら楽しみたいんですのアレクやメイさんとの冒険を……何が起こるかわからないからこそ、楽しくって……」
うぅ、エリー、そんなことを思っていたのか……それなのに俺はっ!
「楽しむのはもちろん構いません。同時に。それ以上に危機感を持ってください。命あっての冒険です」
「……は~い、ですわぁ……」
ごもっともでした。
◆◇◆◇
「コォォォ……」
前方を歩く金属体。敵ではなく、俺が『
「少し、不気味ですね」
「まぁ、性能特化だから……」
今度可愛いの作るから……。
一度はダンジョン探索を諦めようとした俺。しかしエリーの気持ちを受け考え直した。
そこでいかに安全を確保しながら探索できるか、と行きついた先がアレ。
「『漢人形mk.2』、物理罠は任せたぞ……」
そう、先行させたゴーレムを罠に引っかからせて解除するというもの!
初号機は既に大破済みである……。
一応、見た目は人型、体重は2人分程度にしている。その方がギミックに引っかかりやすいかなと思って。
形だけで、つるんとしたのっぺらぼう。正直不気味だ。何かこう、不安になる見た目をしている。
「あっ! ですの!」
「踏むと矢が飛び出てくる罠か……古典的だな」
言ってる間にも、『漢人形mk.2』の頭目掛けて来る矢。しかし金属体の彼には刺さらない。
「ふむ。思ったよりも数は多いけど、シンプルなものが多いな」
「そうですね。本命はやはり、魔法型かと」
先程、魔法型の罠を初号機で漢解除しようとしたところ超級(Sランク)相当の威力を持った火柱が上がり、初号機は大破してしまった。
魔力とそれに連結する魔法陣さえあれば高威力のものが飛び出してくるのが魔法罠の怖ろしいところ。
ガクガクブルブル……。
「見つけましたの! アレク、行っても大丈夫そうですの!?」
「あぁ、頼むよ!」
魔法型は『わなわな君』とエリーに任せよう。
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