第42話 ブッディとシヴ
メイちゃんたちを置いて北区へのゲートへと向かう。
「しかし、どこも獣人への扱いは変わらないね~」
「左様。某たちもアレク様の作った獣人であることを隠す魔道具がなければ今なお燻っていたことでしょう」
「……悪しき風習は破壊せねばならない」
まぁーそれもなかなか難しいよね。
「とはいえいつまでもアレク様に頼りっきりでは真の自立とは言えませぬ。故に、ハンダートの地でセイスを中心に頑張っています」
「やはり、破滅の後には再生が!」
めっちゃ嬉しそうにシヴがドヤってる。基本的に同じようなことしか言わないシヴだが、表情は豊かだし、変なポーズも良くしている。
「ハンダートね。うまくいけばいいね」
獣人差別の激しいクイードァにあって、獣人が住みやすい領地を目指している。
セイスは俺なんかよりも頭いいし、うまいことやってくれるだろう。
「国に戦争仕掛けるなら一声かけてね!」
「……何のことでしょう?」
「……破壊?」
いやいや誤魔化さなくても……いずれことが表面化すれば対立は避けられないし、その辺は準備していそうだけど。
「俺としては、大切な人やその家族さえ無事なら別に構わないからさ」
「……よろしいので?」
「うん。パーシィやシア、デールやエリーの家族とか。その辺を助けに行ければ構わないよ」
いじめてたやつに仕返しされる、完全に自業自得だろうし。そう、自業自得。
「さて、受付についたみたいだ」
大きな壁で仕切られた各地区、その通行区画である受付に到着した。
「区画の移動ですね。冒険者の方は冒険者証を、商人の方は許可証をそれぞれご提示ください」
「ここに。彼は我らのポーターである」
「……」
そう言って冒険者証、チラッと見るとA-4ランクのそれを掲示する。
「(おぉ、また上がったんだ!)」
「(我ら、名前付きの強敵を破壊せり)」
他の同種と比べて強すぎたりして個体名のついた魔物、ネームドモンスターか。今後はそいつらとも戦う事となるだろう。
「では不正がないか確認しますので、こちらにお願いします。所持している魔道具をこちらに入れてください」
そう言って魔道具を回収した後、受付の人が棒状の道具で俺たちの体全体をなぞるように滑らせる。
「今のは?」
「魔道具等がないかスキャンしてチェックしています。時たま姿を変えたりするなどの不正がございますので」
ギクギクゥッ!? そんなことまでするの!? もろバレるなんだが!?
「はい、問題ありませんね。では北区へどうぞ! ご健闘をお祈りします!」
……あれ?
「今までも同じようなことがありましたが、同様の結果でした。恐らくアレク様の込められた魔力が大きいからかと」
「破壊するものを破壊する者也」
「あー魔力の大きさねー。ってことは大した魔道具じゃないってことか」
魔法には相性がある。火は水に弱いなど。しかし火の火力や密度(魔力)が強ければ水を瞬時に蒸発させたりと、相性を超える効果を発揮できる。
今回のは、相性的には魔道具感知器が圧倒的に上だが、俺の作った姿を変える魔道具の強度がそれより強かったおかげで難を逃れたってことか。
そう言えば、クネクネの糸に魔法付与するときと他の物に付与するときって、魔法自体もそうだけど、込められる魔力量も全然違ったな。
だから調子に乗って全力で魔力を込めてたら、あんなことになってしまったんだけれど……。
「そうですな。とはいえ、アレク様が作る物を超えるようなものを見たことはありませぬが」
おぉ、Aランク冒険者様に言われると実感が沸くな!
「自身の力を高めるため、頂いたものは極力使わないようにしておりますが」
「……慣れすぎると身の破滅を招く」
……よい心掛けかと存じます。
「ともかく、先に進みましょうぞ」
「いざ往かん、破壊と創造の地へ!」
……この2人結構似てるんだなー。
◆◇◆◇
「心頭滅却すれば痛みもまた気持ちよしっ! 『金剛』」
「破壊の焔よ、全てを破壊せよ。『滅鬼怒の焔』」
マゾ発言の飛び出たブッディ。盾を構えるそぶりすら見せず、その身で攻撃を受け止める。
そして仲間ごと敵を焼き払うシヴマーヌ。発言も意味不。全てを破壊って、仲間も破壊しそうだよ?
トロイアにまともな人間はいないのか……。
散策もそこそこに、目的のSランクのダンジョンへ。メイ、エリー、クネクネも連れてきた。
そして計6名のパーティで早速ダンジョン攻略へ。
敵を早速発見し、まずはブッディとシヴが戦う姿を見せるとのことで冒頭に戻る。
「なかなかやりますね」
「派手ですのー!」
「うん、まぁ、実力は凄いね、うん」
Aランクの魔物、ゴブリン・ジェネラルを一瞬で焼き尽くしたシヴの『滅鬼怒の焔』。おそらく超級に当たるのかな?
そしてそれを軽傷で受けきったブッディもまた強い。
強いんだけど……。
「ブッディ、いつか死ぬぞ……」
「いえいえ、特に問題ありません。毒薬変じてこそ、甘露と為すのです」
甘露て……こいつ、やはりドの付くM……。
ブッディを回復してやりながらまじめに考察する。
恐らく、ブッディが敵を受け止め、シヴが刺し、アラアラが回復やサポート、ヤハが攪乱とけん制ってところかな? それぞれの能力や性格を考えるとそんなところだろう。
「ふむ。2人ともなかなかやるじゃないか」
「いえ。我ら『おうまさん』、4人が揃ってこそ本領が発揮されますれば」
「そうかそうか……ん?」
何か気の抜けるような単語が聞こえたぞ……?
おうまさん……?
「『逢魔さん?』」
「いえ、『おうまさん』」
「『王魔斬?』」
「いえ、『おうまさん』」
なんでぇ……?
「アレク様が我々の部隊に命名くださった『トロイア』の名をそのまま使う訳にはいきませぬ。そこでアラアラが考えたのが――」
「『おうまさん』か……アラアラめ……」
どうしてアラアラに考えさせたのか。
トロイアの馬、我が隠密部隊の名前の由来として『トロイア』を使わせて貰った逸話。そして表で活動する際のパーティ名を考えるとき『馬』を使ったらしい。
しかし『馬』を使うにしてももっとあるだろうに……馬刃とか馬離艦とか。
「坊ちゃま、大差ございません」
……心を読むなぃ……。
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