第40話 冒険者の町リビランス

「ここが冒険者の町! リビランスかぁ~!」


 闘技大会後、俺たちは移動を余儀なくされた。

 メイちゃんの戦略が卑怯だと罵る者や可愛いメイちゃんはいないのかと詰め寄る者、俺たちのメイちゃんを返せと宣う者。しまいには殴って欲しいと懇願する者まで現れた。


 バカめ、メイちゃんは既に俺のものだ! はーっはっはっはー!


 まぁ、いつまでも追放された国にいることもないし、いい機会だろう。そこで目に着けたのがクイードァの隣国にあるこの国だ。

 この町には数多くのダンジョンが存在し、日々新たな魔道具等の貴重品が産出されている! しかも高ランクの物になるとオークションが開催され、売却価格が競われる。


 俺たちの狙いはまさにこれ!

 ダンジョン自体は最大でSランクと言うことで正直期待していない。こことは違う場所の未踏破ダンジョンや高ランクモンスターを討伐してオークションでがっぽがっぽ稼ごうというもの! 何なら俺が適当に創ったものも高く売れそうだ!


 掴み取るぜ! 夢の一攫千金!


 ◆◇◆◇


「Dランク冒険者の方及び獣人は南区のみで活動が可能です」

「ほーい……ん?」

 とりあえず、冒険者ギルドに立ち寄れと言われたので来てみたら、そんなことを言われた。

 どゆこと?


「C、BランクとA-2ランクまでは西区、北区はA-3ランクからとなっています」

「え? 何で?」

 状況が掴めない。今のままじゃ一攫千金も掴めないってこと?


「ダンジョンの難易度ごとに各地区が区分けされておりますので、そのためです。業務の効率化を図っています。併せてギルドの利用、産出品の売買などもその地区のだけとなっております」

「あ、あぁ。そうなんだ……」

 た、確かにギルドから見たら効率はいいのか、な?


 割と誰でもなれるDランクなんかは掃いて腐る程いそうだし。それぞれ場所で区切れるならその方が人員的に楽なのかしら?

 疑問は残るが、まぁわからなくもない。

 しかしわからないことが1つ。


「……獣人は?」

「西、北区へはパーティのポーター(荷物持ち)として1人だけ入ることは認められます。それ以外は特別に南区だけ利用できます」

 あー……ね。つまり、南区は冒険者としても最底辺。獣人は最底辺のみ活動可能、ってことか……。


「ちなみに各地区で産出品の売買が盛んですが、明らかに上位のランクの物ですと不正を疑われますよ。特に獣人とつながりのある方は。ですので、先ほどのようなことは口にしない方がよろしいかと」


 ◆◇◆◇


「ぐぁああああ! ムカつくーっ! こんな町滅ぼしてやる! ぶっ殺死ッ!」


「坊ちゃま、落ち着いてください。私は大丈夫ですから」

 これが落ち着いていられるかっ! なーにが不正を疑われますよだ! 獣人を差別しやがって!


「あいつらの心根の方が獣、いや虫レベル虫に謝れ! はっ!? もしかしたら下に見ているのではなく、虫だから獣を敬っている!?」

 とにかくっこの町を滅ぼさずにはいられない! 効率とか言って訳わからん区分けしてやがるし! もっと冒険させろよっ!


「しかし、普段から姿を変えていて正解でしたね。余計な厄介事はごめんです」

「ぬがーっ! こんなことをメイちゃんに言わせるような世界が憎いっ! 憎すぎるぅっ!」

 もう我慢できん! この世界の魔神、それは俺自身が魔神になることだったぞっ!


「もし、少しよろしいですか?」

「あん!? 誰だてめっ! 今俺は忙しいんだよぉっ!」

 急に知らない人に声を掛けられた。


「その……もう少し声を抑えた方がよろしいかと……」

「……ぁ、はい。ありがとう」

 周りを見ると、通りすがる人みんな俺の事を遠巻きにしている。メイちゃんもエリーもどっか行ってらぁ……。


「(先程の仰られた内容についてお話をしたいのですが、お時間よろしいでしょうか?)」

「あん?」

 見知らぬ人が小声で話しかけてくる。


 先程って言うと、世界を滅ぼす宣言していたときのか?

 何故見知らぬ人とそんな話をしなければいけないのか。世界の99割くれるって言うなら考えなくもない。つまり世界約10個分。


「興味ないね。壁にでも話してろよ」

 2コンボだドンッ!


「なっ!? せ、せめて話だけでもっ! 決して損な話ではありません! むしろ――」

「いいか? 詐欺に遭わない、騙されないようにするためには、そいつと話をしないで無視するのが1番だ。俺は大丈夫だと高を括ってる奴や偉そうに説教する奴程騙されやすいんだ!」


「まさに今の坊ちゃまですね」

 ――はっ!? 確かにっ!


「わぁー! アレクが詐欺に遭ってるんですのー!?」

 何故嬉しそうなのか。


「キシャー!(アレクー気を付けてぇ~!)」

 キュゥ……。


「……もぅ離れるとこダタヨ」

「ちょっと待って! 決して騙したりなんかっ! 本当に――」


 不審な輩はほっといてダッシュで離れる。

 ポキリとフラグがへし折れた気がした。




「よろしかったのですか? 恐らく彼は――」

「いいよ、別に。魔道具で人間に姿を変えてる獣人でしょ? 俺は別にこの世から獣人の差別をなくしたい訳じゃない。身近な人がたまたま獣人で、それで不当な扱いをされるのが許せないだけだ」


「今度はアレクが素直じゃないって話ですの!?」

 ばっ! ちげぇよっ! そんなんじゃねぇよっ!


 とりあえず、厄介事の臭いがプンプンしたぜぇッ! だからクールに去ったぜェッ!

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