第39話 闘技大会②
「ふえ~ん、怖いよぉ~!」
メイである。
エリーの宝石を取り戻すため、大金を手に入れる必要がある。
そのための作戦がこれ。
「きゃ~! 来ないでぇ~!」
ドゴッ!
「おぉーっと! 先程からかわいい悲鳴を上げてばかりだったアン選手の振った棒が相手選手のアゴにクリティカルヒット! 倒れて動けない!」
そう、か弱い姿を装い、運だけで勝ち残っていくスタイル! ただ勝つだけではいけない! 我々は大金を稼がなければいけない!
さすがに決勝は運では勝てないだろうと! 相手とのオッズが開くだろうと! そんな(淡い)期待を背負い、彼女は戦う!
「……」
「メイさん、お疲れさま!」
「メ、メイさん! ナイスファイトですの!」
タコの獣人かってくらい顔が赤い。
「……」
「か、肩もみましょうか……?」
「わ、私は足を……」
媚びろ! 全力で! メイだけが頼りだ!
「……1つ……」
「な、何ですか? 1つとは言わず2つ、いや3つでも!」
「では3つ。何でもお願いを聞いてください」
「…………賜りました」
何を頼まれるのだろうか……まさかっ王位継承権!? もうないけど。
◆◇◆◇
「いや~! こわいよぉ~!」
「あぁーっと! メイ選手が転倒! そこにすかさず襲い掛かった相手選手でしたが、起き上がったメイ選手の頭がアゴにクリーンヒット!」
◆◇◆◇
「うわぁ~ん! たすけてぇ~!」
「あぁーっと! 逃げたメイ選手を追いかけた相手選手でしたが、転倒したメイ選手にさらに躓いて場外アウトーっ!」
◆◇◆◇
「さぁ! いよいよ決勝戦! 前代未聞! 運だけで勝ち抜いてきたスーパーラッキーガール! メイ選手!」
うむ、計画通り。
「その対戦相手は! ここまで順当に実力をもって勝ち抜いてきた我らが王国騎士団長! チョーダ選手!」
立ちはだかるのはやはりあいつ。い、いかん、トラウマが……。
「さすがに決勝戦ともなると運では勝てないと言う予想からか、何とオッズは60:1.5! こちらもやはり前代未聞だぁー!」
よし、計画通り! もちろんちまちま溜めた俺のお小遣い全て賭けている!
これで負ければマジで一文無し! 頼むぞメイちゃん!
「少女よ、私は今までのひよっこと違い、決して油断はせん。悪いことは言わんから棄権しなさい」
な、何だよあいつ……! 厳しくも優しい父親のような目をしやがって! 俺にはそんな目したことないクセにっ!
「……我が主から伝言です」
「む?」
「よろしいですか!? それでは……よーい……始めっ!」
実況が開始を合図した瞬間、メイちゃんの姿が消える! いや、目にも留まらぬ速さでチョーダの足元に!
「はぁっ!」
「ぐぼぉあっ!?」
そのまま強烈なアッパー! 空中に大きく飛ばされるチョーダ!
そしてメイちゃんも自ら飛び上がり空中でチョーダにパンチの連打!
「たぁぁぁぁぁっ!」
「ぬわぁーーッ!? ガフッ――――――ッ!?」
そして最後に大きく地面に叩きつけ、勝負は決まった……。
「3歳児に吐くまで剣を振らせるのは死ぬぞ、と」
「……」
気絶してて聞いていない。というか割と早い段階で気絶していたと思うんだけど……。
「……」
「「「……」」」
ほ、ほら、実況も会場も黙りこくっちゃってる……。
こ、これからは絶対メイちゃんを怒らせないようにしなきゃ……!
「きゃ~ん、勝っちゃった♡」
(命を)刈っちゃった……?
◆◇◆◇
「ついやりすぎてしまいました」
「……」
試合後、宝石を取り戻し、逃げるように宿屋へ戻る俺たち。つい、とな。
「メイさん~本当にありがとうですわぁっ!」
エリーはいつものようにメイと接している。接することができている。
「エリーさん、これからは慎重に行動してください」
「はいですの!」
と、とにかく……!
「メイのおかげで助かったよ! 本当にありがとうね!」
「いえ、坊ちゃまが何でもお願いを聞いてくれるのならお安いものです。しかも3つも」
チッ、覚えていたか……。
「あぁ、うん、そうね。そうだけどね……命は1つだから、ね……?」
「何をお願いすると思ってるんですか……」
「……何を?」
「ではまず1つ目。壁に私を追いやり強く抱きしめながら頭を撫で耳元で『お前は俺のものだ』と囁きつつ耳を甘噛みして頂くと同時にしっぽを撫でながら私の下着に手をかけたところに『いけません坊ちゃま、まだ外が明るいです』と言いますので『お前は俺の言うことを聞いていればいいんだ』と強気で攻めてきてください」
……どう突っ込めばいいのか。
とりあえず、俺の腕が2本しかないのが問題だ。
「はぁ、はぁ……アレクが……メイさんと……あぁ、ダメですのに……あぅぅ」
……?
……。
……!?
ま、まさかエリー!? いけないっ! そっちは茨の道だっ! 引き返すんだ――と思ったけど俺にとっては明るい、ヒルガオの道だったからいいや。
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