第3章 冒険者活動
第36話 タランチュラタイプ
「さ、じゃあ改めてこれからのことを確認なんだけど――」
最終の目的は女神から賜った、魔神討伐という使命。
そのためには強くならなければならない。必要なのは修練を積むこと、強力な武具や魔道具を揃えること。素材を集めるのもいい。
さらにそのためにはお金が必要で……などなど。
「……いずれは世界を旅しながら、魔神討伐のための準備をしようと思っていた。思っていたんだけど、ギルに城を追い出されたのは想定外と言うか……」
めちゃくちゃショック。城の人も誰も引き留めてくれなかったしっ!
パーシィとシアは別だけど……まだ寝てるんだろうなぁ。不甲斐ない兄を許してくれ。
「美少女2人いて他に何が必要ですの?」
「……あ、はい。その通りでした」
しかしいい加減話を進めようと思います。
「まぁそういうことなので、今後は冒険者の活動を本格的にしていこうと思います!」
「冒険者ランクを上げながら、ダンジョンを攻略して貴重なアイテムの入手や自身の修練を目指す、ということですね」
「ですの~!」
そう、その通り。
しかし冒険者ランク。これがなかなか難しい問題だ。俺やメイはともかく、エリーは戦いの経験はほとんどない。エリーの実力に併せて上げて行った方が結果的に地力もついていいのかも知れない。一方、手っ取り早く高難易度の魔物を討伐してポイントを稼ぎ、ランクを上げて行った方が目的の達成は早まる。しかし間違いなくギルド内で悪目立ちする、つまりやっかみを招き敵が増える。どうしたものか。
「パパッと強い奴倒して行ってランクを上げるか!」
これからは目立ってなんぼ! 実力を隠しててもいいことない(実体験)!
来るなら来やがれ! 全て利用してやる!
「微力を尽くします」
「頑張れ~ですの!」
エリーもね!
「素材と言えば、そういえばさぁ――」
2人にクネクネのことを話す。決して話の脱線ではない。必要なことだ多分。
当初はお互い守るべきもののために命を賭けて激しい戦いを繰り広げる中いつしかお互いのことを認め合う仲になりついにはお互いお腹を預け合う仲になったこと。お互いにね。
「へぇ~いつか会ってみたいですわ!」
「うん、今度会わせるよ! 可愛い奴なんだ~!」
目がくりくり、体もこもこ!
そして冒険者ギルドに手頃な依頼を探しに行ったのだが……まさか、こんなに早くあいつに出会うことになろうとは……夢にも思わなかった。
◆◇◆◇
「キュッ! キュッ!(また来てくれたの!)」
そう、難易度が高すぎて塩漬けとなった討伐依頼書のなかに、見つけてしまったのだ……クネクネを。
フラグの回収が早い!
「すまないクネクネ! 俺のために死んでくれ!」
しかし会いに来た理由は真逆! 運命の悪戯を感じる!
「キュッ!?(え? え? な、何でぇ~?)」
「俺は! 俺たちはお前を倒して上に行かなければいけないんだ!」
心が痛むが已むを得ない。相変わらず何を言ってるかわからないが、戸惑ってることだけは感じる。
「キュゥ……(……うん。いいよぉ)」
「せめて苦しまずに――」
「キュッ! キュッ! ……キュゥ(今までありがと! 忘れないでね! ……大好きだよ)」
「いざっ!」
「ちょっと待つですのー!」
エリーお嬢様に思いっきり止められる。
まぁ冗談だったんだけどさ。会いたいって言ってたし物のついでに来ただけです。本当だよ?
「こんな愛らしい子を討伐しようだなんて……坊ちゃま……」
「そうですわ! 大好きだなんて……なんていじらしい子ですの! それをアレクったら……」
「いやいや冗談のつもりで……え、エリー? どういうこと?」
誰が? 誰を? 大好き?
「だから! クネクネさんが、アレクを、ですわ!」
「……え? クネクネの言葉わかるの?」
マジで? どういうこと? 俺全然わかんないんだけど!
「当たり前ですわ! ……ですわよね?」
いえ、当たり前ではないです……。
意外なエリーの才能が発覚。俺の『限界突破』みたいなものなのか……?
ちなみに、クネクネは俺らの言葉を理解しているようだ。今回の茶番もわかっていたとのこと。知能が高いのか、はたまた別の理由か……実に興味深い。
「そんなことより、クネクネさん可愛いですわ~! 持って帰りたいですわ!」
「町中でそのサイズの蜘蛛がいたら大騒ぎ間違いなしですね」
「ん~……そういえば、以前姿を変えたりサイズを変えたりできる魔道具を作ってみたんだけど――」
そう言ってかばんからただの魔石を取りだす。できるかな、いやできる!
昨日今日でちょっとかっこ悪いとこ見せすぎたからいいとこ見せとかねば! ぐぬぬぬぬ!
「――こ、これこれ! た、多分……いける……はず」
ぜぇぜぇ。手応えはある、ですの……。
「まぁ! では早速使ってみてくれます?」
「キュッ!(うん!)」
クネクネが魔石に魔力を込めると、その体がどんどん縮んでいく。遂には手のひらと同じくらいまでになってしまった。
「ふふ、小さくなってさらに可愛くなりましたね」
「キュッキュッ!?(できたー! これで一緒に行ける~?)」
「えぇ、バッチリですわ! お体の方は大丈夫ですの?」
どうやらうまくいったようだ。頑張って格好つけた甲斐がありましたな!
「キュ~、キュッ!(力があんまりでないよ~)」
「力があまり出ないとのことですわ!」
うむむ。サイズが小さくなれば保有魔力も出力も身体能力も下がってしまうのも仕方ないか。
魔物であるクネクネ、力が弱くなるのは弱肉強食の世を生きる彼にとって受け入れがたいことなのでは? そう思い、改めて聞く。
「クネクネ、さっきはふざけてごめんね? 一緒に来てくれるかい?」
「キュッ!(うん、一緒に行くー! アレク、大好きー!)」
言葉はわからずとも、嬉しそうに顔目掛けて飛んでくるクネクネを見たら答えは一目瞭然だった。
「(坊ちゃま、バレバレでしたけど素敵でしたよ)」
「(……キュ?)」
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