第21話 12歳~大人になると言う事~
――翌日。
「おはようございます、坊ちゃま」
「……おはよう、メイ」
昨日までの俺とは違う。
生まれ変わった……そう、俺は生まれ変わったのだ!
なんて清々しい気分なんだろう!
◆◇◆◇
「アレク~!」
「やややや、やぁ! エリー今日も素敵だね!」
最近はほぼ毎日来ているエリー。
昨日のことがあったから、今日はちょっと気まずい……。
「サリーに聞きましたわ! 何でも1つだけお願いを聞いてくださるって!」
「……」
サリーをチラッと見やる。
「嬉しいです! まさか、私にも最近有名なカフェでスイーツ食べ放題をお約束してくださるなんて!」
「……」
「ね!(ニヤッ)」
「……そうだった、そうだったね」
一国の王子を脅すとは……この腹黒メイドめ……。
「わぁーい! ですの!」
……まぁ、いいか。
「実は私! 最近編み物に凝ってますの! そこで、以前使わせて頂いた不思議な糸がたくさん欲しいと思ってたのですわ!」
「糸……?」
あぁ、前にパーシィとシアーのためにお願いした時のかな? あの糸の凄さに薄々気付いていたのか。
「あれから、アレク様に褒められたからってお嬢様はますます凝っているのですよ」
「そうなんですの! 最近、手織機というものを買って貰ったのですわ!」
……ん? それって、布から作るってこと!?
「あの糸なら、手触りもいいですし太さもありますから、きっと素敵な物ができますわ!」
「あ、あぁ。あの糸ならすぐに手に入るから、ちょっと待っててね」
大丈夫かなぁ……足りるかな……。
「でしたら、先にカフェに行きませんか? 私昨日から楽しみにしていたんです!」
主人より先におのれの願望を取りやがって!
ま、いっか! 今日は諸事情で休んでるメイにもお土産を買って行こう。ついでにあの蜘蛛にも。
◆◇◆◇
「キシャー(やぁーん、また来たぁー!)」
「おらっ! 出せ! 糸! 出せ!」
お腹をグニグニ踏みながら、出てきた糸を回収する。何だか癖になる感触だ。
「キュッ……キュッ……(出すからぁ! 出すから意地悪しないでぇ!)」
「あん? 何だって!? いいから、出せっ!」
心なしか、つぶらな8つの目から涙が出ている気がする。何言ってんのかわかんないけど。
「キュゥ……(ひどいよぉ……)」
「うむ、これだけあれば足りるだろう!」
ハンカチに必要な量がいまいちわからんが、まぁ俺の全身に隈なく巻き付いてるくらいあれば足りるだろう。
「ありがとな! お前名前は……よし、今日からお前はクネクネだ!」
アラクネから取ったぞ! ん? こいつの種族アラクネだったっけ?
「キュッ?(名前……?)」
「そうだ! クネクネ! 今日はお礼も持って来たんだ! ほら、食べるがよい!」
そう言って王都で有名なカフェのスイーツを出す。虫なんだから甘いものは好きだろう!
「……(何これぇ……いらないよぉ~)」
「それでは、今日は急ぐのでな! また来るぞ!」
そう言って『転移』を使って王宮に戻る。エリーが待ってるからな、急がねば!
「……(名前……)」
◆◇◆◇
「さて……」
糸は無事に入手したものの、せっかくだから何か付与しておこうと思う。
とりあえず、『全状態異常耐性』かな。糸を伸ばして、こっからここらへんまでは……。
それに、せっかくなら『全属性耐性』なるものも……。
いいぞ、この調子だ……くぅ、素材が細いから難しい……!
……。
…………。
………………。
「はっ!?」
あかんあかん、つい夜遅くまで集中してしまった。
メイちゃんも休みだったし、誰も声を掛けてくれなかったからわからんかったわ……。
「ふむ」
図らずも魔力もいい感じに使い切ってるし、今日は疲れたからもう寝るか!
コンコンッ。
「ん? どなた?」
そう思ってると、控えめにドアをノックされる。
「兄さま、あなたのパーシィです!」
パパパ、パーシィ!? 一体こんな夜更けにどうしたんだい!? まさかよばっ、よばばばばばっ!!!
いけない、パーシィにはまだ早いっ! 今はまだ穢れ無き乙女でいておくれ……っ!
「パパパパーシィ? どうしたんだい?」
どうにか動揺を抑えながら語り掛ける。
「ふふ、兄さま! こちらへ来てください!」
「? どこに行くんだい?」
「いいから! こっちへ来てくださいお兄さま!」
あ、シアーもいたのか。
案内されたところは、いつも家族が揃って食事をするときに使う部屋だった。
「食事? 確かにお腹ペコペコだけど……」
「兄さま、誕生日おめでとうございます!」
「お兄さま、おめでとう!」
部屋に入ると、突然そんなことを言われた。
「アレクよ、無事に13歳の誕生日を迎えられたこと、余は嬉しく思うぞ」
「アレク、おめでとう」
親父と、綺麗な女性にも祝われた。もしかして、母親……?
そうか、もう13歳か! この世界に転生してもうそんなに経ったのか~!
この世界では基本的に誕生日は祝わない。
しかし、13歳は特別なのである!
「ありがとうございます!」
「うむ。では早速……」
「はい。それでは、これより私が進めさせて頂きます。私は――」
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